乳房にしこりを見つけたら、速やかに医師の診察を受けることが極めて重要である。とはいえ、乳房の異常なしこりは必ずしも癌とは限らない。

米バージニア大学ヘルスシステム(シャーロッツビル)によると、しこりの原因には癌以外にも以下のようなものがある:
1)嚢胞
液体で満たされた小さな袋で、35〜50歳の女性に特に月経前によくみられる。
2)線維腺腫
10代後半から20代前半の女性に最もよくみられる硬いしこり。害はなく、乳房の中で容易に移動する。
3)脂肪壊死
壊れた脂肪組織がしこりを形成するもの。乳房の傷害によって生じることがあり、乳房の大きい女性によくみられる。
4)硬化性腺症
乳腺小葉に余分な組織が増殖するもので、痛みを伴う。癌との鑑別には生検を実施する必要がある。

(乳房のしこりの原因)


良性の乳房に発生する腫瘤としては、上記のようなものがあります。特に、代表的なものとして線維腺腫と乳腺症(上記の硬化性腺症とは、乳腺の腺管が小葉単位に増生を来すもので、乳腺症の部分像を指します)があります。

悪性の乳癌を含めれば、乳房腫瘤をきたす3大疾患は、乳癌、乳腺症、線維腺腫であるといえます。3大疾患の好発年齢は、線維腺腫は20〜40歳代、乳腺症は30〜50歳代、乳癌は乳腺症よりさらに5〜10歳高いといった違いがあります。

さらに、頻度は低いですが、鑑別が必要な疾患としては、乳管内乳頭腫(血性乳頭分泌を伴う)、葉状腫瘍(急速増大する)、腺腫(乳癌との鑑別は難しい)、副乳、脂肪壊死、異物肉芽腫(シリコン注入など)などがあげられます。

線維腺腫とは、20〜30代の若い女性に多い良性腫瘍です。特徴としては、悪性腫瘍と比べて境界がはっきりしていて、硬くて丸くよく動いたり、女性ホルモンの作用を受けて、乳房の細胞が増殖し、月経前など胸が張った感じがすることがあるといった点が挙げられます。

触診すると、「小さなオハジキがある感じ」がするといわれています。エコーで調べて大きくなっている場合では、手術的によって摘出することもあります。

一方、乳腺症は、乳腺疾患の中で中年婦人に最も多くみられ、腫瘤を形成する疾患です。症状としては腫瘤、硬結ができるのが主で、軽い疼痛を伴うことがあり、月経周期によって大きくなったり小さくなったり、自然に消えてしまうこともあります。

乳腺症の症状の特徴としては、
‘房の腫脹・疼痛(自発痛・圧痛):疼痛は周期性であり、月経前にみられることが多いですが、無関係のこともあります。
硬結・腫瘤:周囲組織との境界が不明瞭な硬結を認めます。硬結に一致して、疼痛を伴うこともあります。
F頭異常分泌:分泌物の性状はさまざまであり、血性・漿液性・水様・乳汁様と多彩です。

このようなものがあります。月経周期の特定の時期に、乳房が張ったり敏感になったりするのも、ホルモンの濃度の変動が一因といわれています。このようなホルモンによる刺激が繰り返されることにより、線維性・嚢胞性の変化が起こることがあります。

ただ、こうした症状などで「乳癌ではない」と思いこんでしまうことは危険です。たとえば、「乳癌に痛みはない」と思ってらっしゃるかもしれません。たしかに、一般的には、乳癌のしこりは痛まないものとされています。ところが、理由は定かではありませんが、まれに乳癌のしこりに痛みを感じる患者さんもいます。

また、「乳癌のしこりは硬い」という思いこみも要注意です。確かに通常、乳癌のしこりの多くは、硬いものと言われています。しかし、中には周りの脂肪組織をまとうように増殖し、初期の頃には、しこりが柔らかいタイプのものもあります。

鑑別診断を行う上では、以下のような検査が必要となります。
最近は、乳がん検診にマンモグラフィや超音波(エコー)検査といった画像診断を使った検診が普及し、胸を触ってもわからないような小さいしこりも発見できるようになりました。

定期的に乳がん検診を受け、医師と相談しながら様子を見ていくことが重要となります。画像診断の目的としては、乳腺症などを診断することではなく癌の所見が無いことを確認することが主体となります。

超音波検査では、正常の乳腺は皮膚の下のエコー輝度の低い脂肪に囲まれたエコー輝度の高い均一な像として描出されます。一方、乳腺に腫瘍性病変があるとこの組織構成が崩されて、低エコーの像として描出されることが多くなります。

マンモグラフィーでは、辺縁不鮮明なびまん性の淡いすりガラス様陰影を呈する高濃度の乳腺を示します。超音波検査では乳腺が腫大し、実質は広範囲な不均一エコー像で、小斑状の低エコー域が散在している像(豹紋状を呈する)がみられます。また、大小の嚢胞が混在する像を呈することもあります。

こうした検査をしっかりと定期的に行うことで、乳癌を放置することも少なくなると考えられます。もちろん、自己触診を行うことも重要です。「いつもと違うな」といった発見により、もしかしたら早期発見が可能となるかもしれません。

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