やってのけた大仕事を信じることが出来なかった。初体験のヒーローインタビュー。新里は大きな目を動かしながら、声を絞り出した。「あまり実感がないけど、自分らしい一打でした」1点リードの7回2死一、二塁、代打で右翼線へ2点三塁打。近鉄、楽天、ロッテと渡り歩き、プロ6年目の初打点。右翼席からの歓声がうれしかった。

「大きな病院に行って検査を受けてもらった方がいい」医師の一言が忘れられない。昨年9月、1歳になったばかりの長女・小葉(このは)ちゃんが、心房中隔欠損と診断された。休日には公園へ連れて行き、定期検診にも付き添い、愛情を注いでいたまな娘の急病。「子供によくある病気だって聞くけど、心配だった。医師を信じるしかなかった」試合で疲れていても、眠れない夜が続いた。

小葉ちゃんは4月13日に手術し、経過は良好で22日に退院した。「明日も出番があれば、全力で頑張ります」パパは今月19日に1軍昇格。2軍からの報告には「外角球を右方向に打てる」とあった。しぶとい当たりは、新里の野球人生のようだった。
(新里、心臓手術の1歳娘へ退院祝い打…ロッテ)


心房中隔欠損症とは、心房中隔に欠損孔があり、左房と右房の間に交通がある先天性心疾患を指します。

具体的には、心房中隔の中央の卵円孔部に直径2〜4cmの円形ないし楕円形の欠損孔があるような状態です。少ないですが、心房中隔の右後方、上大静脈または下大静脈に接する部分に欠損孔がある場合もあり、これは静脈洞型心房中隔欠損症と呼ばれます。

心房中隔に欠損があると、肺静脈から左房へ戻った血液の大半が、欠損孔から圧力の低い右房に流れてしまいます(左-右シャント)。結果、左房と右房の圧は等しくなるような状態になります。

このような血液の流れにより、左室から全身に送られる血液量は正常に保たれますが、右房→右室→肺動脈へと流れる血流量は正常の2倍ないし4倍に達します。そのため、右房、右室、肺動脈は拡大します。

小児期の先天性心疾患の約10%、成人の先天性心疾患の約40%を占めます(成人の先天性心疾患の中では最も多い)。女性に多く男女比は 1:2 となっています。

自覚症状としては、小児期にはありませんが、20歳以降次第に現れてきて、40歳以上では、ほとんど必発となります。年齢的に女性では、2〜3人の出産を済ませている場合が多いです。

軽い症状としては、労作時の呼吸困難、疲労、動悸などを生じます。重症の場合には、うっ血性心不全、胸痛、頭痛、労作時失神などの症状を生じます。気管支炎、肺炎にかかりやすい、といった特徴もあります。

30歳以降では、心房細動などの上室性不整脈、三尖弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症(MR)、うっ血性心不全の合併頻度が高くなります。未治療の場合、50歳以降では対照群に比べて生存率は約25%以下になってしまいます。

右心系への血流量が増えるため、肺高血圧症が進行していきます。肺高血圧症が進行すると、右−左シャントとなります。そうなると全身を巡ってきた血液が再び全身に送られることになり、チアノーゼをきたすようになります。この状態をEisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群といいます。

治療としては、以下のようなものがあります。
内科的には、心不全の治療と呼吸器感染の治療を行います。心不全症状には、ジギタリスや利尿薬を用いて治療を行います。

肺体血流比1.5以上、または2以上で手術適応があります。年齢が進むにつれて手術後に不整脈や心不全が残る率が高くなるので、手術をする時期はなるべく早期、できれば20歳までがよいといわれています。ただし、Eisenmenger化して肺血管抵抗が 14単位・m^2以上ある場合は手術は禁忌となります。

手術は人工心肺を用い、右房を切開して直視下に欠損孔を直接、あるいはパッチを用いて閉鎖します(欠損孔閉鎖術)。心房中隔欠損の手術は、小学校入学前までに無輸血で行われることが多いです。有意な僧帽弁閉鎖不全を合併する場合には、僧帽弁形成術または僧帽弁置換を行います。

卵円窩にある中心部欠損では閉鎖が容易であるといわれていますが、静脈洞型欠損は部分肺静脈還流異常が伴うことが多く、心房内で血流転換などやや複雑な手技を要する場合があります。

心房中隔欠損は幼少期に症状が乏しく、手術を受けることなく成人する例が少なくありません。成人期の本症は上室性不整脈や僧帽弁、三尖弁の逆流などを合併することが多く、循環器内科と連携しながら治療方針を決める必要があります。

上記のケースでは、1歳で手術が行われたようです。経過も良いようで、今後、健やかに成長されることが望まれます。

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