新型インフルエンザへの警戒が強まる中、東京都内の病院で、発熱などの症状がある患者が診察を拒否される例が相次いでいることが分かった。都によると、2日朝〜4日朝だけで計63件に上る。新型への感染を恐れたためとみられるが、感染者が出た国への渡航歴などがない患者ばかりで、診察拒否は医師法違反の可能性がある。大学病院が拒否したケースもあり、過剰反応する医療機関の姿勢が問われそうだ。

患者から都に寄せられた相談・苦情によると、診察拒否のパターンは
1)患者が発熱しているというだけで診察しない。
2)感染者が出ていない国から帰国して発熱したのに診察しない。
3)自治体の発熱相談センターに「新型インフルエンザではないから一般病院へ」と言われたのに診察しない。

――の三つという。

拒否の理由について都は「万一、新型インフルエンザだった場合を恐れているのでは」と推測する。拒否されたため、都が区などと調整して診療できる病院を紹介した例も複数あった。「保健所の診断結果を持参して」と患者に求めた病院や、成田空港に勤務しているとの理由で拒否した例もあった。友人に外国人がいるというだけで拒否された患者もいたという。

国や自治体は、熱があって、最近メキシコや米国など感染が広がっている国への渡航歴があるといった、新型インフルエンザが疑われる患者には、まず自治体の発熱相談センターに連絡するよう求めている。一般の病院を受診して感染を拡大させることを防ぐためだ。だが、単に熱があるだけなどの患者は、その対象ではない。

都感染症対策課の大井洋課長は「診察を拒否する病院が増えれば、『症状を正直に申告しないほうがいい』という風潮が広まるおそれがある」と懸念している。
(東京の病院、過剰反応 発熱患者の診察拒否)


医師法では、「日本では、医師国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けなければ医師と称したり、これと紛らわしい名称を用いることはできない」とあります。

その一方で、業務上多くの義務と責任(応召義務、守秘義務、診療録の記載など)が定められています。第1条にも「医療および保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上および増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する」とあります。

その一つの義務として、"応召義務"があります。応召義務とは、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」(第19条)とあるとおり、正当な理由がないかぎり、患者さんの診察の求めがあれば、それに応じなければならない、というものです。

こうした医師や医療機関に課せられた患者の診療義務はありますが、その一方で罰則規定はありません。いわば、努力目標、とでもいえるものではないでしょうか。上記に「診察拒否は医師法違反の可能性がある」とありますが、即なにかの罰則が科されるといったことではありません。

そもそも、応召義務に関して、その判断に関しても、誰が一体判断するのか、そしてその基準はどういったものなのか、など少なくとも医師法にそのことは書かれているわけではありません。

このことに関連して、上記のケースでは以下のようなことが言えるのではないでしょうか。
たしかに、「発熱」に過剰反応があって、診察に応じないということはいささか問題があるようにも思います。ですが、上記のニュースを読んでいると、違和感があるのも事実です。

そもそも、平日・時間内の外来受診での拒否となれば、それは医師・病院側の問題であると考えられます。マンパワーも十分にあるでしょうし、病院間の連携などでしっかりとした対応を求められるのは必要であると考えられます。

その一方で、今回のケースは5月2日土曜日からであり、明らかに時間外の日直・当直業務での話です。病棟業務に加え、外来に受診される患者さんの対応、さらに市中病院であれば専門外の疾患も診ざるを得ないという状況にあります。

そこで、「発熱と言っても、症状が軽そうで、通常の感冒と考えられるし…」といった方の問い合わせがあれば、「自宅でお休みいただければ…」とお断りすることもあるのではないでしょうか。

そうした件数を、上記の63件にはカウントしていないといえるのでしょうか。もちろん、平日・時間内の外来受診であれば話は別でしょうが、マンパワーも乏しい時間外のことであり、拒否する理由もあるのだ、ということを考慮していただく必要があるように思います。

一方的に病院側・医師の対応が責められているように上記のニュースでは感じ取れますが、その背景には、理由があるのではないか、と私自身は思うのです。

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