以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

今から17年前、社員にパソコンが支給され、休日も返上して習得に励んでいたN・Kさん(25)。通勤時間に大好きな本を読むことでストレスを解消していましたが、年を追うごとに目の疲れを感じるようになりました。

それから4年後、パソコンで作業をしていると、なぜか同じ行を繰り返し読んでしまうことが度々重なるようになります。近所の眼科で診察を受けたところ、「VDT症候群(=パソコン作業などによる目の疲れが引き起こす様々な健康障害)」と診断されました。処方された目薬をさすことで目の疲れや乾きはずいぶん和らぎましたが、やがて更なる異変に襲われるようになります。

具体的な症状としては、
1)同じ行を何度も読む
PCで文書を作成しているとき、何度も同じ行を読んでいることに気づきました。ですが、瞬きを数度行うことでその症状は治まりました。
2)めまい
PCでの作業を行っているとき、急にめまいが起こり、椅子に倒れかかってしまいました。その後、たびたび同様の作業を行っていると、めまいが現れるようになってしまいました。
3)近くのものを見ると気分が悪い
PCの作業中でなくても、趣味の読書を行っているときも、気分が悪くなるという症状が現れるようになりました。
4)頭痛
5)吐き気
6)全身の倦怠感
近くの物を見ると、気分が悪くなるとい症状のほかに、慢性的な頭痛や、時には吐き気、そして全身の倦怠感がみられるようになりました。

このような症状がみられたため、N・Kさんは近医を受診しました。すると、自律神経失調症と診断されました。ですが、原因はストレス、と言われてそれ以上のことは分かりませんでした。そのため、その後も自律神経失調症による症状に悩まされ続けました。

12年後のある日、彼女はニュース番組で「眼精疲労が原因で、自律神経失調症が起こる可能性がある」ということを知りました。心当たりがあったN・Kさんは、さっそくその記事で紹介されていたクリニックを受診することになりました。

検査の結果、N・Kさんの自律神経失調症の原因は、「隠れ斜視」であったことが判明します。

斜視とは、眼位(正面から見た時の眼球の位置、眼の向き)の異常をきたして、両眼の視線が目標に向かわず、一眼の視線が目標とは別の方向へ向かっている状態を指します。

簡単に言ってしまえば、片方は見ようとするものを見ているのに、反対側の目が目標と違う方向を向いている状態です。斜視では、こうした眼位の異常のほかに、両眼視機能の異常や、弱視を伴うこともあります。

種類としては、眼位ずれの方向により「内斜視(両眼で見た時、一眼が内側に偏位する眼位の異常)」、「外斜視(両眼の視線が目標に一致せず、一眼の視線が外側にずれるような斜視)」、「上斜視(一眼が上転している上下眼位の異常)」、「下斜視(一方の眼が正面を向いている時に,他方の眼が下方を向いている状態)」、「回旋斜視」などがあります。

原因によっても分類され、遠視、両眼視異常、視力障害、眼筋麻痺などがあります。起こり方によっては、恒常性、間歇性と分けられ、発症時期では先天性、後天性と分けられます。

上記における「隠れ斜視」とは、ごく軽度の斜視のことです。そもそも斜視とは、先天的な要因などで目が別々の方向を向いた状態のことで、両目でものを見ることが出来ないもののこれ自体は病気ではありません。

「隠れ斜視」は外見上、全くわかりませんが、眼の向きが外側や内側にわずかにずれている状態です。しかし、これは決して珍しいことではなく、実は多くの日本人の目が、この「隠れ斜視」だと言われています。

では、この隠れ斜視が何故、自律神経失調症の原因になるのかと言えば、以下のような理由があると考えられます。
「隠れ斜視」は普通に生活をしている分には、特に問題はありません。彼女があれほどの症状を起こしたのは、その生活習慣に要因があったのです。その要因こそ、パソコン作業などで長時間、近い距離のものを見続けること。

正常な状態の目は、何もしていなくてもまっすぐ前を向き、そのままピントをあわせてものを見ることが出来ます。しかし、一般的な隠れ斜視の人は、目がわずかに外を向いていることが多く、ものを見る時、目を内側に動かして正常な位置に戻さなければなりません。この時、眼球の外側にある外眼筋という筋肉を使うことになります。

つまり、長時間、さらに近い距離のものを見ようとすればするほど、外眼筋は片目のズレを正常な位置に保ち続けなければならず、疲労が蓄積してしまうのです。

そうとも知らずに彼女は、近い距離でものを見続け、目を酷使。その結果、ついには同じ行を何度も読んでしまう症状が起きたのです。例えば、左目の外眼筋に過度の疲労がたまると、脳はその目に休むように指示を出し、逆の右目だけの情報で文章を読んでしまうのです。

ところが、その行を読み終えて、次に読む場所を探そうとした瞬間、それまで休んでいた左目が復活。その目に一番近い、これまで読んでいた行の初めをついとらえてしまいやすくなるのです。
 
さらに、その状態を放置していると、目だけではなく様々な全身症状を引き起こす自律神経の乱れが生じます。外眼筋の疲労が過度に蓄積すると、眼球を正常な位置に動かすことが難しくなり、ものを正常に見ることが出来なくなります。

すると、目の内部にある自律神経が、本来の働きをすることが出来なくなり混乱を始め、ついには全身の自律神経の乱れへとつながるのです。その結果起きたのが、頭痛、めまい、吐き気など自律神経失調症の症状でした。

自律神経失調症とは、原因不明の全身倦怠感、頭重、動悸などさまざまな身体的自律神経性愁訴をもちますが、愁訴に見合う器質的変化はなく、自律神経系の機能失調に基づく病像のことを指します。

そもそも「自律神経」とは、内臓の平滑筋,心筋および腺を支配し,生体にとって最も基本的な機能である自律機能を協調的に調節し、生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしている神経系を指します。意識的・随意的な制御を受けておらず、自律神経系の求心路は内臓求心性線維からなり、遠心路は交感神経系と副交感神経系からなります。

簡単に言ってしまえば、「自律神経」とは自分の意志とは無関係に循環、呼吸、消化などの生命活動を調整する神経です。交感神経と副交感神経の2つで成り立っており、このバランスが崩れると、身体に様々な症状が現れます。こうした異常を、自律神経失調症と考えられています。

自律神経の障害による症候は多彩であり、ほかにも瞳孔異常、起立性低血圧、徐脈または頻脈、便秘・下痢、発汗障害、排尿・排便障害、性機能障害などがあります。

N・Kさんの場合は、こうした斜視を調節するプリズム眼鏡を使用することで、症状改善がみられていました。軽度の斜視では、プリズム眼鏡が使用されることがあります(眼鏡レンズにプリズムを組み込む場合のプリズム度数は4〜6プリズムが限度)。

上記のような症状などにお心当たりがございましたら、一度、隠れ斜視などを疑って眼科受診などをされてはいかがでしょうか。

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