読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
高血圧で降圧薬を服用中です。血圧が日によって大きく変動し、上がると動悸、頭が重い、手足がほてるなどの症状が出ます。どうしたら安定させられますか。(86歳女性)

この相談に対して、自治医大病院長の島田和幸先生は、以下のようにお答えになっています。
測るたびに血圧値が大きく変動する症状は、80歳前後で血圧が高い方にしばしばみられます。

若い方では、心臓からの拍出量が大きく変化しても心臓から伸びる大動脈が弾力的に伸縮し、さらに血圧を調節する神経が働いて血圧の変動を抑えます。しかし、大動脈の壁が老化で硬くなり、調節機能が衰えた高齢者では拍出量の変動が血圧にもろに影響します。

治療の原則は、1回ごとの血圧にこだわらず、平均した血圧のレベルをまず降圧薬で下げることです。ただ、高いときの最大血圧が180以上であっても、薬を増やすと低いときの最大血圧まで下げ過ぎる恐れもあります。そうなれば、立ちくらみや、めまいが表れるので、降圧薬の強さを加減する必要があります。

最大血圧をこの値より下げない、という目標値は、100や120などと、人によって異なりますので、医師が患者の症状に注意しながら見極めます。

血圧が高血圧域にある状態、もしくはすでに降圧薬の治療を受けている状態であって、二次性高血圧の原因となる疾患がない病態を本態性高血圧といいます。

二次性の高血圧には、腎性(腎実質性および腎血管性)、内分泌性(原発性アルドステロン症や褐色細胞腫など)、薬物性・医原性〔経口、妊薬、非ステロイド性抗炎症薬、甘草、エリスロポエチン(EPO)、シクロスポリン(CYA)、ステロイド剤など〕などがあります。

少なくとも2回以上の異なる受診時の診察室(外来)における安静坐位の血圧値が、収縮期で140mmHg以上、あるいは拡張期で90mmHg以上の場合に高血圧と診断します。また、家庭血圧で135/85mmHg以上、あるいは24時間血圧の平均が135/80mmHg以上の場合には高血圧として対処します。

本態性高血圧の診断は問診、身体所見、一般検査所見などにより二次性高血圧を除外して行われます。高血圧が長期間持続すると血管障害をきたし、脳血管障害、虚血性心疾患、腎障害などを生じるとともに、心臓に対しては圧負荷により心肥大をきたし、圧負荷がさらに長期間持続すると虚血性心疾患と相俟って心不全を生じる可能性があります。そのため、降圧薬などの治療が必要になるわけです。

治療の目的は心血管疾患の発症を予防し、すでに発症している場合にはその進展を抑制することにあります。収縮期血圧140mmHg以上,あるいは拡張期血圧90mmHg以上の場合にはすべて治療の対象となりえますが、正常高値血圧(130-139/85-89mmHg)の場合にも生活習慣修正の対象となります。

心血管疾患のリスクは高血圧の程度、血圧以外の危険因子の有無、心血管系臓器障害や心血管疾患の有無によって異なり、血圧が高いほど、また、危険因子や心血管疾患を合併しているものほどリスクは高くなります。

これらの要因を考慮して、低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化し、低中等リスクでは一定期間(1〜3ヶ月)生活習慣の修正を行っても140/90mmHg未満に降圧しない場合は降圧薬治療を開始。高リスクでは生活習慣の修正と並行して降圧薬治療を開始します。

降圧薬治療に関しては、以下のようなことがいえると思われます。
質問者は定期の処方薬を服用することで、すでに平均の最大血圧が130〜140、最小血圧60〜70と良好にコントロールされているようなので、高血圧の治療としては現状で満足してよいでしょう。

血圧が上がると、動悸、頭痛などの症状を伴うとのことですが、実は、気温の変化や過労、緊張など、動悸などが表れる状況があるために血圧が上昇している可能性の方が高いのです。血圧の変動にあわせ、その度に降圧薬を追加することは、通常は必要ありません。
一般的に、6種類の降圧薬[Ca拮抗薬、アンジオテンシン脅容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬]を主要降圧薬として用いています。

軽中等症の高血圧の場合には単剤で治療を開始し、降圧目標値に達しない場合には増量、あるいは薬理作用の異なるほかの薬剤の追加、あるいは他剤への切り換えを行います。

降圧効果や副作用、エビデンスなどから一般的にはCa拮抗薬あるはACE阻害薬やARBのようなレニン−アンジオテンシン(RA)系抑制薬をまず用いることが多いです。一般的には、140/90mmHg未満を、腎障害や糖尿病合併例では130/80mmHg未満を降圧目標値とし、そのためには併用療法が重要となります。

併用療法として、まずCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用を勧められています。2剤併用で十分な降圧が得られない場合には、3剤目として少量の利尿薬を併用します。

服薬の注意点としては、ACE阻害薬は、血管浮腫を起こすことがあるので「唇・舌の腫れ」を感じたら直ちに受診するようにしましょう。空咳も出ることがあります。RA系抑制薬は、妊娠中に服用すると胎児に影響があるといわれており、注意が必要です。

Ca拮抗薬服用では、発生する頭痛や顔のほてりがでることがあります。ただ、継続服用により解消されることも少なくありません。また、これはグレープフルーツジュースとの併用によりその発現頻度があがることがあります。

利尿薬は、塩分摂取の多い患者やRA系抑制薬服用中の患者さんには、効果が強く出ることがあるので少量から開始するほうが望ましいと考えられます。

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