俳優・三國連太郎(86)が4月下旬に「心筋梗塞の疑いあり」と診断され、緊急カテーテル手術を受けていたことが4日、分かった。北海道中標津町で行われた映画「釣りバカ日誌20 ファイナル」の会見で明らかにした。

術後の経過は良好という。今作が88年から続いたシリーズの最終作になるが、主演の西田敏行(61)は「感慨もひとしおで、とても胸に迫るものがあります」、三國も「僕にとって生涯の仕事だった」と互いに万感の思いを口にした。

突然の、そして衝撃の告白だった。会見中に「実は…」と自ら切り出した三國は「こないだ、心筋梗塞になりまして」と続けて緊急手術を受けていたことを明かした。

やはり03年に心筋梗塞で緊急入院した経験がある西田が「要するにカテーテルをお入れになったということです」とすかさずフォロー。「こういうことでも縁が深いなあと思います」と三國が言えば、西田も「心筋梗塞仲間です」と笑わせた。

関係者によると、三國はクランクイン直前の4月24日に検査を受けたところ、心電図の波に異常が見られて緊急手術が決定。三國には自覚症状は一切なかったという。

同28日に都内の病院でカテーテル手術。翌29日には心電図が正常となり、医師から撮影参加の許可が出たという。西田は「僕と同じ病気と思えないくらいスマートでいらっしゃる。僕の場合は七転八倒、家族は右往左往でした」と解説。三國の体内には現在も3本のステントが入っている状態だが、経過は良好で、撮影も予定通り順調にこなしているという。

実は、この北海道ロケが三國の命を救った格好だ。三國は大の飛行機嫌いで、シリーズ第11作の沖縄ロケ以外はすべて陸路で移動。今回も陸路を検討したが、時間的な問題から断念。念のために受けた検査が思わぬ結果を招いたのだった。
(三國連太郎 心筋梗塞手術していた!)


心筋梗塞とは、心臓を栄養している冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。厚労省の死因解析から虚血性心疾患の死亡数は約8万人と推測され、また病理的な検討から30%の致命率であると考えられています。日本全体では、約25万人の急性心筋梗塞症の発症が推測されています。

冠動脈が閉塞する原因としては、やはり冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

特徴的な症状としては、狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)を生じます。「痛い」よりも「胸が苦しい」「重い感じがする」など、締め付けられる(絞扼感)を訴えることが多いといわれています。

通常、狭心症では胸痛の持続時間は数分程度でおさまりますが、安静にしていても30分以上胸痛の持続する場合は急性心筋梗塞を疑います(通常30分以上持続する前胸部の強度の胸痛や絞扼感で、恐怖や不安感を伴う)。

大多数は典型的な胸痛・絞扼感を主訴としますが、中には心窩部・背部痛呼吸困難、悪心・冷汗・失神などの非典型的な症状を訴えることもあります。典型的な急性心筋梗塞の胸痛と鑑別を要する疾患には、解離性大動脈瘤、急性心膜炎、肺塞栓が最も重要であり、次に胸膜炎、自然気胸、逆流性食道炎などがあげられます。

悪心・嘔吐などの消化器症状も伴うことがあるため、胆石症、胃・十二指腸潰瘍などとの鑑別が必要になることもあります。高齢者や脳梗塞、糖尿病を有する患者さんでは、無痛性に発症することもあります。その結果、放置してしまうケースもあります。

また、関連痛といって、疾患のある臓器以外の部位に出現する痛みが生じることがあります。具体的には、胃の痛みを中枢へと伝える神経と、心臓の痛みを伝える神経が近い位置にあるため、誤って「胃の痛み・不快感」として伝えられてしまったような状態です(共通の神経で痛覚が脳へ伝達されるために起こると考えられている)。

診断としては、上記のような臨床症状がみられたり、心電図で連続する2誘導以上でST上昇、またはST低下(非ST上昇型)を示し、数時間後にはQ波の出現、あるいは非Q波梗塞ではR波の減高がみられます。

まず心筋傷害を反映したST上昇、数時間後には心筋壊死を反映したQ波、その後に心筋虚血を反映した冠性T波が出現します。冠性T波は左右対称の先端の尖った深いT波で、2日〜1週間以内に出現し、数時間〜長年にわたり持続します。

血液生化学的検査では、白血球の増加は特異性がないが発症早期からみられ、その程度は重症度や予後と関連するといわれています。CPK、CK-MBは、梗塞発症後6時間以内に上昇し、3〜4日で正常値に戻ります。AST、LDHは、CPKより上昇が遅く、ASTの上昇は4〜7日間、LDHの上昇は1〜2週間続きます。そのため、これらは発症時期の推定には有用な指標となります。

ミオグロビンは、CK-MBに比し早期より上昇し、ピークは1時間後で1〜2日後には正常となります。ミオシン軽鎖Iはピーク値は発症から2〜5日であり、7〜14日後に正常化します。

最近では、心筋特異性が高いトロポニンT・トロポニンIも用いられています。トロポニンTは、発症後3〜5時間で高値になり、その後は2峰性の変動を示します。最初のピークは12時間、2番目のピークは3〜5日であり、発症後7〜10日で正常化します。

心エコーも有用であり、収縮低下を確認することがほかの疾患との鑑別に有用であったり、他の合併症の有無も判断できます。冠動脈造影は、虚血性心疾患の確定診断には非常に重要となりますが、侵襲性が高いといった難点もあります。

冠動脈造影(CAG)・左室造影法では、急性心筋梗塞の責任冠動脈病変を確定でき、引き続き梗塞サイズの縮小を目的とする再灌流療法を施行することもできます。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、まずは対症療法中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理します。通常は、アスピリン内服、酸素吸入、輸液、硝酸薬などを中心に行います。

発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小可能であるといわれています。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)を行う場合や、血栓溶解療法(PTCR)、狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈大動脈バイパス移植術 (CABG) が行われる施設もあります。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は、1977年にGruentzigらにより初めて行われて以来、さまざまな技術上の、あるいは器具における進歩を遂げています。

当初は、バルーンによる拡張術のみであり、経皮的バルーン冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)とよばれていました。ですが、冠動脈ステント留置術(coronary artery stenting)、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)、ロータブレーター、といった新しい器具の発明とそれを用いた治療が普及するにつれ、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)と総称されるようになりました。

経皮的冠動脈形成術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)とは、心臓を栄養する血管である冠動脈の閉塞した箇所にカテーテルを用いて、バルーン(風船)を拡張して狭くなった冠動脈を拡げる手術です。

PTCAは約3分の1の割合で、再狭窄が数か月後に起こるのが欠点の1つとして挙げられていましたが、最近ではステントと呼ばれる小さなメッシュ状の金属チューブを動脈壁に留置することが行われています。

ステントを留置することにより、再狭窄を少なくすることができると考えられます。ステントによって、再狭窄率は15%前後にまで低減することができたと言われています。急性閉塞や再狭窄を抑制する目的で、円筒状の金属ステントを留置する手技が開発され、現在では冠動脈ステント留置術がPCIの主流となっています。

特に、2004年夏から日本に導入された薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、新生内膜増殖を抑制する薬剤をステント表面にコーティングしたステントであり、再狭窄率がきわめて低いため頻用されています。

また、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)は高速回転するカッターにて動脈硬化粥腫を切除する手技であり、入口部や分岐部病変において効果を発揮します。ロータブレーターは先端にダイヤモンドを埋め込んだドリルを高速回転させて血管を拡張するものであり、高度石灰化病変など、ほかのデバイスで拡張できない病変に有効です。

カテーテル治療と一口に言っても、このような種類があります。三國さんは術後も軽快なさっており、現在のところ問題はなさそうです。ぜひともご自愛いただければ、と思われます。

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