生活習慣病では「がん」「脳卒中」「心筋梗塞」のほかに、慢性疾患としては「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」が3大疾患。その高血圧の中でも、“最も危険”として注目を集めているのが「早朝高血圧」である。

それは、早朝高血圧が脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクがきわめて高いことがわかったからである。

事実、急性心筋梗塞の発症時間としては、午前6時から10時が最も多くなっている。かつて私は、急性心筋梗塞に襲われたものの救われた人たち20人にインタビューしたことがあるが、そのときのメモをめくると、リスクの高い時間帯に襲われた人が8人もいた。

この早朝高血圧、ある意味自然なことでもある。私たちの体は交感神経と副交感神経とによってコントロールされている。そのため、この2つの自律神経のバランスがとれていることが重要になる。

夜、眠っているときは体はリラックスしている状態なので、副交感神経に支配されている。朝になって目覚めると、活動的になるため、体は交感神経支配に切り替わる。すると、血圧は自然と上昇する。ところが、通常は夜と朝の血圧の差は10〜15程度であるのに比較して、朝のほうが夜よりも20以上も高いとなると、それは「早朝上昇型」の早朝高血圧である。

このように眠っているときの血圧は正常で、早朝に高血圧になる早朝上昇型のほか、「夜間持続型」もある。

夜間持続型では、夜間から早朝にかけて眠っている間、ずっと血圧の高い状態が続く。早朝高血圧の中でも、早朝上昇型より夜間持続型のほうが危険だといわれている。それは、脳卒中や心筋梗塞に直結するばかりか、動脈硬化を促進させて、さらに多くの血管病の原因となり、心臓肥大も悪化させるように働いてしまうからだ。

早期発見が理想的だが、難点は循環器内科などで血圧を測ってもらうときにはすでに血圧は正常になっていることだ。また、高血圧の治療を受けている人は病院で血圧を測るときには薬が効いており、早朝高血圧を発見するのは難しい。

自己チェックの面から朝と夜に血圧を測る習慣をつけるのがおすすめだ。朝2回、夜2回血圧を測定して記録をし、高い場合は専門医を受診すべきである。注意すべきは、家庭で測る血圧は病院で測るよりも数値が低く出るので、「上が135、下が85」以上で高血圧と判断するという点だ。
(早朝高血圧)


血圧が高血圧域にある状態、もしくはすでに降圧薬の治療を受けている状態であって、二次性高血圧の原因となる疾患がない病態を本態性高血圧といいます。本態性高血圧は高血圧の90%以上を占め、遺伝的素因と環境要因が関係して発症してくると考えられています。

それ以外の二次性の高血圧には、腎性(腎実質性および腎血管性)、内分泌性(原発性アルドステロン症や褐色細胞腫など)、薬物性・医原性〔経口、妊薬、非ステロイド性抗炎症薬、甘草、エリスロポエチン(EPO)、シクロスポリン(CYA)、ステロイド剤など〕などがあります。

少なくとも2回以上の異なる受診時の診察室(外来)における安静坐位の血圧値が、収縮期で140mmHg以上、あるいは拡張期で90mmHg以上の場合に高血圧と診断します。また、家庭血圧で135/85mmHg以上、あるいは24時間血圧の平均が135/80mmHg以上の場合には高血圧として対処します。

ただ、血圧は変動しており、特殊環境である診察室におけるワンポイントの血圧を患者の血圧代表値として判断することにはリスクがあります。できれば心配な方は家庭でも血圧を測定されることが望まれます。

家庭血圧のほうが、より基底血圧に近く、診察室(白衣)高血圧、早朝高血圧、逆白衣高血圧(仮面高血圧)の診断、患者の血圧治療継続率(コンプライアンス)の改善に有用となっています。

ただし、家庭で測定する場合も同一体位、同一時刻に測定するなどの標準化が必要となります。また、入浴後、食後、飲酒後などは血圧変動が大きいので1日の代表値として利用することは避けるべきであると考えられます。

ちなみに、仮面高血圧とは、診察室で医師に測定した血圧値は正常血圧であるのに、家庭や職場で自分で測定した血圧値が高血圧となる場合をいいます。診察室や病院では正常血圧とされるために本当の高血圧がマスクされるという意味で、仮面高血圧(masked hypertension)といいます。

高血圧が長期間持続すると血管障害をきたし、脳血管障害、虚血性心疾患、腎障害などを生じるとともに、心臓に対しては圧負荷により心肥大をきたし、圧負荷がさらに長期間持続すると虚血性心疾患と相俟って心不全を生じる可能性があります。そのため、降圧薬などの治療が必要になるわけです。

治療の目的は心血管疾患の発症を予防し、すでに発症している場合にはその進展を抑制することにあります。収縮期血圧140mmHg以上,あるいは拡張期血圧90mmHg以上の場合にはすべて治療の対象となりえますが、正常高値血圧(130-139/85-89mmHg)の場合にも生活習慣修正の対象となります。

心血管疾患のリスクは高血圧の程度、血圧以外の危険因子の有無、心血管系臓器障害や心血管疾患の有無によって異なり、血圧が高いほど、また、危険因子や心血管疾患を合併しているものほどリスクは高くなります。

これらの要因を考慮して、低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化し、低中等リスクでは一定期間(1〜3ヶ月)生活習慣の修正を行っても140/90mmHg未満に降圧しない場合は降圧薬治療を開始。高リスクでは生活習慣の修正と並行して降圧薬治療を開始します。

治療としては、以下のようなものがあります。
まず、高血圧の成因には遺伝的素因と環境要因が関与していますが、環境要因には生活習慣が大きな比重を占めているため、ライフスタイルの見直しが必要になります。

特に減塩が重要であり、1日6 g以下の食塩制限が勧められます。飽和脂肪酸やコレステロールに富む食事を避け、野菜や果物を積極的に摂取します。飲酒はビール1本あるいは日本酒1合/日程度に制限します。

また、肥満者では減量によりBMIを25以下に保つようにします。そのほか、規則的な運動を1日30分程度、少なくとも週に3日以上行うようにします。

喫煙は動脈硬化のリスク因子であるのみならず、一過性の血圧上昇をもたらし、仮面高血圧の原因ともなるので禁煙することが望まれます。

このような生活習慣の見直しのほかに、薬物治療があります。一般的に、6種類の降圧薬[Ca拮抗薬、アンジオテンシン脅容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬]を主要降圧薬として用いています。

軽中等症の高血圧の場合には単剤で治療を開始し、降圧目標値に達しない場合には増量、あるいは薬理作用の異なるほかの薬剤の追加、あるいは他剤への切り換えを行います。

降圧効果や副作用、エビデンスなどから一般的にはCa拮抗薬あるはACE阻害薬やARBのようなレニン−アンジオテンシン(RA)系抑制薬をまず用いることが多いです。一般的には、140/90mmHg未満を、腎障害や糖尿病合併例では130/80mmHg未満を降圧目標値とし、そのためには併用療法が重要となります。

併用療法として、まずCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用を勧められています。2剤併用で十分な降圧が得られない場合には、3剤目として少量の利尿薬を併用します。

服薬の注意点としては、ACE阻害薬は、血管浮腫を起こすことがあるので「唇・舌の腫れ」を感じたら直ちに受診するようにしましょう。空咳も出ることがあります。RA系抑制薬は、妊娠中に服用すると胎児に影響があるといわれており、注意が必要です。

Ca拮抗薬服用では、発生する頭痛や顔のほてりがでることがあります。ただ、継続服用により解消されることも少なくありません。また、これはグレープフルーツジュースとの併用によりその発現頻度があがることがあります。

利尿薬は、塩分摂取の多い患者やRA系抑制薬服用中の患者さんには、効果が強く出ることがあるので少量から開始するほうが望ましいと考えられます。

「高血圧を指摘されていないから」と安心する前に、早朝高血圧の存在などを疑うことも必要なのではないか、ということが言えると思われます。いずれにせよ、ライフスタイルを見直すことは重要なことであると思われます。

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