筋力が徐々に失われる難病、筋ジストロフィー(筋ジス)の症状を、遺伝子の働きを妨げる手法で改善することに、国立精神・神経センターなど日米のチームが成功し、米神経学会誌に発表した。チームは「将来、多くの患者に応用が期待できる」としている。

筋ジスの中で最も多い「デュシェンヌ型」の犬で実験。同型は、筋肉細胞の形を保つタンパク質の合成が、遺伝子変異で途中で止まり、筋力の低下や萎縮(いしゅく)が起きる。

チームは「モルフォリノ」という化合物を注射し、変異した遺伝子が働かないようにする手法を開発。タンパク質を合成できるようにした。筋ジス犬に週1回、計5回注射すると、以前より早く走った。注射しない犬は症状が進み、走るのが遅くなった。

ただ、足の筋肉細胞の中で合成されることを確認したが、心臓ではほとんど合成されず、筋肉の種類で効果が分かれたという。
(筋ジス症状の改善に犬で成功 日米チーム)


筋ジストロフィーとは「筋線維の変性・壊死を主病変とし、進行性の筋力低下をみる遺伝性疾患である」と定義されています。近年、分子遺伝学的な進歩により、次々と遺伝子座が異なる疾患が見い出されています。

主な分類としては、
1.X連鎖劣性遺伝
1)Duchenne型
2)Becker型
3)Emery-Dreifuss型
2.常染色体劣性遺伝
1)肢帯型
2)先天性:福山型、非福山型(メロシン欠損型、メロシン陽性型)
3)遠位型(三好)
3.常染色体優性遺伝
1)顔面肩甲上腕型
2)肢帯型
3)眼・咽頭型

筋ジストロフィーの有病率は、人口10万人に対して約4人であり、病型別の相対頻度はおおよそDuchenne型筋ジストロフィー(DMD) 60%、常染色体劣性の肢体型筋ジストロフィー(LG) 30%、顔面・肩甲・上腕型筋ジストロフィー(FSH) 10%となっています。

Duchenne型では、6歳頃から運動の退行が起こり、9〜10歳には車椅子の生活となり、20歳前後から呼吸障害が出現するといった進行が起こります。初発年齢は通常5歳以下であり、初発症状は転倒しやすい、速く走れないなどの症状が現れます。

体幹・四肢近位筋優位の筋萎縮、筋力低下による登攀性起立であるGowers(ゴワーズ)徴候、動揺性歩行、翼状肩甲、進行性のため、10歳前後で自力による起立や歩行は不可能となってしまいます。筋萎縮による関節の拘縮・変形や知能低下なども起こり得ます。

正常の筋細胞膜には、ジストロフィンと呼ばれる蛋白質が存在しています。ジストロフィンは遺伝子座上 Xp21に存在する遺伝子にコードされており、Duchenne型ではこの遺伝子に異常があります。このため、筋細胞の染色で正常ならみられるジストロフィンの反応が欠損しています。

ジストロフィンは、筋細胞膜を構成している他のいくつかの成分と複合体を形成しており、筋細胞膜の安定・情報伝達に重要な役割を果たしています。したがって、ジストロフィンの欠損は筋細胞膜の異常をもたらし、さらには筋細胞の崩壊をきたすものと考えられています。

治療としては、以下のようなものがあります。
遺伝子治療はまだ現実的ではなく、対症療法が主体となります。運動機能維持のみならず、呼吸循環不全に対する治療などが必要となります。

薬物治療としては、ステロイド薬投与などが考えられます。早期の歩行可能な例(4〜5歳児)に対して推奨されています。独歩期間の延長が2〜4年程度みられるといわれていますが、長期の投与は副作用のため困難であると考えられます。

左心不全は、15歳頃から出現することもあり、心エコーで左室駆出率40%以下、血清BNP100pg/mL以上で治療を開始します。第1選択はアンジオテンシン変換阻害薬、次にジギタリス、利尿薬などを用います。

呼吸管理も重要で、肋間筋や横隔膜の筋力低下が進むと肺胞低換気と咳嗽の弱さが出現してきます。普段から呼吸リハビリテーションを行うとともに、呼吸器感染症時には体位ドレナージ、振動による排痰法や用手胸郭圧迫法による呼吸補助が有効となります。

鼻マスクによる間欠的陽圧換気(NIPPV)などが最もよく用いられており、この方法も限界に達した場合では、気管切開を行って陽圧呼吸を行うようになります。

遺伝子治療による根治は、非常に期待されます。ぜひとも今後、さらなる展望が開け、臨床応用されることが望まれます。

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