最近注目度が増しているのが発毛剤や育毛剤。市場規模は07年度の推計で438億円、2012年予測では480億円を見込んでいる。

2005年の発売以降じわじわと認知度を高めてきた万有製薬の「プロペシア」はその代表格。世界60か国以上で発売されている世界で唯一の「飲む育毛剤」であり、購入時に医師の処方箋が必要になるにもかかわらず、いまでは年間100億円以上を売り上げる。

「プロペシア」は、うす毛の主な原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑えるなど、効果が医学的に立証されている数少ない育毛剤だ。1日1回の服用で、7割以上の人に改善効果がみられた。

一方、発売から10年、育毛剤としては異例のヒット商品となった大正製薬の「リアップ」シリーズからは、新商品「リアップX5」が登場した。毛髪の成長促進因子であるミノキシジルを、5倍に増やして育毛効果をさらに高めている。

「プロペシア」と「リアップ」どう違うのか。東京メモリアルクリニック平山の佐藤明男院長は「どちらが効くということではなく、当院では基本的な治療としてプロペシアを処方していますが、効き方には個人差があるので、患者さんの症状にあわせてプロペシアとリアップを併用することもあります」と話す。

いずれにしても、育毛治療は効果が出るまで時間がかかる。「効果が実感できず、やめてしまった」という男性は少なくない。治療を根気よく続けていくために、クリニック平山では実際に毛髪が増えていくようすを写真に撮って、患者自身の目で確かめてもらっている。佐藤院長は「育毛治療は効果を実感できることが大事」と説く。
(医学的に立証された育毛剤の使い方 「根気よく続けていく」がポイント)


脱毛症とは、毛髪が異常に脱落する状態だけでなく、毛は抜けないが毛の質や太さ、色調などが変化し、毛がまばらに見える状態も含まれます。分類としては、先天性か後天性か、誰にでも起こるものか病的なものか、他病の一症状かどうかなどによって分けられます。代表的なものには、円形脱毛症や男性型(壮年性)脱毛症があります。

特に、男性型脱毛症で悩まれている方は多いようで、成人男性(5013万人)のうち推定薄毛人口は1342万人で、薄毛率は26.78%であり、1982年の第1回調査に比べ722万人増、薄毛率は1.72倍になっているそうです。

中でも、男性型脱毛症(androgenic alopecia;AGA)とは、いわゆる男性ホルモンが関与する脱毛症です。思春期過ぎより、遺伝的基盤をもつ男性の頭頂部から前頭部の毛が薄くなってくる状態を指します。

男性ホルモン作用により、太く長い終毛が細く短い軟毛に変化し禿げたようにみえる状態(硬毛の軟毛化)であり、初期には毛の数は変わらないが後に減少します。

原因としては、毛周期において成長期が短縮し、休止期毛の割合が増加してくることが考えられます。毛周期とは、毛髪の生え変わる様子を説明したもので、毛器官の周期的な組織変化(生えてから抜け落ち、また生えるまでなど)を指します。

具体的には、「成長期(2〜6年)→退行期(2週間)→休止期(3〜4カ月)→成長期…」となっています。毛髪を産生する時期を成長期といい、一定期間続くと毛母を含む毛球は萎縮して退行期に移行します。退行期の毛根部は、アポトーシスにより次第に退縮して休止期毛器官となります。

平均的な頭髪の本数を10万本とすると、1日50〜80本程度の抜け毛は生理的脱毛の範囲ということになります。ですが、男性型脱毛症(AGA)になってしまうと、成長期が始まったかと思うと、すぐに退行期に突入。毛髪が太く長く成長せずに、細く短いうぶ毛のような状態(軟毛)のまま抜けてしまいます。

治療法としては、以下のようなものがあります。
AGAの脱毛部にはDHT(ジヒドロテストステロンであり、テストステロンが5αリダクターゼによって変換されたもの)が高濃度にみられ、これがヘアサイクルの成長期を短くする原因物質と考えられています。

そこで、プロペシアが治療法として考えられました。これは「5αリダクターゼ阻害薬」というものであり、5αリダクターゼ阻害薬は、上記のDHT(ジヒドロテストステロン)が作られるのを阻害します。その結果、短くなってしまったヘアサイクルの成長期を延長してくれます。

薬代は1錠250円程度です。消費税を含めると1ヶ月約7,800円となっています。ただ、3年経過後は2日に1回や3日に1回の服用でも髪を維持できることが多くなってくるので、薬代も減らせることができるそうです。

ただ、副作用としては、眠気、精力減退、初期脱毛、重いものでは消化器症状や発熱、肝障害といったことが起きる可能性もあるため、定期的な受診が望まれます。

また、頭皮を清潔に保ち、発毛剤・育毛剤で毛根部の血流増加、栄養補給、毛包環境整備を図ることも重要です。養・育毛剤としてはペンタデカン酸、塩化カルプロニウムなどが、発毛剤としてミノキシジールが認められています。現在では、ミノキシジールの含有液(リアップなど)が販売されています

悩まれている方は、まず皮膚科や専門外来などを受診され、しっかりと治療なされることが望まれます。

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