首に人工呼吸器をつけているが、通した穴が緩くなるので、30分以上続けて眠れなくなった。深い眠りに入ると、首の周辺の筋肉が緩み、酸素が漏れるのだ。今年に入って2度酸素不足で緊急救命室に運ばれた。

肉体的な苦痛以上に彼をいじめるのは眼球マウスも使うことができない状況だ。人工呼吸器で声を失った後、彼は眼球マウスを「自分が生きていく理由」と表現した。しかし最近、疎通の頼みの綱を逃すと生きる意欲をうんと失ったというのだ。

「療養所を設立したいと頑張ってきたが、遅々として進まないからつらいんです」母親のソン・ボクスンさん(68)がため息をついた。看護人へのお金だけでも大変な毎日だが、6700万ウォンを寄付しようという息子の提案を拒絶できないのもこのためだ。

「安楽死」を言及した彼も療養所の話をする時は力を振り絞った。最後の望みは何かと問うと「本を出して収益金を療養所設立の足しにしたい」と文字盤で伝えた。パク・スンイルさんの部屋のドアを閉めると、ちょうど国内初の安楽死施行患者が人工呼吸器をはずしたニュースが流れていた。

「やれやれ、しきりにこんなニュースが出るからしょうもない話をするのか…」ソンさんが急いでテレビのボリュームを下げた。

延世大バスケットボール選手出身最年少コーチに抜擢されたパク・スンイルさんは、プロバスケットボール選手を経て国内最年少プロバスケットボールコーチとなった。選手としては光を見ることがなかったが、起亜(キア)自動車バスケットボール団としての短い選手生活を後にしてバスケットボール留学のため米国に向かった(2000年)。

そして2002年春、31歳のとき、現代モービスのコーチに抜擢されて帰国した。彼が「人生の全盛期」とする年だが、その全盛期はとても短く終わった。その年の6月、彼はソウル大学病院神経科でルーゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)の宣告を受けた。

11カ月後に車椅子生活となり、20カ月後、ベッドに就くと起きることができなくなった。発病後も彼は希望を失わなかった。ルーゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)の広報大使となって社会のあらゆる方面に支援を要請した。

ルーゲーリック病の患者たちのための専門療養所を建てたいと訴えたのだ。2004年春、呼吸器官がまひし、彼は話すことができなくなった。しかし同じ年の年末、姉たちが購入した「眼球マウス」で再びインターネット広報活動を再開した。
(ルーゲーリック病と戦って7年、パク・スンイルさん)


筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、上位・下位運動ニューロンが障害され、進行性の筋力低下、筋萎縮をきたす疾患です。アメリカではLou Gehrig病とも呼ばれます。

具体的には、手足や喉、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく疾患であり、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ栄養している運動神経細胞が変性しまうために起こります(神経変性疾患)。

有病率は10万人に対して1.9〜6.5人です。男女比は 1.5:1 で男性に多いです。多くは50歳以上で発症します(年齢とともに増大して50〜60歳代でピークを迎える)。全ALSの約5%に家族性(常染色体優性遺伝)を示すものがあります。

また、グアムや紀伊半島南部に通常の約50倍の多発地域があることが知られています(西太平洋ALSとよばれる)。多発地域の土壌、水質検査でCa、Mgの低下、Mn、Alの高値が指摘されており、電解質、微量金属との関係も指摘されています。

家族性筋萎縮側索硬化症(FALS)の20%に21q染色体に異常を認め、これがスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を低下させ、活性酸素過剰となり、神経障害を引き起こすという説があります。

また、ALSでは前角細胞にニューロフィラメント(NF)の貯留が認められるため、NFの蓄積が軸索機能を阻害し、運動ニューロン死をきたすという仮説もあります。他にも、神経栄養因子の異常、グルタミン酸代謝異常、自己免疫機序の関与も考えられています。

上位運動ニューロンの変性によって四肢の痙縮、深部腱反射亢進、Babinski徴候などが生じます。下位運動ニューロンの変性によって顔面、舌、咽頭、呼吸筋、四肢、体幹の筋萎縮、筋力低下、筋線維束収縮を生じることがあります。

進行性の経過をとり、数年の経過で起立・歩行困難、呼吸不全に陥ってしまいます(病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2〜4年で死亡)。ただ、知能障害や感覚障害はみられず、膀胱直腸機能や眼球運動は最後まで保たれれます。

通常、一側上肢または下肢筋の筋力低下、筋萎縮で発症します。四肢の筋力低下、萎縮、体幹筋の萎縮、球麻痺(球とは、延髄球のこと。口や舌などの運動を司る神経が集まっている。そのため、ここが障害されると構音障害、嚥下障害などが生じる)、呼吸筋麻痺へ進行していきます。球症状、呼吸筋麻痺の症状が初発になることもあります。強制泣き・笑いが進行例でみられます。

また、感覚症状や外眼筋麻痺、膀胱直腸障害、褥瘡は一般的には認めません。これらをALSの陰性4徴候といいます。通常、認知症ははありませんが、ALSの数%に認知症を認め、湯浅、三山型と呼ばれます。

初発症状としては、筋力低下あるいは筋萎縮が徐々に始まるものがほとんどですが、ごくまれに急に出現したと考えられる場合もあります。上肢の症状から始まるものが約50%、下肢と球筋から始まるものが残りのそれぞれ半分ずつであるといわれています。きわめてまれに、呼吸筋麻痺で初発する場合も知られています。

上肢の症状としては巧緻運動の障害が多いですが、線維束性れん縮で気付かれる場合もあります。下肢の症状としては突っぱり感や筋力低下がありますが、有痛性スパスム(いわゆるこむら返り)も少なくないです。

球筋の症状としては言語が不明瞭になった、むせやすいなどが多いです。なお、本来ないはずの感覚障害を思わせるしびれ感、冷感などが初期症状である場合も意外にありますが、運動障害が明らかになるとその頻度は少なくなります。

筋萎縮性側索硬化症に特異的な検査所見はなく、このような臨床経過や神経学的所見から総合的に診断します。針筋電図では3肢以上で神経原性変化を認めることが必要であり、運動神経伝導検査では伝導速度の遅延はなく、複合筋活動電位の振幅が低下します。脳MRIでは時に錐体路の走行に沿って異常信号が出現する場合があります。

治療としては、以下のようなものがあります。
現在の所、根治治療はありません。対処療法が主だったものになり、それにより長期生存も可能となります(ただし、確実に進行し,四肢体幹筋麻痺によりベッド上生活となり、球麻痺、呼吸筋麻痺をきたし、発症後平均 2〜3年で死亡という経過をたどってしまうと考えられます)。

具体的には、球麻痺による嚥下障害に対して胃瘻など経管栄養の導入、呼吸筋麻痺に対してBiPAP、人工呼吸器の装着、気管切開術が適応となります。進行期におけるコミュニケーションの手段として文字盤やコンピュータを積極的に利用することで図れます。

神経栄養因子の投与やグルタミン酸を抑制する薬物治療(興奮性アミノ酸であるグルタミン酸の働きを阻害することで生存期間の改善が期待される;リルゾール)が試みられ、インスリン様成長因子-(IGF-)、リルゾールが病状の進行を遅延させるとの報告もありますが、まだ確実な治療とは言いにくいと思われます。

また、Cyclooxygenase-2(COX-2)酵素の働きを阻害することで生存期間の改善が期待される.COX-2阻害作用のある関節炎治療薬のセレブレックスは米国にて臨床試験が進められています(ハイペン)。

四肢の痙縮が強い場合には抗痙縮薬(塩酸エペリゾンなど)を投与します。

国内でも、エダラボンの点滴投与や、メチルコバラミンの大量筋肉内投与の治験が行われています。根治治療の研究や開発が進むことが望まれます。

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