世界保健機関(WHO)に属する国際がん研究機関(IARC)は発がん性物質についての会合を開き、アスベスト(石綿)について、喉頭がんと卵巣がんも発症させると認定した。国内では現在、石綿による労災補償や救済の対象になるがんとして職業病リストに例示されているのは、肺がんと中皮腫だけ。IARCが認めたことで政府は認定基準などの検討を迫られそうだ。

英国の腫瘍学雑誌「ランセット・オンコロジー」電子版5月号が伝えた。同誌によると会合は3月にあり、石綿に両がんの発がん性があることを認定した。これまでは肺がんと中皮腫に限り発がん性を認めていた。

IARCは、高濃度の石綿を浴びた人の喉頭がんのリスクは、浴びない人の1.6~2.5倍になると結論づけた。また、第二次世界大戦中に石綿を原料にしたガスマスクを製造していた英国人女性集団の疫学研究などを例に挙げ、高濃度の石綿を浴びた場合、卵巣がんのリスクが高くなるとしている。

石綿を吸い込むとリンパ管や血液を通して運ばれるともいわれ、卵巣に蓄積すると指摘する論文などがある。喉頭がんは、既にドイツ、ベルギー、オーストリアなどでは石綿による職業病リストに挙げられている。

日本の労災補償の規定では業務によることが明らかな疾病は対象になる。実際は例示外の病気が認定されるのは困難で、肺がんと中皮腫以外のがんが石綿による労災と認められた例はない。工場周辺の住民らを対象にした石綿健康被害救済法は、肺がんと中皮腫以外は救わない規定になっている。

これまでも国内で、喉頭がんを石綿関係の疾病として指摘してきた専門家はいた。また、卵巣がんについても、関係を示唆する論文があった。IARCの認定によって、今後、関連の学会や厚生労働省、患者団体を巻き込んで石綿がんの労災認定のあり方の議論が進むとみられる。

まず考えられるのが、労働基準法施行規則の職業病リストへの掲載を求める患者団体の運動だ。以前から海外では喉頭がんをリストに挙げている国はあり、要望する姿勢を強めていた。

厚労省はこれまで、職業病リストや認定基準は検討会などで論議し、決定してきた。即座に喉頭がんと卵巣がんがリスト化されることは考えにくい。だが、当面の措置として、通達などで二つのがんが労災認定の可能性があることを伝えるだけでも効果がある。二つのがんについて各労働基準監督署で門前払いにしてきたことが多いと考えられ、慎重な検討を促すことになるからだ。
(喉頭、卵巣がんも発症 WHO機関が認定)


アスベストは石綿とも言われ、人体に対する影響は多彩であり、アスベスト肺、胸膜肥厚、肺癌、中皮腫(悪性中皮腫)などが指摘されています。

アスベスト肺とは、比較的大量のアスベスト吸入により、肺のびまん性線維化病変を主立った特徴とした疾患です。肺が線維化してしまう肺線維症の一つです。簡単にいってしまえば、アスベストを吸うと気管支の奥まで入り込み、肺の間質で炎症が起こり、肺組織の構造を変化させます。結果、線維化が起こってきた状態を指すわけです。

肺における線維化は、間質や肺胞の炎症性細胞を中心とする浸潤変化とともに、線維芽細胞を中心とする細胞増殖、線維素の分泌・沈着などにより起こります。こうした変化が起こってくると、肺の組織が硬くなります。

こうした線維化が起こってくると、患者さんは息苦しさを感じるようになります。肺は本来、ガス交換(酸素および二酸化炭素など)を行っていますが、線維化が起こると、この効率を著しく損ねてしまいます。

この症状は、徐々に進行してきます。まずは労作時(体を動かしたとき)に息切れが出現してきます。初期は、こうした労作時のみですが、進行すれば安静時にも息苦しさがみられるようになります。会話や着替えのときでも、息が切れるほど呼吸機能が低下してしまうこともあります。

また、こうした間質性肺炎の他に、びまん性胸膜肥厚も合併します。胸膜は肺の表面、および、肋骨の内側を包む2層の薄い膜(壁側および臓側胸膜)です。この壁側および臓側胸膜で囲まれた胸腔(胸膜腔)には、正常では20ml程度の液体が存在し、潤滑液としての役割をはたしています。

アスベストによる刺激があると、炎症(胸膜炎)が起こり、胸膜腔に水が溜まってきます(胸水)。この炎症が繰り返し起こると、上記同様に組織が線維化し、肥厚してきます(びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜まで線維性肥厚が及んでおり、良性石綿胸水と呼ばれる胸水貯留の後にみられる)。

また、アスベストは発癌性があり、悪性中皮腫および肺癌の発生と関連があるといわれています。悪性中皮腫症例の80%は、アスベストが原因と考えられています。

アスベストに被曝してから悪性胸膜中皮腫が発症するまでの期間は20〜50年とされています。気道に吸入されたアスベストは胸膜直下に到達し、少なくとも約20年の慢性刺激によって腫瘍が発生するとされています。

まれな疾患であり、通常、悪性びまん性胸膜中皮腫と呼称されます。職業的にアスベスト吸入が発症要因として知られています。早期診断は難しく、胸水が貯留した場合に呼吸困難感、咳、胸痛、体重減少などの自覚症状が出て診断されることが多いです。

悪性胸膜中皮腫は、上皮型、線維肉腫型、二相型の3型に分類されます。最近、線維肉腫型の中で、硝子化膠原線維を豊富に認める結合組織性中皮腫を亜型として分類しています。

頻度は、上皮型54%、肉腫型22%、混合型24%となっており、上皮型が半数近くとなっています。上皮型は腺腔形成がみられることから、胸膜直下に発生しやすい肺腺癌との鑑別に苦労することが多いです。また、腫瘍が臓器というより体腔の中で発生し、胸膜表面上をびまん性に進展するという特殊性から、診断はしばしば困難です。

鑑別する上では、細胞・組織診が必須となります。ですが、胸水細胞診、経皮胸膜生検の診断率はともに25%程度と低いため、最近では積極的に胸腔鏡下胸膜生検が行われ、その陽性率は90%以上となっています。

病理学的には、肺腺癌と鑑別困難なことがあり、その際には免疫組織所見〔中皮腫:calretinin(+),WT-1(+),CEA(-)〕が有用とされます。

治療としては、以下のようなものがあります。
IMIG分類では、
・T因子
Tx: 原発腫瘍の評価困難
T0: 原発腫瘍は認められない。
T1: 臓側胸膜の病巣浸潤に関係なく、同側の壁側胸膜に浸潤する。
T1a:一側の壁側の胸膜に限局
T1b:一側の臓側の胸膜までに限局
T2: 一側の肺・横隔膜への浸潤
T3: 一側の局所進行腫瘍だが切除可能(胸壁筋・心膜・縦隔 臓器など)
T4: 切除不能の腫瘍

・N因子
N1: 同側の傍気管支,同側の肺門リンパ節
N2: 同側の縦隔リンパ節,気管分岐下リンパ節
N3: 対側縦隔・肺門または斜角筋および頸部リンパ節

・M因子
T0: 遠隔転移なし
T1: 遠隔転移あり

といったTNM分類から、
stageIa :T1aN0M0(x:1,2)
stageIb :T1bN0M0(x:1,2)
stageII :T2N0M0
stageIII:TxN1M0(x:1〜3)、TxN2M0(x:1〜3)、T3NxM0(x:0,1,2)
stageIV :T4 N3 M1のいずれかあり
となっています。

stage気stage兇琉貮瑤両瀕磴妊螢鵐兩疆尚椶里覆い發里砲弔い討蓮外科的切除(胸膜肺全摘術)が行われます。手術不能例に対しては化学療法が選択されますが、まだ標準的レジメンはありません。

塩酸イリノテカン(トポテシン)や塩酸ゲムシタビン(ジェムザール)の有用性が示唆され、複数の第響衫彎音邯海侶覯漫▲轡好廛薀船(ランダ)+トポテシン、シスプラチン +ジェムザールが奏効していると言われています。

pemetrexed(アリムタAlimta)とシスプラチンの併用が、シスプラチン単独よりも有用であるといわれており、今後の標準治療となる可能性が指摘されています。

さらに、放射線に関しては疼痛緩和、あるいは胸膜肺全摘術後に外照射を行うなどして使用されています。

今後、どのようになるのか分かりませんが、上記のように卵巣癌や喉頭癌との関連性も指摘されており、アスベストと健康被害の関係に対するさらなる福祉や補償などが必要と考えられます。

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