東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)が5月、血液を固まりにくくする抗凝固剤「ワーファリン」を入院中の女児に過剰投与する医療ミスを起こしたが、都へ1カ月以上報告していなかったことが分かった。病院側は「緊急性はないと判断した」と説明しているが、都は対応の遅れを指摘している。

青戸病院などによると、5月25、26日、小児科の医師が腎臓疾患で入院中の女児に対し、ワーファリンの分量「1日当たり」と「体重当たり」を誤って計算し、通常の約8倍を投与した。続けると出血して健康被害が起きる危険があったが、2日目の投与後に別の医師がミスに気付き、家族に謝罪したという。

都は05年、管理上の問題があったり、他医療機関への警鐘になる医療事故が起きた際に、迅速な報告をするよう医療機関に通知した。だが青戸病院が電話で報告したのは今月2日だった。病院側は取材に「事実経過の整理や、院内への周知が済んでから報告した」と説明。3日に一部報道機関に内部告発とみられる文書が送られていたが「内部告発を受けて対応したわけではない」と釈明している。

一方、都医療安全課は「詳細は必要に応じて後日文書で求める。まずは報告してほしかった」と話している。

医療事故は04年10月の医療法改正で、大学病院などに2週間以内の厚生労働省の外郭団体への報告義務が課せられた。だが青戸病院を含む分院は対象外で同法に基づく報告をしていない。
([薬過剰投与]女児に8倍、報告も遅れる 慈恵医大青戸病院)


ワルファリンカリウム(ワーファリン)とは、ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制して抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮する薬剤です。

要は、血液を固める作用をもつ因子(プロトロンビン、第察↓宗↓尚子)などを産生するのにはビタミンKが必要であり、そのビタミンKの作用を押さえるのがワーファリン、ということです。

また、ワルファリンK投与によって血中に遊離する、つまりは副次的に産生されるPIVKA(プロトロンビン前駆体)は、抗凝血作用及び血栓形成抑制作用をもちます。

前駆体蛋白質のグルタミン酸残基(Glu)を、Glaに変換するγ-カルボキシラーゼの補酵素としてビタミンKが必要であり、ビタミンK欠乏状態であると、これら蛋白質の産生障害が生じます。

その結果、肝で産生されるプロトロンビン、第察↓宗↓尚子はPIVKA(protein induced by vitamin K absence or antagonist)のまま血中に分泌されることになります。PIVKAはリン脂質膜に結合できないため凝固因子としての機能を発揮できず、出血傾向をきたすことになります。

ちなみに、こうしたPIVKAは「ビタミンK欠乏」によって産生され、臨床的にはビタミンK摂取量不足、閉塞性黄疸に伴う胆汁排泄障害によるビタミンK吸収障害、広域スペクトラムの抗生物質投与によるビタミンK産生腸内細菌叢の減少、などによっても、血中に出現してきます。

ワーファリンによる加療適応となるのは、血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防などであり、こうした疾患などに処方されます。

過剰投与などによる副作用としては、以下のようなものがあります。
重大な副作用としては、出血があり、脳出血等の臓器内出血、粘膜出血、皮下出血などがあります。こうした場合、減量または休薬、あるいはビタミンK製剤投与、新鮮凍結血漿の輸注などの処置が必要になります。

さらに、皮膚壊死なども生じる可能性があります。投与開始による早期にプロテインC活性の急速な低下が原因で、一過性の過凝固状態、そして微小血栓を生じ、皮膚壊死に至る可能性もあります。

また、肝機能障害を起こす可能性もあり、AST・ALT・Al-P上昇などを伴う肝機能障害が起こる可能性もあります。黄疸などが現れることもあり、減量または休薬などの処置があります。

また、内服中の注意点として、上記のような作用機序があるため、ビタミンKを含有するアルコール、納豆、クロレラ食品、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品などは食べないようにする必要があります。

フェニトイン、スルホニルウレア系糖尿病剤(トルブタミド、クロルプロパミド等)は、相互に作用増強があり、凝固能の変動に十分注意しながら投与する必要があります。

また、抗甲状腺製剤では、作用増強(低プロトロンビン血症の報告)があるといわれています。甲状腺機能亢進症の患者に抗甲状腺製剤を投与すると凝血能が変化し、本剤の作用が見かけ上減弱または増強の可能性もあります。

こうした副作用などもあり、ワーファリン内服中は生活上、上記のような点にご注意ください。

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