演出家・蜷川幸雄氏(73)が手がける「NINAGAWA 十二夜」(大阪・松竹座、5〜27日)の通しげいこが4日、大阪市中央区の同劇場で行われた。

蜷川氏は6月4日から1週間、脳梗塞で入院していたが、早期発見だったこともあり「この通り、ピンピンしています」と何事もなかったかのような元気な笑顔。

「酒やたばこはやらないが、今までは好き勝手にカツ丼や天丼ばかりを食べていた。でも、今は野菜サラダの日々です。情けない…」と笑わせていた。
(蜷川氏 脳梗塞だったけど驚異の回復!)


脳梗塞とは、脳動脈閉塞などによる虚血により、脳組織が不可逆的な変化(壊死)を起こした状態を指します。

脳梗塞の発症率は10万人に対して100〜150人、死亡率は10万人に対して約70人であり、救命率もさることながら、患者さんの生活にも大きな影響を与えるため、重要な疾患です。また、脳梗塞は脳卒中全体の約60%を占め、最も頻度の高い病型です。年齢が高くなるほど、脳梗塞の占める比率は上昇します。

脳は虚血に最も弱い臓器の1つであり、血流に富んだ組織(約50ml/100g脳/分)です。脳代謝の面からみると、代謝が50%以下になると脳神経機能が障害され、15%以下になると梗塞に陥ってしまうと考えられています。

症状としては、壊死した領域の巣症状(その領域の脳機能が失われたことによる症状)で発症するため症例によって多彩な症状を示します。代表的な症状としては、麻痺(運動障害)、感覚障害、失調(小脳または脳幹の梗塞で出現し、巧緻運動や歩行、発話、平衡感覚の障害が出現)、意識障害(脳幹の覚醒系が障害や広汎な大脳障害で出現)がおこることもあります。

神経症状としては、片麻痺、半側感覚障害が多くみられます。神経症状は障害される部位、閉塞血管によって異なります。

たとえば、前大脳動脈領域の梗塞では、下肘に強い片麻痺(感覚障害を伴うこともある)を示すことが多いです。時に筋固縮、バランス障害(失立、失歩)、記銘・記憶障害、性格の変化などが起こりえます。

中大脳動脈領域の梗塞では、顔面を含む片麻痺を示すことが多いです。半側(麻痺と同側)の感覚障害を伴うことと伴わないことがあります。

巣症状・皮質症状としては、優位半球障害ならば、言いたい言葉が出ない、他人の話が理解できないなどの失語症、失行症(道具を使った簡単な動作ができない)、左右失認、手指失認、計算ができないなどが起こりえます。劣位半球障害では、左にあるものを無視する(半側空間無視)、病態失認(自らの麻痺の存在を認めない)、着衣失行などが起こりえます。これらの巣症状は、病変の部位、広がりによって左右されます。

後大脳動脈領域の梗塞では、起始部閉塞では皮質枝領域の他に、視床が障害されるので反対側の感覚障害をきたします。特に、深部感覚が高度に障害されやすく、運動失調も伴いやすいです。皮質枝領域の梗塞では、同名半盲(両眼とも病巣と反対側の視野の欠損)が起こりやすいです。その他、記銘・記憶の障害、優位半球の梗塞では失読、視覚失認を認めることもあります。

また、脳梗塞の起こる成因としては、.▲謄蹇璽犒貔鮴脳梗塞、⊃憾鏡脳塞栓、ラクナ梗塞があります。

.▲謄蹇璽犒貔鮴脳梗塞は、動脈硬化性の病変(アテローム)が大きくなり、その部分に血栓を形成し動脈閉塞を来したり、動脈硬化性病変部分で形成された血栓やアテロームの一部が、剥離してその動脈の末梢部分を閉塞したりといったことが考えられます。ほかに、血圧低下などを起こした際に、その動脈硬化部分より遠位部の血流障害を来す場合などがあります。

⊃憾鏡脳塞栓は、心疾患において心腔内に形成された血栓が脳動脈に達し、脳動脈の急性の閉塞を来すものです。

ラクナ梗塞は、脳深部の穿通枝動脈の閉塞によって生じるもので、一般に脳細小動脈硬化が原因と考えられています。ラクナ梗塞の多くは穿通枝領域の梗塞で、梗塞の大きさが最大径1.5cm以下のものを指します。原則として意識障害はなく、また、大脳の巣症状も呈しません。

蜷川さんの場合、はたしてどのような症状が現れていたのか、分かりませんが、早期の治療によって回復されたようです。

その治療としては、以下のようなものがあります。
急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

近年、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が欧米では実施され、わが国でも2005年10月より健康保険に導入されました。ただ、発症3時間以内である必要があり、アルテプラーゼ静注療法が行われます。

血栓溶解による再開通促進を目的とし、治療までの時間が短いほど効果は確実であると考えられます。ただ、症例選択を誤ると重篤な合併症(特に頭蓋内出血)や死亡リスクが高くなってしまいます。出血対策のため、投与後36時間以内は厳重な管理が必要となります。

アクチバシン注、またはグルトパ注を、34.8万単位/kg(0.6mg/kg)で投与します。投与方法としては、総量の10%を急速(1〜2分間)で静脈内投与し、その後残りを1時間かけて静脈内投与します。投与量上限は、3,480万単位(60mg)となっています。

脳保護薬(抗酸化薬)エダラボンは、発症24時間以内の脳梗塞(病型を問わない)に適応があります。肝機能障害、腎機能障害、血液障害などが発現することがあり(一部は同時発現)、投与前および投与後頻回の検査が必要となります。

脳梗塞を起こした部位が1〜2日するとむくみが起こるので、抗脳浮腫療法により脳浮腫の原因となる水分を取り除きます。脳梗塞になって3時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。このように、脳浮腫治療にグリセロール、切迫脳ヘルニアにマンニトールを投与することもあります。

ある程度以上の障害が残った例では、リハビリテーションを行う必要があります。蜷川さんの場合、後遺症もなく退院なさったそうです。

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