読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
30年前から「クインケ浮腫」で、度々唇や髪の生え際に大きなこぶがふきでて、かゆみも伴います。最近は、頭の中にできて、両耳の奥が熱っぽく、呼吸が苦しくなります。(72歳女性)

この相談に対して、NTT東日本関東病院皮膚科部長である五十嵐敦之先生は、以下のようにお答えになっています。
クインケ浮腫は「血管性浮腫」ともいい、まぶたや唇、顔面、舌などの皮膚の深い部位がむくむ病気です。じんましんと似て皮膚が盛り上がりますが、赤くなることはなく、通常はかゆみもありません。突然現れて2、3日続くことが多いのも特徴で、じんましんと同時に出る場合もあります。

口の中や、のどに浮腫が生じれば、気道が閉塞して呼吸困難になり、最悪の場合には窒息する恐れがあるので要注意です。腸などの消化管にできれば、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が表れます。

原因は、ペニシリン系抗生物質、アスピリンをはじめとする消炎鎮痛剤、降圧剤のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)、経口避妊薬などの薬剤のほか、食品添加物、感染症などが考えられますが、特定できないことも少なくありません。

クインケ浮腫(Quincke edema)は、血管(神経)性浮腫とも呼ばれ、真皮深層、皮下組織、粘膜下組織に生じる発作性、限局性の浮腫をきたします(痒みなどはみられない)。眼瞼、口唇、咽・喉頭、四肢に生じやすいです。腹痛、下痢、気道閉塞症状を伴い、家族内発生が認められるときは、遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema;HAE)を疑います。

特発性と補体第1成分阻害因子(C1 inhibitor;C1 INH)の減少または機能不全によるものがあります。

特発性のものは、肥満細胞の脱顆粒により生じ、しばしば他の蕁麻疹に合併します。C1 INHの異常によるものでは、補体第1成分の持続性活性化とキニン-カリクレイン系の活性化などにより症状が出現します。

遺伝性のC1 INHの異常によるものを遺伝性血管神経浮腫(HANE)あるいは遺伝性血管浮腫(HAE)と呼びます。HAEの約50%では軽微な外傷、抜歯、手術、月経、局所の圧迫が、残りの50%では精神的緊張、ストレス、不安、疲労などが誘因となります。

遺伝性血管浮腫(HAE)では、血清総補体価(CH50)、C2、C4の低下がみられます。遺伝性血管浮腫(HAE)には儀(量的欠損)と況(質的欠損)があり、儀燭任C1 INHは正常の30%以下となりますが、況燭任C1 INH活性の測定が必要となります。

後天性C1 INH欠損症は慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、自己免疫性溶血性貧血、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、クリオグロブリン血症、直腸癌に合併した例が知られており、検査所見は遺伝性血管浮腫(HAE)に類似しています。

C1 INH欠損によらないものでは、じんま疹と同じようにアレルゲン特異IgE抗体の測定などを行って原因検索を行います。

鑑別としては、局所の炎症あるいは静脈やリンパ管のうっ滞による局所性浮腫などがあります。これらは、血管性浮腫と発作性あるいは一過性という点で異なります。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、まず原因となる薬剤があれば中止し、血管の拡張を抑える抗ヒスタミン薬、特定の酵素が欠乏している場合などにはトラネキサム酸を内服します。難治例に対してステロイド(副腎皮質ホルモン)を長期間内服する場合は、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などの副作用を防ぐために定期受診してください。

なかなか完全には治せないため、長期的な内服が必要です。激しい運動、けが、極端な暑さと寒さ、風邪、疲労、ストレスなどで症状が悪化することもあるので、なるべく避けるようにしてください。

C1 INH欠損のときは、発作時新鮮凍結血漿や精製C1 INHの投与が行われます。予防の目的にはイプシロンアミノカプロン酸、トラネキサム酸、合成アンドロゲン製剤の投与を行います。

C1 INH欠損によらないときは、じんま疹の治療に準じて抗ヒスタミン薬あるいは抗アレルギー薬の投与を行います。

まずは上記のような誘因を避け、さらに予防薬内服などで対処するのがよろしいかと思われます。主治医と相談の上、治療を行ってはいかがでしょうか。

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