麻生渡・福岡県知事が18日、玄界灘の孤島・沖ノ島(福岡県宗像市)を視察中に熱中症で倒れた。ドクターヘリで福岡市内の病院に搬送されたが、軽症で帰宅したという。暑さに加え、船酔いの影響もあったとみられる。

沖ノ島は4世紀から10世紀にかけて日本と大陸を結ぶ海上交通の要衝だったことから、県と同市などが「宗像・沖ノ島と関連遺産群」としてユネスコの世界遺産登録を目指している。麻生知事は登録活動の一環で、地元関係者ら数十人と瀬渡し船で上陸。社殿での神事後、「気分が悪い」と訴えて横たわった。

夏休み初日の18日、九州地方は福岡市など10市町で35度を超える猛暑日となり、熱中症や水の事故が相次いだ。

福岡管区気象台によると、太平洋高気圧に覆われたうえ、南から暖かい風が吹き込んで気温が上昇。宮崎市青島で36.2度と全国最高を記録したほか▽宮崎県西都市35.5度▽大分県佐伯市、宮崎県美郷町35.3度▽福岡市、長崎県島原市、大分県中津市35.1度▽鹿児島市、大分県宇佐市、宮崎県高鍋町35度――で猛暑日を観測した。

この暑さで、鹿児島県薩摩川内市内で部活動中の男子高校生(15)がけいれんを起こし病院に運ばれるなど、九州各地で少なくとも計13人が熱中症で病院に運ばれた。
([麻生・福岡知事]熱中症で倒れる 視察中の沖ノ島で)


熱中症とは、外気においての高温多湿などが原因となって起こる症状の総称です。体内に溜まった熱を下げることができず、体温が異常に上昇することで様々な障害が出てきます。

人体においては、深部体温が42℃以上になると生命の危険が出てきます。そのため、視床下部にある体温中枢は、食事・運動による熱産生の亢進または高温・多湿による熱放散の低下によって体温が上昇すると、皮膚の血流増加と発汗によって放熱を促し、核心温を約37℃に維持しようとします。

ですが、脳の温度が上昇すると体温中枢が障害され、発汗が停止して体温が急激に上昇して40℃以上となってしまいます。結果、細胞障害などから昏睡、けいれん、ショック、溶血、横紋筋融解、腎不全、多臓器不全、DICなどの致命的な病態を生じてしまうことがあります。

熱中症は、高温多湿で輻射熱があり風のない環境下で、運動や作業を始めた初日に起こりやすいです(皮膚にある汗腺は、暑熱な環境で運動や作業をして4日目頃から効率的に発汗する)。また、乳児、高齢者、肥満者、暑さに馴化していない者、脱水状態の者、食事をしていない者、通気性や吸水性の悪い衣服を着ている人に起こりやすいです。

血液から汗を産生する際のナトリウムの再吸収が、急速な発汗では間に合わないといった事態になってしまいます。この際、水分だけを飲用するなどしてナトリウム濃度が低下してしまいます。

熱中症は、水分や塩分摂取の不足で脱水や電解質異常を起こすことから始まります。労作時や高温環境では、筋肉や皮膚に血流が増え、内臓血流は減少します。

このため、消化管上皮や血管内皮の機能障害が起こってきます。組織因子が漏出し、白血球からサイトカインが分泌され、さらに血管内皮障害が増悪し、汎血管内凝固症候群や多臓器不全が起こることもあります。

こうした病態から、熱中症は大きく分けて以下の4つがあります。
・熱失神
原因:直射日光の下で長時間行動しているような場合に起きる。発汗による脱水と末端血管の拡張によって、体全体の血液の循環量が減少した時に発生する。
症状: 突然の意識の消失で発症する。体温は正常であることが多く、発汗が見られ、脈拍は徐脈を呈する。

・熱疲労
原因:多量の発汗に水分・塩分補給が追いつかず、脱水症状になったときに発生する。
症状:症状は様々で、直腸温は39℃程度まで上昇するが、皮膚は冷たく、発汗が見られる。

・熱痙攣
原因:大量の発汗後に水分だけを補給して、塩分やミネラルが不足した場合に発生する。
症状:突然の不随意性有痛性痙攣と硬直で生じる。体温は正常であることが多く、発汗が見られる。

・熱射病
原因:視床下部の温熱中枢まで障害されたときに、体温調節機能が失われることにより生じる。
症状:高度の意識障害が生じ、体温が40℃以上まで上昇し、発汗は見られず、皮膚は乾燥している。

ちなみに、救急医学においては、熱けいれんや一時的な熱疲労など外来処置で対応できる病態を掬戞脱水や電解質の喪失などで入院が必要な病態を凝戞臓器障害がある病態を慧戞塀転鼻砲畔類することもあります。

治療としては、以下のようなものがあります。
まずは予防がじゅうようとなります。予防としては、日よけや帽子などで暑熱環境を改善することや、運動や作業の前に体調管理(二日酔い、食事抜き、下痢や発熱性疾患の罹患、抗コリン薬などの内服がないこと)が重要となります。

また、暑さに慣れる前は身体負荷を軽減し、日陰でこまめに休憩や水浴びをすることも重要です。スポーツドリンクは、活動前から飲用することも有効です(ただし、糖尿病患者などでは高血糖に注意)。

熱中症になってしまった人が出た場合は、風通しのよい涼所に移動させ、体表面を露出させ水で濡らして冷風を送り、スポーツドリンクを飲ませて水とナトリウムを補います。氷嚢などは、頸部や腋窩部、鼠径部などの大血管部位を冷やします。脳血流を確保するためには、足を挙上し手足を末梢から中心部に向けてマッサージします。
 
病院に搬送された場合は、まず気道を確保し、呼吸や循環、尿量、核心温(直腸温や膀胱温)をモニターします。深部体温を38.5℃まで冷却することを目標に、微温湯で皮膚を湿らせ、空気をファンで当てたり、アイスパックを鼠径、腋窩、頸部に当てます。冷却効果が得られない場合は、アルコールを皮膚に塗布したり、冷水を胃内に出し入れしたり冷却ブランケットなどにより冷却するといった処置が行われます。

さらに、ソリタ-T3号やラクテック注を急速静注して補液を行い、CPKが高いときはミオグロビンによる腎障害に注意します。水バランスをとるにあたっては、肺水腫の発生を早期発見するため聴診などを行うほか、頻回の動脈血ガス分析を行い、PaO2の低下をチェックします。電解質の値も補正する必要があります。

しっかりと予防するため、炎天下や湿度の高い場所での作業などをこまめな水分補給(できればスポーツドリンクなど)を行い、適度に休憩を挟んでいただければ、と思われます。

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