19日午後6時15分ごろ、岐阜県養老町の名神高速道路上り線の養老サービスエリアで、ガソリンスタンドに乗用車が突っ込み、運転していた男性が重体、同乗の女性2人や給油中の軽乗用車内にいた女性2人、給油作業をしていた男性従業員の計6人がけがをした。

横地さんの死因は心筋梗塞という。スタンドからの出火はなかった。県警高速道路交通警察隊は運転中に発作を起こし、車のコントロールを失い暴走した可能性があるとみている。
(ガススタンドに車突っ込み6人負傷 岐阜の名神高速SA)


心筋梗塞とは、心臓を栄養している冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。日本全体では、約25万人の急性心筋梗塞症の発症が推測されています(その中で、約8万人が死亡しているとされています)。

冠動脈が閉塞する原因としては、冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

日本では心筋梗塞は欧米と比較して大変少なかったですが、食習慣や生活様式の西欧化、社会生活におけるストレスの増加、人口の高齢化などに伴って近年増加しています。増加率は若年者に低く、高齢者で高いという特徴があります。

症状としては、狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)を生じます。「痛い」よりも「胸が苦しい」「重い感じがする」など、締め付けられる(絞扼感)を訴えることが多いといわれています。

通常、狭心症では胸痛の持続時間は数分程度でおさまりますが、安静にしていても30分以上胸痛の持続する場合は急性心筋梗塞を疑います(通常30分以上持続する前胸部の強度の胸痛や絞扼感で、恐怖や不安感を伴う)。

大多数は典型的な胸痛・絞扼感を主訴としますが、中には心窩部・背部痛呼吸困難、悪心・冷汗・失神などの非典型的な症状を訴えることもあります。典型的な急性心筋梗塞の胸痛と鑑別を要する疾患には、解離性大動脈瘤、急性心膜炎、肺塞栓が最も重要であり、次に胸膜炎、自然気胸、逆流性食道炎などがあげられます。

悪心・嘔吐などの消化器症状も伴うことがあるため、胆石症、胃・十二指腸潰瘍などとの鑑別が必要になることもあります。高齢者や脳梗塞、糖尿病を有する患者さんでは、無痛性に発症することもあります。その結果、放置してしまうケースもあります。

また、関連痛といって、疾患のある臓器以外の部位に出現する痛みが生じることがあります。具体的には、胃の痛みを中枢へと伝える神経と、心臓の痛みを伝える神経が近い位置にあるため、誤って「胃の痛み・不快感」として伝えられてしまったような状態です(共通の神経で痛覚が脳へ伝達されるために起こると考えられている)。

上記のケースのように、全身の血流障害が起こり、意識障害がみられることも稀ではありません。運転をしているときなどに生じた場合、今回のケースのように、大惨事に陥ることも考えられます。

診断としては、上記のような臨床症状がみられたり、心電図で連続する2誘導以上でST上昇、またはST低下(非ST上昇型)を示し、数時間後にはQ波の出現、あるいは非Q波梗塞ではR波の減高がみられます。

まず心筋傷害を反映したST上昇、数時間後には心筋壊死を反映したQ波、その後に心筋虚血を反映した冠性T波が出現します。冠性T波は左右対称の先端の尖った深いT波で、2日〜1週間以内に出現し、数時間〜長年にわたり持続します。

血液生化学的検査では、白血球の増加は特異性がないが発症早期からみられ、その程度は重症度や予後と関連するといわれています。CPK、CK-MBは、梗塞発症後6時間以内に上昇し、3〜4日で正常値に戻ります。AST、LDHは、CPKより上昇が遅く、ASTの上昇は4〜7日間、LDHの上昇は1〜2週間続きます。そのため、これらは発症時期の推定には有用な指標となります。

ミオグロビンは、CK-MBに比し早期より上昇し、ピークは1時間後で1〜2日後には正常となります。ミオシン軽鎖Iはピーク値は発症から2〜5日であり、7〜14日後に正常化します。

最近では、心筋特異性が高いトロポニンT・トロポニンIも用いられています。トロポニンTは、発症後3〜5時間で高値になり、その後は2峰性の変動を示します。最初のピークは12時間、2番目のピークは3〜5日であり、発症後7〜10日で正常化します。

心エコーも有用であり、収縮低下を確認することがほかの疾患との鑑別に有用であったり、他の合併症の有無も判断できます。冠動脈造影は、虚血性心疾患の確定診断には非常に重要となりますが、侵襲性が高いといった難点もあります。

冠動脈造影(CAG)・左室造影法では、急性心筋梗塞の責任冠動脈病変を確定でき、引き続き梗塞サイズの縮小を目的とする再灌流療法を施行することもできます。

治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては、まずは対症療法中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理します。通常は、アスピリン内服、酸素吸入、輸液、硝酸薬などを中心に行います。

発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小可能であるといわれています。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)を行う場合や、血栓溶解療法(PTCR)、狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈大動脈バイパス移植術 (CABG) が行われる施設もあります。

経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)は、1977年にGruentzigらにより初めて行われて以来、さまざまな技術上の、あるいは器具における進歩を遂げています。

当初は、バルーンによる拡張術のみであり、経皮的バルーン冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)とよばれていました。ですが、冠動脈ステント留置術(coronary artery stenting)、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)、ロータブレーター、といった新しい器具の発明とそれを用いた治療が普及するにつれ、経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)と総称されるようになりました。

経皮的冠動脈形成術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)とは、心臓を栄養する血管である冠動脈の閉塞した箇所にカテーテルを用いて、バルーン(風船)を拡張して狭くなった冠動脈を拡げる手術です。

PTCAは約3分の1の割合で、再狭窄が数か月後に起こるのが欠点の1つとして挙げられていましたが、最近ではステントと呼ばれる小さなメッシュ状の金属チューブを動脈壁に留置することが行われています。

ステントを留置することにより、再狭窄を少なくすることができると考えられます。ステントによって、再狭窄率は15%前後にまで低減することができたと言われています。急性閉塞や再狭窄を抑制する目的で、円筒状の金属ステントを留置する手技が開発され、現在では冠動脈ステント留置術がPCIの主流となっています。

特に、2004年夏から日本に導入された薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、新生内膜増殖を抑制する薬剤をステント表面にコーティングしたステントであり、再狭窄率がきわめて低いため頻用されています。

また、方向性冠動脈粥腫切除術(directional coronary atherectomy:DCA)は高速回転するカッターにて動脈硬化粥腫を切除する手技であり、入口部や分岐部病変において効果を発揮します。ロータブレーターは先端にダイヤモンドを埋め込んだドリルを高速回転させて血管を拡張するものであり、高度石灰化病変など、ほかのデバイスで拡張できない病変に有効です。

一方、冠状動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)は、冠状動脈の閉塞、狭窄に対して行われる外科的血行再建術です。体循環と冠状動脈の間にバイパスを作り(グラフトと呼ばれる血管を用いる)、心筋への動脈血流を増加させる方法です。

用いられるグラフトには、左右内胸動脈、右胃大網動脈、大伏在静脈、下腹壁動脈などが用いられます。長期開存性において、有茎の動脈グラフトが優れるといわれています。

適応となるのは、
ヾЬ動脈造影上75%以上の狭窄を有する。
3枝病変(重症)
typeC(狭窄長が20mm以上、高度の蛇行、石灰化、3ヶ月以上経過した完全閉塞病変、大きな分枝が保護できない病変など)を有する多枝病変
jeopartized collateralを有する病変
ズ諺芦執垰(LAD)中枢病変を有する多枝病変
PCIによる急性閉塞および再狭窄例、PCI困難例

こうした場合があります。

一般的には、左主幹動脈などの重症冠疾患の治療では冠動脈バイパス術がとられることが多いようですが、最近ではこういった症例にもカテーテル手術が応用されており、(侵襲性の面からも)ますます冠動脈バイパス術の対象は狭められているそうです。

夏休みの行楽シーズンで、遠出をされる方もいらっしゃるかとは思いますが、是非とも健康にはご留意いただければ、と思われます。

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