ビースティ・ボーイズのバンド・マスター的存在のアダム・ヤウクことMCAが、左側の悪性耳下腺腫瘍があることが今朝方判明した。

不幸中の幸いで、一ヵ所だけの早期発見であり大事にいたることはなく、声帯に影響を及ぼすこともないとのことで、一安心だ。

とはいえ、来週には緊急手術を行ない、その後も治療を要することとなり、しばらくはアーティスト活動を休止となる。オフィシャルサイトで公開されているメッセージ映像はこちらのとおり。

7月末に予定されていたフェスティバル・ヘッドライン出演をはじめ、10月上旬まで予定されていた全米フェス独占ツアーを全公演キャンセル、そして9月にリリースを予定しておりました新作『ホット・ソース・コミッティー・パート1』の発売自体も延期となる。
(ビースティ・ボーイズ、癌治療のため活動休止&リリース延期)

耳下腺腫瘍とは


口腔に唾液を分泌する外分泌腺の総称を、唾液腺といいます。そのうち、大型の耳下腺、顎下腺、舌下腺は大唾液腺といい、小型の口唇腺、頬腺、臼歯腺、口蓋腺、舌腺は小唾液腺に分類されます。

耳下腺は、唾液腺の中の一つであり、ここに発生する腫瘍を耳下腺腫瘍といいます。唾液腺腫瘍の約8割は、耳下腺に発生します。耳下腺には、原発性あるいは転移性、上皮性・非上皮性腫瘍が生じますが、圧倒的に上皮性原発腫瘍が多いです。上皮性腫瘍の約8割は良性であり、2割が悪性腫瘍となっています。

良性腫瘍には、病理組織学的に種々のものがありますが、発生頻度では多形腺腫と腺リンパ腫(ワルチン腫瘍)が多いです。

悪性腫瘍は臨床病理学的に、高悪性群と低悪性群に分けられます。低悪性群には粘表皮癌と腺房細胞癌があり、高悪性群には腺様嚢胞癌、腺癌、多形腺腫由来の癌、未分化癌などがあります。非上皮性腫瘍では悪性リンパ腫が比較的多く、シェーグレン症候群を原疾患として発生することがあります。

耳下腺腫瘍の診断

急速に増大する傾向を示すこともあり、症状としては圧痛や顔面神経麻痺、リンパ節腫脹などの所見をみることもあります。このように、急な増大や疼痛の出現があるとき、または顔面神経麻痺があれば悪性腫瘍を疑います。

一般に悪性腫瘍ではMRIのT2強調像で等信号、Gaシンチは強陽性、超音波では内部エコーは不均質を示します。悪性が疑われれば、穿針細胞診を行うことで、確定診断を行うことが出来ます。

鑑別疾患として、耳下腺腫瘍の一番頻度の高い疾患は、多形腺腫(混合腫瘍)です。これは発育緩慢、表面凹凸のある硬い腫瘍で、画像上の特徴はMRIのT2強調像で高信号を示します。

次に頻度の高いワルチン腫瘍は、弾性硬で多形腺腫より軟らかく、一側多発、両側性などであれば、まずこれを疑います。また、Tcシンチが陽性であることも特徴的な所見です。

耳下腺腫瘍の治療

耳下腺腫瘍の治療としては、以下のようなものがあります。
耳下腺腫瘍は、良性、悪性ともに治療は手術です。悪性の場合、同じ唾液腺癌でも病理組織によって大きく悪性度が異なります(高悪性度粘表皮癌,腺癌,多形腺腫内癌,唾液管癌などは高悪性度である)。顔面神経の処理や頸部郭清術の併施について検討する必要があります。

手術の合併症としては、顔面神経麻痺、唾液瘻、Frey症候群などがあります。顔面神経は、顔面神経には運動神経のほかに舌前2/3の味覚を伝える感覚神経、唾液や涙の分泌に関与する自律神経を含みます。損傷部位によって、これらの症状を合併することがあります。

唾液腺瘻は、外瘻によって(生理的あるいは解剖学的に正常では存在しない異常な管状の交通)皮膚より唾液が流出することです。

Frey症候群(耳介側頭症候群)は、耳下腺炎や耳下腺領域の外傷、あるいは手術後に晩発性に出現する合併症で、食物摂取に際し、耳前部の発汗、発赤、時に知覚過敏が生じます。

損傷された耳介側頭神経の唾液分泌神経(副交感神経)が再生する際、耳前部皮膚に迷入し、汗腺との誤連絡が生じることにより起こるとされる。

治療後はゆっくりと静養なさっていただき、再び元気な姿をみせていただければ、と思われます。

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