フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」の松本方哉キャスターの正式降板が、7月27日放送の同番組冒頭で発表された。今後は後任を置かず、滝川クリステルアナと解説委員の体制で放送を続ける。

松本キャスターは2007年11月22日から「個人の都合」との理由で番組を休業し、12月5日の放送で滝川アナが「皆さまから多くの問い合わせをいただいている松本キャスターは、家族の看護のため、今しばらくお休みする予定です」と休業理由を説明。2008年2月11日に復帰し、このとき初めて妻がくも膜下出血のため闘病中であることを明かしている。

その後、同年4月7日から再び休業に入り、5月12日には復帰。妻の看護を続けながら出演を続けていたが、2009年4月6日の放送から3度目の休業に入っていた。
(「ニュースJAPAN」の松本方哉キャスターが正式降板、妻の看護のため。)

くも膜下出血とは


くも膜下出血とは、くも膜下腔に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態をいいます。

くも膜とは髄膜の一部です。脳と脊髄を覆う3層の膜を髄膜といいますが、髄膜は脳・脊髄の表面に密着した軟膜、その外側にあるくも膜、最外側にある硬膜からなります。この髄膜のうち、くも膜と軟膜との間に存在するやや広い空間のことをくも膜下腔といいます。くも膜下出血は、この部分に出血がみられる疾患です。

原因のほとんどは脳動脈瘤の破裂で、まれに血管奇形やもやもや病、出血傾向など脳動脈瘤以外の原因もあります。人口10万人に対して、10〜20人程度が発症するといわれています。

発症年齢としては、脳動脈瘤の破綻によるものは40〜60歳の間に多く、脳動静脈奇形によるものは20〜40歳の間に多いといわれています。多くは脳動脈瘤の破裂(約70%)によるもので、約5〜10%が脳動静脈奇形によるものであるといわれています。

最近では、脳ドックを受けられる方も多くなり、未破裂脳動脈瘤の発見頻度が増加して、約2%の発見率(未破裂脳動脈瘤は成人の約5%に存在していると考えられている)といわれています。そうした場合、破裂してくも膜下出血を起こす前に手術を行うことができます。

くも膜下出血の診断

くも膜下出血は、特徴的な症状である「(バットで殴られたような)突然起こる激しい頭痛」で起こる、といったことでも有名です。今までに感じたことのないような頭痛がみられます。さらに悪心・嘔吐を伴い、頭痛が持続します。

約半数が意識障害を起こすといわれています(一過性のことが多いようですが)。約20%が初発で亡くなってしまいます。重症なものでは5分以内に急死することもあります。上記のように、いつもとは感じの異なる頭痛(突然の激しい頭痛)や、持続性の頭痛があった場合、やはり受診されることが望ましいと思われます。

出血が激しければ意識障害を伴い、昏睡や呼吸停止となり即死する場合もあります。意識障害は約半数近くにみられますが、多くは一過性で、数分ないし1時間以内で回復します。しかし錯乱や健忘が1〜2日持続することもあります。発症時は昏睡でも、救急車の中であるいは入院後に意識が清明となることもあり、刻々と症状は変化したりします。軽微な出血では軽い頭痛のために歩いて受診することもあり、感冒や緊張型頭痛、片頭痛などと診断されてしまうこともあります。

診断はくも膜下腔に出血を証明することで、発症当日や2〜3日以内ならCTでくも膜下腔や脳槽に出血の高吸収域を認めます。軽い出血の数日後には、CT上異常を認めない場合もありますが、くも膜下出血は否定できないので腰椎穿刺による髄液検査を行います。

頭部CTの後、脳血管造影によるSeldinger法で両側の内頸動脈、椎骨動脈撮影(4vessel study)を行い、破裂脳動脈瘤を発見します。約20%の症例では動脈瘤が2個以上発見されますが、動脈瘤の大きさ、形、CT所見を総合すれば、破裂動脈瘤(責任病巣)の診断はほぼ100%可能となります。

また、キサントクロミー(黄色調)髄液ならSAHであったことを示唆します。血性(赤色)の時は腰椎穿刺による血管損傷と区別するため、遠心分離してキサントクロミーの有無を調べます。疑わしければ、脳動脈瘤を直接証明できるMRAや3D-CTAなどの非侵襲的検査を行います。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療としては、以下のようなものがあります。
くも膜下出血の治療法としては、手術療法が第一選択となり、Hunt & Kosnikの分類におけるgrade1、2が最もよい適応で、grade3、4は状態の改善傾向があれば適応となり、grade5は根治手術の適応となりません。

手術は、再出血が起こる前の発症後数時間以内のきわめて早期に行うことが多いです。手術法としては、直接手術法(動脈瘤のクリッピング、コーティング)、間接手術法(血管内手術として動脈瘤のコイル塞栓術)などがあります。

他にも、3H療法とよばれる高血圧(Hypertension)・高循環血液量(Hypervolemic)・血液希釈(Hemodilusion)療法が行われます。これは、血管攣縮の予防、並びに脳浮腫の状態でも動脈潅流を維持するため、高張輸液の大量投与、時には高カロリー輸液やアルブミンの投与を行います。

急性期では頭痛が強いと血圧が上昇し再破裂の誘引にもなるので、十分な鎮痛と鎮静をはかります。場合によっては完全に麻酔することもあります。セルシンやペンタジン、ロヒプノールなどを用います。

また、くも膜下出血後の高血圧は再出血の誘引になるので、降圧薬の持続的投与が行われます。意識障害を伴い、鎮静する場合も多いので、注射剤が使用しやすいです。ペルジピンやヘルベッサーなどが用いられます。また、脳圧を下げる浸透圧利尿薬の使用は、再破裂の危険もあり通常は控えますが、頭蓋内圧亢進による切迫脳ヘルニアで危険な場合にはグリセオールなどを使用します。

この保存的な治療法は、最重症例で症状が改善するまでの間や手術適応とならない場合にも行われます。再出血の防止、脳循環障害の改善、脳浮腫の改善などを目的に行います。

救命できても後遺症が残る例が多く、完全に治癒する確率が低いと言われているだけに、やはり予防が重要であると考えられます。特に高血圧や家族歴などがある場合は、お気を付けていただければ、と思われます。

現在、リハビリを継続されているのではないか、と考えられます。ぜひとも奥様と二人三脚で、闘病や生活を行っていただければ、と思われます。

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