夏バテで現われる、だるさ、食欲不振、胃腸の不調といった症状は多くの病気の前駆症状でもあります。本当の病気を夏バテと勘違いしてしまう可能性もあるのです。

■意外に心身に負荷がかかりやすい夏
夏と言えば、眩しい太陽の下、浜辺で過ごすひととき、夜風で浴衣をなびかせながら花火見物など、開放的な気持ちに浸れる季節ですが、心身にかかる負荷は侮りがたいものがあります。連日、30℃を超すような高温多湿の気候はもちろんの事、夏ならではの心身への負荷があります。
・空調の効いた室内と外の気温の大きな差
・体内の水分が発汗で失われやすい
・暑苦しくて夜、寝付けない
・冷たいものを飲み過ぎ、食べ過ぎ
・暑さの為、食欲が落ちやすく、エネルギー不足になりやすい
・炎天下での活動による体力の消耗
・海や山へのアウトドアなど、外出しやすい季節
・帰省などの対人ストレス
・夏休み期間中、職場の人数が少なくない為、一人当たりの仕事量が増えた
このように夏はなかなか心身に負荷がかかる可能性がある時期で、夏の終わりに心身がぐったりなってしまうのはもっともなことなのです。実際に夏バテになってしまった場合は、夏が体の方をぐったりさせているのか、それとも、心の方をよりぐったりさせているのか、ぐったり具合を細かく分析すると判別する事ができます。

■夏バテとうつ病の症状には重なる部分が多い
夏バテに限らず、疲労の原因は大きく、肉体的疲労と精神的疲労の2つに分ける事ができます。肉体的な疲労は肉体にかかる負荷に比例し、体を休ませていれば疲れが次第に取れるものですが、精神的な疲労はじっとしていても取れ難いものです。夏バテに心の要素が強くないかどうか、以下の事柄があるかどうかでチェックしてみましょう。
・朝起きた時、一番、ぐったりしているが、夕方になるとだるさが軽くなる
・例年の夏と同じように過ごしているのに、だるさが強い
・仕事が終わると、うそのように体が軽くなるなど、環境に起因している部分が多い
・十分、休息したはずなのにぐったり感が取れない
・軽く運動した後、心身が爽快になる

こうした時は夏バテに心の要素がかなり強く現われています。また、夏バテ症状として、睡眠不足、食欲不振、便秘、下痢など自律神経系の不調による症状が現われやすいですが、これらは精神的な負荷がある時にも出現しやすいです。こうした症状とうつ病の初期症状は症状の強さ、持続期間を除けば大差がなく、夏バテと思い込んでしまうと、仮にうつ病だった場合、それを見逃してしまうことになります。

もしも、「ぐったりしていて、とても物事をこなせるような状態ではない」、「やらなければならないことが山済みだが、イライラして全然集中できない」といった場合や、通常の夏バテ対策が効かず、2週間以上も心身の不調が生じている場合は心の病気に近い状態になっているかもしれません。
(眠気・食欲不振…夏バテ症状に潜む心の病気)

うつ病とは


うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。

うつ病の頻度は一般人口の 2〜3%といわれています。中でも、うつ病相に加えて躁病相をもつ双極性障害は 0.5〜1%であり、平均発症年齢は20歳代後半〜30歳代と言われています。女性2:男性1と女性に多く、更年期に発症する頻度が高いといわれています。

うつ病の病因はまだ明らかではありませんが、これまでの研究からは神経伝達系、特にセロトニン神経系とノルアドレナリン神経系の関与が考えられてきました。これら脳内におけるアミン代謝の異常が想定されています。

治療を要するうつ状態(うつ病)の診断には、国際疾病分類の診断基準(ICD-10)や米国精神医学会診断基準(DSM-IV)があります。

DSM-IVの診断基準は、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。

DSM-犬梁腓Δ追促┘團宗璽匹旅子としては
1)抑うつ気分
2)興味または喜びの喪失
3)体重減少
4)不眠
5)焦燥または制止
6)易疲労性または気力の減退
7)無価値感または罪責感
8)思考力や集中力の減退または決断困難
9)希死念慮、自殺企図
の9つの症状のうち5つが2週間の間に同時期に存在し、かつそのうち少なくとも1つは1)抑うつ気分 または 2)興味または喜びの喪失であることとされています。

具体的なうつ病の診断手順は、i)うつ状態であることを確かめる、ii)身体疾患に伴ううつ状態を除外する、iii)併用する薬物起因性でないことを確かめる、といったことがあります。こうした鑑別を行い、その次にうつ病(内因性)の診断を下す順序が大切であると言われています。

また、最近の傾向としては、身体症状を前景とする軽症うつ病(仮面うつ病)が増加しているそうです。うつ病の8割が、一般診療科を受診するという報告もあります。身体に多彩な症状がみられ、症状の部位によって、多くの診療機関を受診(いわゆるドクター・ショッピング)しています。

よくある症状は、「睡眠障害」「全身倦怠・疲労」「全身のいろいろな部位の疼痛」の3つです。うつ病と診断された患者が初診時にどのような身体症状を訴えていたかを調べた結果(新臨床内科学第8版)、消化器症状が63%と最も多く、次に循環器症状20%、呼吸器症状14%、泌尿・生殖器症状6%、運動感覚器症状4%といわれています。

中でも、うつ病と消化器症状はきわめて関連が深いそうです。うつ病に伴う消化器症状として食欲不振78%、体重減少56%、便通異常44%、ガス症状33%、悪心・嘔吐29%、咽喉頭部・食道の異常感26%、腹痛23%、胃部不快感20%、口内異常感14%、胸やけ・げっぷ10%などが認められています。

こうした症状が、実はうつ病によるものがあり、内科などから精神科へ紹介受診となることもあります。

うつ病の治療

うつ病の治療としては、以下のようなものがあります。
うつ病とは、いわばエネルギーが枯渇し、疲弊した状態であるといわれています。そのため消耗を避け、エネルギーの蓄積・回復を図るのが治療の基本となります。

まずは、希死念慮の程度を確認し、必要なら行動制限・行動監視を行います。危ないものを身辺に置かない、家族に付き添ってもらう、といったことが必要です。身体管理としては、脱水・低栄養状態などに必要な補液・栄養補給を行います。

休養は重要であり、安静や睡眠の確保を行います。焦燥感が強い場合は、鎮静作用の強い抗精神病薬であるレボメプロマジンなどを適宜併用して、安静・睡眠確保を図ります。

薬物療法としては、抗うつ薬により抑うつの改善を図ります。また、精神療法として病気としてのうつ状態の説明、予後の保証、治療の必要性、経過の見通し、治療内容・薬物の説明を繰り返しわかりやすく伝えることが重要です。

抗うつ薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるマレイン酸フルボキサミン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である塩酸ミルナシプラン、モノアミン再取り込み阻害薬である塩酸アミトリプチリンなどがあります。

抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

また、SSRIであるフルボキサミン、パロキセチンは、セロトニン受容体を刺激するため、投与初期に不安、焦燥や不眠を引き起こしたり、性機能障害などを生じることがあります。

肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP450の阻害による薬物相互作用をきたしやすく、セロトニン症候群や薬物中止による離脱症状の可能性もあります。さらに、パロキセチンが18歳未満の大うつ病性障害患者において希死念慮・企図のリスクを増加させるとの報告があり、使用を控えるべきであるといわれています。

現在、うつ病治療の第1選択薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)かセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であると考えられます。ただ、抗うつ薬の効果が発現するのに時間がかかるので、不安・焦燥の強い場合には初期(2〜4週)に限りベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用します。

代表的な塩酸パロキセチン水和物(パキシル)は、選択的なセロトニン(5-HT)取り込み阻害作用を示し、神経間隙内の5-HT濃度を上昇させ、反復経口投与によって5-HT2C受容体のdown-regulationを誘発することにより、抗うつ作用及び抗不安作用を示すと考えられています。

抗うつ薬による副作用が、顕著な場合には原因薬剤の漸減・中止を考慮します。その際、他の抗うつ薬への切り替えが原則となります。副作用に対する、安易な併用療法(副作用のために薬剤を使うといったこと)は避けるべきであると考えられます。

さらに、抗うつ薬の減量・中止時には、抑うつ症状の増悪や、再燃の危険性・離脱症状出現の可能性があります。ですので、事前に減量時の危険性を十分説明し、患者や家族に対して理解を求めることが必要です。

薬を止める時には、慎重に漸減中止(段々と薬の量を減らしていく)を行います。くれぐれも、一気に止めてしまう、ということではなく、医師と相談して中止することが勧められます。

パキシル、デプロメール、トレドミンなどでは、初期に悪心・嘔吐など消化器系の副作用が出現することがあります。軽症であれば、そのまま継続すると自然に消失します。また、効果を確認するには最大投与量後、最低4週間は必要であるといった注意点があります。

このような治療を行います。上記のような症状に注意し、なかなか治らず、検査上も問題ない身体症状が続く場合、一度は精神科受診などをされてはいかがでしょうか。

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