最近ビールや発泡酒には「プリン体○%カット」とうたったものがあります。名前は知っているけどいまいちどんなものかよく分かっていないこの「プリン体」って一体なんなんでしょうか? 摂取のしすぎで大変なことになるんでしょうか? 健康志向の世の中に乗り遅れないようにしっかり知識を身につけておきましょう。名前を聞く限り何だかおいしそうですね!

「プリン体とは細胞中の核酸に含まれる成分のひとつで、核酸は遺伝にかかわる大事な物質です。ほとんどすべての食品に含まれているんですよ」

と教えてくれたのはキリンビールの広報担当の方。ビールや発泡酒だけでなくほとんどすべての食品に含有されているということは、もちろんプリンにも含まれているというわけですね!

「そうです。ただ、共通して『プリン環』という化学構造を持っていることからプリン体と呼ばれているわけで、デザートのプリンとは無関係ですよ」

なるほど。無関係だったのですね……。ちなみにそもそもの語源は核酸代謝物のラテン語「プリンヌクレオチド」からきているようです。でもちょっと待ってくださいよ! プリン体が遺伝にかかわる物質の成分ならたくさん摂取してもいいのではないですか?

「ところがそうでもないんです。基本的にプリン体は尿酸に代謝されて一定量体内に保たれているんですが、そのバランスが崩れて過剰な状態になってしまうと、痛風を引き起こす原因となります。体内に結晶化して沈着した尿酸を白血球が攻撃するのが痛風という病気で、激しい痛みを伴うのです」

かわいい名前なのに、なかなかあなどれませんね……。

「ただ、尿酸値が正常な人にとっては食品中のプリン体は特に気にする必要はないことですし、アルコール飲料の中でプリン体含有量が多いと言われているビール類についても、適量飲酒の範囲内であれば問題ないとされています。ただ、体質上取りすぎに気をつけている方もいらっしゃるのです」

だからそのプリン体をカットしている商品がよく出るのですね。
(「プリン体」の取りすぎは何が良くないの!? 教えてKIRINさん)

プリン体とは


プリン体とは、構造上、プリン誘導体とみられる化合物の総称を指します。核酸プリンヌクレオチド代謝の最終産物が、尿酸です。

プリン体は、食品として吸収されるものと、体内で生合成されるものがあります。実は、体内の尿酸の大部分は後者である、体内で生合成されるものに由来します。

新たにプリン体を合成する代謝回路をデノボ(de novo)回路、グアニン、アデニン、ヒポキサンチンなどの塩基をヌクレオチドにする回路をサルベージ回路といいます。

デノボ回路は五炭糖リン酸回路の中間物質、リボース-5-リン酸よりホスホリボシルピロリン酸(PRPP)が合成されることにより始まり、最終的にイノシン酸(IMP)が合成されます。尿酸はキサンチンより合成されます。プリン体合成の調節は複雑にからみ合っていますが、PRPP(リボース-5-リン酸よりホスホリボシルピロリン酸)が上昇すると、デノボ回路が亢進し、尿酸産生が増えます。

正常人の体内の尿酸(尿酸プール)は、約1,200mg、1日の産生量と排泄量は約700mgと同量であり、平衡を保ちます。このうち約500mgは尿中から、200mgが汗腺や消化管から排泄されます。

痛風とは


痛風は、持続する高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl 以上)に起因した尿酸塩結晶の体組織への沈着症と定義されます。

体内に尿酸が蓄積すると、いろいろの場所に結晶として析出します。結晶は、皮下結節を生じたり、腎障害の原因となるほかに、上記のように関節炎の誘因となります。このように、体内の尿酸蓄積を基礎に生じた尿酸結晶が、急性の関節炎を引き起こす状態を痛風と呼び、その関節炎発作を痛風発作といいます。

特有な急性関節炎(痛風関節炎と呼ばれ、下肢の関節、特に親指の付け根である第一中足趾節関節に好発する単関節炎)の反復が特徴的であり、このような痛風関節炎、痛風結節(進行例では関節部をはじめとして、耳介などの軟骨、骨端部、皮下組織などに痛風結節が形成され、白色の腫脹をきたす)、尿路結石、腎機能障害などの尿酸沈着が関係する症状のほかに、痛風では高血圧や高脂血症、耐糖能異常などの合併が高率であるといわれています。

病態としては、尿酸の過剰産生と腎からの排泄低下の2タイプに大別されます。過剰産生型としては、遺伝性(プリン代謝酵素異常症、糖原病)、核酸代謝回転の亢進(血液疾患、乾癬)、ATP分解の亢進(飲酒、低酸素血症)、プリン体過剰摂取などがあります。排泄低下型には、遺伝性のほか、低酸素血症、ケトアシドーシス、尿崩症、薬物(フロセミド,サイアザイド,シクロスポリンA)などがあります。

ちなみに、高プリン食と飲酒を禁じて行った時間クリアランス法で、尿酸クリアランス<6.2mL/分は排泄低下型、時間排泄量>0.51mg/kg/時は産生過剰型と診断され、治療法も変わってきます。

痛風発作が起こる理由


痛風発作が起こる理由としては、以下のようなものがあります。
症状としては、初発は約90%の患者が単関節炎の形をとり、片側の第1趾中足趾骨関節(足の親指の付け根)の突然の激しい疼痛と腫脹で発症します(痛風発作)。症状は24時間以内にピークとなり、通常 1〜2週間で完全に消退します。

痛風関節炎は、過剰な尿酸が関節内に尿酸ナトリウム結晶として沈着することで引き起こされます。血清中で尿酸は7mg/dl程度で飽和状態に達し、それ以上では過飽和の状態で結晶化の可能性があるといわれています。

関節腔内の尿酸ナトリウム結晶は、補体や凝固因子を活性化し、滑膜細胞やマクロファージから炎症性サイトカイン(起炎物質による刺激で産生され、炎症反応を増幅、持続させ炎症反応の経過に影響を与える物質)が産生されます。

さらに、好中球が活性酸素や蛋白分解酵素などの炎症性メディエーター(発熱、発赤、腫脹、疼痛といった炎症症状の発現に関わる液性因子やサイトカイン)を産生し、尿酸結晶を貪食します。こうした炎症反応が起こり、関節炎、そしてその痛みが生じてくると考えられます。

男性の発症が女性の約20倍で、30歳代に多いといわれていました。ですが、上記のようにもしかしたら女性の罹患率も増えつつあるのではないか、と考えられます。男性は思春期以降上昇し、約20歳でピークとなり、女性では閉経以降に上昇します。

女性ホルモンに腎臓からの尿酸排泄を促進する作用があるため、女性では少ないといわれており、一般に、成人では男性が女性より尿酸値が1〜2mg/dl 高くなっています。こうした点から、女性は痛風になりにくいと考えられますが、現在の食生活の変化を考えると、そうも言ってはいられないと思われます。

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