読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
統合失調症で、抗精神病薬などを服用していますが、舌がぴちゃぴちゃ勝手に動いて食事が容易にできなかったりろれつが回らなかったりし、悩んでいます。(28歳男性)

この相談に対し、聖マリアンナ医大病院神経内科講師である堀内正浩先生は、以下のようにお答えになっています。
舌が勝手に動いてしまうのは、「舌ジスキネジア」と言われ、統合失調症の患者によく見られる症状です。ストレスによって症状が出ることもありますが、服用している抗精神病薬の副作用である可能性が高いと思われます。

統合失調症の患者は、脳内で、神経伝達物質の一つであるドーパミンの働きが過剰になっています。抗精神病薬はそれを抑え、妄想や幻覚を鎮める作用がありますが、強く抑え過ぎてしまうために副作用が表れると考えられています。舌ジスキネジアのほか、体のこわばりや手の震え、じっと座っていられないなどの症状があります。体の広範囲に表れ、治療が困難な場合が多いです。


統合失調症とは


統合失調症とは、思考・情動・意欲など人格全体に障害が及ぶ精神疾患を指します。妄想、幻覚、思考障害、緊張病症状、奇妙な行動などの陽性症状と、感情鈍麻、無感情、無欲、自閉、快感喪失などの陰性症状を示します。

いくつかの亜型があり、DSM-犬ICD-10では診断基準が設けられ、妄想型、解体型、緊張型、鑑別不能型、残遺型の病型に分けられています。

統合失調症は思春期に発症することが多く、年代・地域・性差を問わず有病率が約0.7〜0.8%とされています。脳の器質的因子が病因に関連していると想定され、さまざまな生物学的研究がなされています。その中でドパミン過剰仮説などが提唱されて研究されています。

また、病態は必ずしも明らかでないですが、神経ネットワークの障害と推定されている生物学的脆弱性に、環境からのストレス、患者自身の対処能力によって規定される「ストレス−脆弱性」仮説が提唱されています。

統合失調症の診断


症状としては、特に聴覚領域にみられる幻覚(幻聴)およびこれに対する本人の許容的態度がみられます。また、周囲で起こることに対する、自分に関係づけての奇妙な(多くは被害的な)意味づけ(妄想知覚)などもみられます。

ほかにも、意志、感情、行動の領域における他者からの直接的な被影響体験、その他自分の精神の働きに、実体のない他者が介入すると体験される自我障害の徴候などがみられます。精神運動性興奮、昏迷、わざとらしい表情、姿勢など(緊張病症状)もみられます。

統合失調症の診断は、診断基準をベースに行われ、診断基準としては、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類であるICD-10と、米国精神医学会のDSM-IVの2つが主に使われています。

DSM-IVの診断基準は、
A) 特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのは1カ月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在:
 1) 妄想
 2) 幻覚
 3) まとまりのない会話(例:頻繁な脱線または滅裂)
 4) ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
 5) 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如
注:妄想が奇異なものであったり、幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準Aの症状を1つ満たすだけでよい。

B) 社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準まで達しない)。

C) 期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6カ月間存在する。この6カ月の期間には、基準Aを満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準Aにあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。

D) 統合失調感情障害と気分障害の除外:統合失調感情障害と「気分障害、精神病性の特徴を伴うもの」が以下の理由で除外されていること。
 1) 活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症していない。
 2) 活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い。

E) 物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

F) 広汎性発達障害との関係:自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は顕著な幻覚や妄想が少なくとも1カ月(または、治療が成功した場合はより短い)存在する場合にのみ与えられる。
このようになっております。

統合失調症の治療


統合失調症の治療としては、以下のようなものがあります。
通院治療が原則となると考えられますが、自傷他害などのおそれが強く疑われる場合や病気についての認識(病識)が不十分なために、治療アドヒアランスが望めず、病状の悪化が予想されるなどといった場合、入院治療を必要とすることもあります。

統合失調症の薬物療法としては、定型抗精神病薬(上記の第1世代)および非定型抗精神病薬(上記の第2世代)が用いられています。

主に、ドーパミンD2受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬(日本では20数種類が使用できます)の投与が、陽性症状(幻聴が聞こえる、妄想にとらわれるといった健常な人には存在しない症状)を中心とした症状の軽減に有効であるとされています。

近年、従来の抗精神病薬よりも、副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いなどの特徴をもった非定型抗精神病薬(第2世代)と呼ばれる新しいタイプの薬剤(リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン)が開発され、治療の主流になりつつあります。

具体的な治療法としては、抗精神病薬であるリスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、塩酸ペロスピロン水和物(ルーラン)などが用いられます。効果が不十分な場合は、副作用に注意しながら至適用量まで増量していきます。

ただ、錐体外路性副作用(パーキンソン症候群、アカシジアなど)が出現した場合は、抗パーキンソン薬を追加投与するか、錐体外路性副作用の出現率が低いフマル酸クエチアピン(セロクエル)などに置換します。

不眠、不安・焦燥が強い場合は、ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬や抗不安薬などを併用します。

上記の副作用については、堀内正浩先生は
対処法として、ドーパミンを適度に調節するよう働くために副作用が少ないとされる「非定型抗精神病薬」に変更することをお勧めします。また、副作用の震えやけいれんを止める「抗コリン薬」や「抗てんかん薬」などを服用する方法もあります。

ただし、抗精神病薬を変更すると、統合失調症の症状が悪化することもあります。薬の効果と副作用とのバランスを考え、調整していくことが大切です。

舌ジスキネジアを始め、体が勝手に動いてしまうという症状を完全に止めることはできません。「病気と付き合っていく」という心構えも必要です。

主治医とよく相談し、薬の選択など、適切な治療を検討されることをお勧めします。
このようにアドバイスなさっておりました。

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