読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
不整脈があり、「非持続性心室頻拍」と診断されました。不整脈以外に心臓の病気はなく、カテーテル・アブレーション(心筋焼灼術)治療を受けましたが、治まりません。(29歳女性)

この相談に対して、土浦協同病院副院長である家坂義人先生は以下のようにお答えになっております。
心臓は、自ら生み出す電気刺激が、左右の心房と心室に順次、伝えられ、規則正しく収縮して全身に血液を送っています。安静時には毎分60〜80回程度、収縮し脈拍を維持しています。

しかし、本来、刺激を出さない心室の筋肉の一部が何らかの原因で異常興奮すると、正常な周期より早く心室が収縮する「心室性期外収縮」や、それが3回以上続く「心室頻拍」が起きます。非持続性心室頻拍は、頻拍が30秒以内に治まる場合です。

もともと心臓病がない若い女性に多くみられるのは「右心室流出路起源特発性心室頻拍」で、正常な拍動を挟んで期外収縮が何回も起こるなどします。通常、命に別条はありません。

ただ、
1)めまいや動悸、胸の不快感などの症状がある
2)体を動かすと連続して心室頻拍が起きる
3)1日に期外収縮が数万回以上、起きる
4)妊娠の可能性や出産の予定がある
――などの場合、治療する必要があり、カテーテル・アブレーションが第1選択肢です。


心室頻拍とは


不整脈とは、正常洞調律以外の心臓電気現象(刺激生成および興奮伝導)の異常の総称を指します。調律(リズム)の異常と、心房および心室の拍数(レート)の異常があります。

たとえば、調律の異常にはペースメーカー部位の異常(移動)や期外収縮、伝導ブロックがあり、拍数の異常には徐脈、頻脈、頻拍、粗動、細動があります。分類としてはレートが50拍/分以下の徐脈性不整脈と、100拍/分以上の頻脈性不整脈に分けられ、後者はさらに上室性不整脈と心室性不整脈に分けられます。

心室頻拍は、頻脈性不整脈に分類されます。
心電図上、以下のように分類されます。
・上室性頻脈:QRS波形は正常波形を示します(narrow QRSと呼ぶ)。ただし脚ブロックや変行伝導によりQRSの幅は広くなることがあります(wide QRSと呼ぶ)。
1)心房細動・粗動:Pは認めず、fまたはF波を認めます。後者は供↓掘aVF誘導の波形から、通常型と稀有型に分類されます。
2)発作性上室頻拍:洞結節内リエントリー、心房内リエントリー、房室結節性リエントリーおよび房室回帰頻拍からなります。洞結節内リエントリーではP波の波形は洞調律時と同一になります。房室結節性リエントリー、房室回帰頻拍ではPはQRSに重なるか直前か直後に認められます。
3)WPW頻拍:洞調律時にデルタ波を示します。Kent束を心室から心房へ伝導する回帰頻拍では、潜在性WPW症候群における房室回帰頻拍と同じくnarrow QRSからなる頻拍を示します。P波はQRSの後に出現するが不明なことが多いです。一方、wide QRSからなる頻拍は、Kent束を介して心房から心室への伝導が生じます。

・心室性頻脈
1)心室頻拍:wide QRSからなる頻拍でQRS波形の一定したものを単形性心室頻拍と呼びます。1拍ごとに波形が変化するものを多形性心室頻拍と呼びます。
2)心室細動:QRS、ST-Tが同定できない奇妙な振れのみとなります。心拍出量は消失し、脈は触れません(心停止)。

主立ったものとしては、このように分類されます。頻脈による意識低下や不穏状態を認めれば、直流通電の適応となります。全身状態を確認するとともに、脈拍、血圧および心電図記録を直ちに行う必要があります。

心室頻拍は、心室細動や突然死をもたらす可能性のある危険な不整脈とされています。しかしながら、基礎心疾患やQRS波の形状から、危険なものとそうでないものに分類されます。

一般に、持続が短いもの(3拍以上30秒未満)を非持続性VT、持続の長いもの(30秒以上)を持続性VT、器質性心疾患に由来するものを器質性VT、そうでないものを特発性VT、QRS波形の大きさと向きが一拍ごとに変わるものを多形性VTとよびます。

このうち、器質性の持続性VTと多形性VTは適切な治療を行わないと、突然死する危険性が高いのに対し、非持続性VT、特発性VTは一部を除いてVFに移行する可能性は低いです。多形性VTのうち、心電図波形が基線を軸として捻れるように形と極性を変えていき、自然に停止するものはtorsade de pointesとよばれ、先天性QT延長症候群や抗不整脈薬などの薬剤、低K血症などで認められます。

心室頻拍の治療


心室頻拍の治療としては、以下のようなものがあります。
太ももの付け根からカテーテル(細い管)を心臓の中に入れ、異常興奮の発生原因となっている部分に高周波電流を流して焼きます。

ただ、その部分を正確に見つけ、安全かつ完全に焼けるかなど、治療は簡単ではありません。成功率は医療機関により大きく異なり、最高で90〜95%です。

しかし、体への負担が軽く、繰り返し行える治療です。豊富な知識と経験を持つ専門医を受診し、再治療をお勧めします。

心室頻拍が持続性か非持続性か、器質性か特発性かで治療法は大きく異なってきます。持続性心室頻拍では停止と予防が、非持続性VTでは予防が中心となります。

持続性心室頻拍の停止には、静注用キシロカイン(リドカイン)を1回1mg/kg 数分内に静注し、無効の場合はメキシチール、リスモダンP、シベノール、アミサリンなどの静注(いずれも5分間で)を試みます。これらの薬剤が無効であったり、血行動態が悪化しているようであれば、電気的除細動(200〜350ジュール)を静脈麻酔下で行います。

非持続性心室頻拍の予防としては、流出路起源(左脚ブロック+下方軸型)の特発性の非持続性心室頻拍では主としてメインテート、メキシチールを、低心機能の非持続性心室頻拍ではアーチスト、メキシチール、アンカロンを、肥大型心筋症に伴う非持続性VTにはメインテート、シベノールを、器質性の持続性VTにはメインテート、ソタコール、アンカロンを用いる場合が多いです。

これらが無効の場合はカテーテルアブレーション(特発性VT)またはICD植込み(器質性VT)を考慮します。特発性心室頻拍は、カテーテルアブレーションによる根治が可能であると考えられます。

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