“1週間で最も多く生番組に出演する司会者”としてギネスに認定された、みのもんたさんが手術を受けたことで一躍有名になったのが「腰部脊柱管狭窄症」。腰痛や坐骨神経痛の原因のひとつである。

腰部脊柱管狭窄症は、背骨にある神経の通り道である「脊柱管」が、腰椎の加齢変性、周囲の靱帯の変性、腰椎分離・すべり症などが原因で圧迫され、脊柱管が狭くなって神経に影響を及ぼす疾患である。

症状には「馬尾型」「神経根型」「混合型」の3つのタイプがある。

馬尾型は、腰部脊柱管の中央を通る神経の馬尾神経を圧迫し、坐骨神経痛ほどの強い痛みはないものの、症状は広範囲にでる。両脚全体がしびれ、脱力感のため脚に力が入りにくい。さらに、頻尿や残尿感、便秘も起こることがある。

脊柱管の左右を走る神経根が圧迫されると強い坐骨神経痛のような痛みが生じる。これが神経根型。神経根は左右に通っているので、圧迫された側の脚に痛みが起こる。

そして、混合型は馬尾型と神経根型が同時に起きているタイプ。

この3つのタイプに共通している症状が「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。しばらく歩くと脚が痛くなって歩けなくなる。が、少し休むとまた歩けるようになる。歩ける距離は重症になるに従って短くなる。

治療は症状、QOL(生活の質)を考えながら行う。保存的治療と手術的治療があり、保存的治療としては理学療法、装具療法、薬物療法、神経ブロックなど。

理学療法には、腰をホットパックや極超短波、レーザーなどで温めて血行を改善する温熱療法をはじめとして、けん引療法やマッサージ療法などがある。

コルセットを使うのが装具療法。コルセットの左右に金属の支柱があり、体がそるのを防ぐので脊柱管が狭くならない。

薬物療法は神経が酸欠状態になるのを防ぐために行うもので、「末梢循環改善薬」などを使うと約30%の患者に、何らかの効果がでる。このほか骨粗鬆症の治療薬も使われる。

神経ブロックには神経根ブロックと硬膜外ブロックがある。ただ、神経ブロックは馬尾神経が圧迫されている馬尾型にはあまり効果がない。

そして、保存的治療に限界を感じたり、QOLが極めて悪いとなると、手術的治療を選択することになる。

手術では「開窓術」「椎弓(ついきゅう)切除術」「脊椎固定術」が行われている。

開窓術は、背中側からアタックする手術。神経を圧迫している骨を部分的に削り取る術式である。

圧迫部分が広い馬尾型の場合は、椎弓を広く切除する椎弓切除術。脊椎固定術では、チタンのネジやロッドを使って体を支えるインスツルメンテーションを用いての固定手術が中核となっている。いずれの手術も、基本は減圧術である。
(腰部脊柱管狭窄症)

腰部脊柱管狭窄症とは


腰部脊柱管狭窄症とは、神経組織を入れる腰部脊柱管あるいは椎間孔部がさまざまな原因によって狭窄を来し、馬尾(脊髄の下端から伸びている神経の束は、馬の尻尾に似ているので、こう呼ばれます)や脊髄神経根が圧迫されることによって発症する症候群です。

簡単に言えば、背骨の中で脊髄や神経を通す脊柱管が、加齢とともに変形し、狭くなる病気です。多くは50歳以上の中高年で発症し、脊髄につながる神経の束である馬尾や、そこから左右に延びる神経根、並走する血管が圧迫されます。

上記のように、大きく分けて、馬尾型、神経根型、混合型などに分類されます。
馬尾型:は脊柱管正中部の狭窄により馬尾が圧迫されて起こり、馬尾性間欠跛行、両下肢・殿部・会陰部のしびれや灼熱感、下肢脱力感、膀胱直腸障害をきたします。
神経根型:では椎間孔内外において神経根が圧迫され、神経根性間欠跛行、下肢への放散痛(多くは片側)をきたします。
混合型:は馬尾型、神経根型の症状が混在したものです。
このようにそれぞれの症状が現れます。

腰部脊柱管狭窄症の診断


腰部脊柱管狭窄症の症状としては、間欠性跛行が最も頻度が高いといわれています。これは、少し歩くと脚が痛くて歩けなくなり、少し休むと歩けるようになる、という現象です。一方で、、自転車なら長時間漕いでいられる、というのがこの疾患の特徴でもあります。

両下肢に症状が観察され、膀胱直腸症状(失禁など)が観察される場合は、馬尾の障害が考えられます。

他覚所見ではラセーグ(Lasegue)徴候の陰性(仰臥位の患者の一側下肢を伸展したまま持ち上げ股関節を屈曲させる時、坐骨神経痛があれば殿部や大腿後面に疼痛を訴える)、アキレス腱反射の低下・消失が多いです。足関節の筋力低下、下腿や殿筋の筋萎縮および足背のL5、S1領域に知覚障害を認めます。特に、会陰部の知覚障害は排尿障害の診断に有用となります。

診断としては、画像検査では単純X線写真、機能撮影以外にMRI、CTが診断に有用であるといわれています。確定診断としては、神経学的所見(どこの筋力が低下しているとか、知覚障害が起こっているとか)と、画像所見とが一致するか否かが重要であるといわれています。

腰部脊柱管狭窄症の治療


腰部脊柱管狭窄症の治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、薬物療法では消炎鎮痛剤、ビタミンB12などの薬剤と硬膜外神経ブロック、神経根ブロック療法を行います。手術的治療としては、一般に椎弓切除術が実施されます。不安定性を有する場合には脊椎固定を併用します。

腰・下肢の疼痛、しびれ感や間欠跛行などの症状がある場合、これは保存的治療の効果がないため、手術が行われます。他にも、神経学的異常所見が進行性に増悪する場合や、日常生活に支障をきたすような痛みも、手術の適応となります。

手術としては、上記のように手術では開窓術、椎弓切除術、脊椎固定術が行われています。このような狭窄部での神経圧迫を除圧することが手術治療として行われます。

【関連記事】
脊柱管狭窄症と診断された32歳女性

腰部脊柱管狭窄症で再手術を受けていた−桂歌丸さん