アメリカのアーカンソー州に住むジュリア・グローヴンバーグ(Julia Grovenburg)さんが、1月に2度も妊娠したという驚きのニュースが飛び込んできた。

これは“重複妊娠”と呼ばれるもので、異なる時間に授かった2人の胎児が子宮のなかで同時に育つという現象。ウサギなどの動物にはよく起こるが、人間では極めて珍しいケースだ。

最初に“重複妊娠”を発見したのは、彼女が定期健診で訪れた病院の担当医だった。超音波検査をした際に赤ちゃんが2人並んでいるのを見て初めは双子だと思ったそうだが、発育の速度が異なるため違うタイミングで受精したものだと判断した。2番目の赤ちゃんは、1番目の赤ちゃんから約2週間半後に受精したと考えられている。

ダブルでおめでたい話ではあるが、出産時期がずれるため、それぞれの赤ちゃんの生命機能を損なわないように取り出さなければならないという難問が待ち構える。また第1子を出産後、約3週間後にもう1人出産するというからジュリアさんの体力も気がかりなところ。しかし生まれたあかつきには、人間界では数100万分の1の確率という“双子のようで双子ではない兄弟”が誕生することになる。

(数百万分の1の確率!妊娠中に再び妊娠したアメリカ人女性!)

妊娠とは


妊娠とは、受精卵が母体内に存在し、かつ相互に器質的結合を有する状態を指します。具体的には、受精卵の着床から胎児(または胎芽)およびその付属物の排出までの期間をいい、胎芽が存在せず病的絨毛のみが存在する場合を含みます。

妊娠に至るには、当然のことながら、受精を行う必要があります。受精とは、配偶子である精子と卵子が接着・融合し、精子由来の雄性前核と卵子由来の雌性前核が融合するまでの過程を指します。通常ヒトでは卵管膨大部で行われます。

月経周期は、卵巣における変化から、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられます。子宮内膜における変化からは、増殖期、分泌期、月経期に分けられます。期間は28〜30日のものが最も多いですが、個人差が多く同一人でもストレスや健康状態によって変動します。

排卵は、黄体化ホルモン(LH)サージに基づきます。排卵現象は、卵成熟、卵放出、顆粒膜細胞の黄体化からなります。

卵胞期初期では、まず下垂体ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用により顆粒膜細胞が増殖し、中期になるとエストロゲンの産生が増加して、FSH受容体の誘導増加が始まります。

このような状況下で、エストロゲン産生増加があると、FSHの減少が起こります(ネガティブフィードバック)。結果、FSH受容体の最も多い卵胞が主席卵胞になります。

後期になると、顆粒膜細胞と莢膜細胞は相互に機能的に働き、エストロゲンの産生は亢進し、FSHが顆粒膜細胞にLH受容体を誘導し、エストロゲンはこの誘導作用を促進します。

その結果、LHによる黄体化が始まり、ステロイド合成がエストロゲンからプロゲステロンへと移行します。エストロゲンは少量のプロゲステロンとともにポジティブフィードバック作用をもたらし、LHサージが誘起されます。LHサージが開始された後、34〜36時間で排卵が起こり、未成熟の卵胞は閉鎖に至ります。

ここで受精が行われると、妊娠が起こるわけです。卵子の受精能は、排卵後2〜6時間といわれています。そのため、一回で排卵された2つの卵子が、2週間後に時相を異なって妊娠する可能性は低いのではないか、と考えられます。

そうなると、妊娠中に再び排卵が起こって、また妊娠が可能となった(精子の受精能は6日程度なので、子宮腔内にあるものではなく、また新たに放出されたものと考えられます)、ということなのでしょうね。機序は不明ですが、このようなことが起こったそうです。

ちなみに、双胎(双子)で成長のスピードが異なることは起こりえます。これを、双胎間胎児発育不均衡(discordant twin)といいます。たとえば、染色体異常、感染、奇形、臍帯過捻転などによる一児の子宮内胎児発育遅延などが原因となり得ます。

その原因の一つとして、双胎間輸血症候群(twin to twin transfusion syndrome;TTTS)があります。

双胎間輸血症候群とは

双胎間輸血症候群とは、双胎において胎児間発育不均衡、1児の心不全による全身浮腫、羊水の極端な片寄り、胎児仮死、子宮内胎児死亡を引き起こす症候群のことを指します。

胎盤における血管吻合のために、両児の循環動態に著しい不均衡が生じ、これが代償できなくなって生じると考えられています。

1絨毛膜2羊膜双胎において、胎盤内の血管吻合により両児に不均等な血液分布が生じるためであるとされています。双胎を包んでいる外膜のことを絨毛膜といいますが、絨毛膜が1枚である双胎を一絨毛膜性双胎といいます。

また、双胎間隔壁がなく、胎児を包む内膜(羊膜といいます)の数が1枚の一羊膜性双胎と、隔壁が羊膜2枚の二羊膜性双胎に分けられます。前者も予後はきわめて悪く、周産期死亡は約50%以上にも及ぶといわれています(帝王切開術を考慮)。

双胎間輸血症候群において、供血児は貧血、心筋肥大、羊水過少をきたします。一方、受血児は多血症、心拡大、心不全、胎児水腫、羊水過多を呈します。

羊水量の変動を含め、両児のwell-beingの観察を行い、1児でも状態が悪化すれば分娩を決定します。胎児間に発育の不均衡が認められる場合、発育不良児臍帯の卵膜付着や胎盤辺縁付着が認められることもあります。

…果たして、本当に重複妊娠かどうかは不明ですが、実際に起こったのならば、どのような機序で起こったのかなど、気になるところではあります。

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