元巨人の内野手で、膵臓がんのため25日に都内の病院で亡くなった故・土井正三さん(享年67歳)に、同じ病院に入院している王貞治ソフトバンク球団会長(69)が対面していたことが26日、分かった。この日、親族の男性が明かした。

土井さんが闘病生活を送っていた病院に、王会長が腹部の痛みを訴えて入院したのが今月14日で、病室も同じ9階だった。王会長は21日に胆のう摘出の手術を受け、無事に成功。リハビリを始めた矢先に、苦楽を共にした仲間の悲報を聞いた。

親族の男性によると、王会長は25日、家族に付き添われながら霊安室で対面。自身の手術から4日しか経過しておらず、点滴のスタンドを携えたまま線香をあげていったという。
(王さん、点滴姿で土井さんに対面していた)

膵癌とは


膵癌は、膵臓から発生した悪性腫瘍(上皮性悪性腫瘍)です。進行が早く、きわめて予後が悪いとされています。発生率は約1,000人に1人で、60〜70歳代の高齢者に多く、増加傾向にあるといわれています。

膵臓は膵液を産生する腺房、膵液を運ぶ膵管、および内分泌腺であるランゲルハンス島などからなりますが、膵癌の約90%は膵管から発生する膵管癌(ductal cell carcinoma)で、通常「膵癌」といえば膵管癌を指します。

発生部位により、膵癌は
1)膵頭部癌
2)膵体部癌
3)膵尾部癌(2,3を合わせて膵体尾部癌)
4)膵全体癌

に分類されます。

膵臓の中でも、膵頭部癌が約2/3で多く、周囲組織へ浸潤していきます。見つかりにくく(検診などでは普通、あまり膵臓癌を疑って検査をする、ということも少ないため)、診断時にはほとんどが進行癌です。

発生部位により病態が異なります。頭部癌では膵内胆管の狭窄、閉塞により黄疸をきたします。主膵管の閉塞により随伴性膵炎をきたします。後腹膜神経叢への浸潤があると、耐えがたい疼痛をきたします。

体尾部癌では比較的臨床症状に乏しく、症状出現時には高度に進行していることが多いです。稀に脾静脈閉塞により胃静脈瘤をきたします。

粘液産生能が強く、膵管内で乳頭状増殖を示す粘液産生膵腫瘍では、浸潤性発育に乏しく、予後が良好であるといわれています。

原因は明らかでありませんが、外部環境因子として喫煙、食習慣、飲酒、産業関連発癌物質などとの関係が示唆されています。特に、日本では肉類摂取に伴う高脂肪食および喫煙との関連が指摘されています。内部環境因子としては、糖尿病、慢性膵炎ないし膵石症、胆道疾患などとの関連が指摘されています。

膵癌の診断


初発症状としては無痛性の黄疸が多く、皮膚黄染とともに右上腹部に胆嚢を触知します。基本的に、黄疸は血中のビリルビン濃度が2〜3 mg/dLを超える程度になると気づかれるようになります。黄疸では、黄色調の白目や皮膚と同時に褐色尿を訴え、患者さんによっては尿の色の変化を主訴に来院することもあります。皮膚の痒みを訴える場合もあり、黄疸の重要な徴候の1つとなっています。

他にも、腹痛、体重減少、黄疸、耐糖能異常などがありますが、初期には無症状のことが多いため、発見が遅れやすいとされています。進行癌になると背部痛、腹痛、下痢が出現します。中でも、膵臓の障害による2年以内の糖尿病発症、急激な体重減少は有力な診断の手掛かりとなります。

血液学的には肝機能異常がみられます。随伴性の膵炎によって血清アミラーゼ値の上昇がみられることもありますが、癌による主膵管閉塞から閉塞性慢性膵炎となり、むしろ低値となることもあります。

CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーの上昇も重要な所見です。CEA、CA19-9、DUPAN2など種々の血清中腫瘍マーカー、なかでも、CA19-9の陽性率は60〜80%と高いです。

一般に、術前に腫瘍マーカーが高値の症例では腫瘍の切除により腫瘍マーカーは低下するので、術後再発のモニターとして有用です。腫瘍径が1.0 cm以下の膵癌での陽性率は低く、CA19-9でも早期診断の有用性は低いといわれています。

画像診断では、超音波検査、CT、ERCP、MRCP、EUSなどが存在診断や局所進行度、リンパ節転移の有無などの広がりの診断に重要です。超音波検査はスクリーニングに適しており、通常型膵管癌は内部低エコーないし不均一な斑状エコーを呈する腫瘤として描出されます。腫瘍より上流の胆管や膵管の拡張所見は有用です。

造影CTでは低吸収域として描出され、ERCPでは膵管の限局性狭窄、あるいは完全閉塞が典型となります。最近は,ERCPに代わって膵管、胆管像が得られるMRCPが施行されています。ERCPでは得られない閉塞部より末梢の膵管拡張が描出されます。

腹部血管造影では一般に血管に乏しく、腫瘍濃染像はみられません。血管への浸潤を反映する癌性狭窄や門脈造影所見は手術適応の判断や術式の選択に有用です。ただ、最近のMDCTの登場で、血管造影は必ずしも必要でなくなってきています。

遠隔転移や腹膜播種は、胸部CTやPET-CTなどで診断します。

膵癌の治療


膵癌の治療としては、以下のようなものがあります。
膵頭部癌に対しては、一般的に第2群のリンパ節郭清を伴う膵切除術が行われます。さらに、後腹膜・大動脈周囲リンパ節や神経叢の広範囲郭清を伴う拡大郭清の手術も行われます。膵体尾部癌に対しては遠隔転移、高度リンパ節転移、周囲血管浸潤がなければ、膵体尾部脾切除術を行います。

化学療法としては、膵癌に対して確実に治療効果を示す抗癌剤は今のところないといわれています。ですが、Low dose FP療法(5-FU+低用量CDDP)や、Gemcitabine(商品名:ジェムザール)を基本薬剤として、GEM+5-FU、GEM+epirubicin、GEM+CDDP、GEM+TS1の併用療法が行われ、比較的高い奏効率が報告されています。

また、放射線療法が行われることもあり、術中照射、術後の体外照射など合計50グレイを照射します。最近は少量の化学療法とあわせた放射線化学療法が広く行われています。

ただ、治療成績は不良であるといわざるをえないでしょう。根治的治療として手術が行われますが、切除率が20〜40%と低く、切除できても5年生存率は10〜15%程度にとどまるといわれています。

二人を巡り合わせた奇縁…袖触れ合うも多生の縁、とは言いますが、どこか運命めいたものを感じてしまいました。

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