シギが持病の突発性難聴を再発したため、予定されていた10月3日に福岡で行われる「ミュージックシティ天神」、10月31日に大阪で開催される「MINAMI WHEEL 2009」でのライブが急遽キャンセルされることになった。

数年前から何度か突発性難聴を患っているという彼女。すぐ病院に行くため聴力は毎回戻っているとのことだが、現在も疲れなどの原因で耳鳴りがする後遺症が残っているという。今回症状が再発したのを受けて、これ以上悪化することだけは防ごうと、しばらくの間しっかり安静期間をとることになった。

突発性難聴は、大音量などが原因となる外傷性難聴とは異なり、健康な人が特別なきっかけもなく突然発症する疾患。今のところ具体的な原因は解明されていない。
(シギが突発性難聴再発によりライブ予定すべてキャンセル)

突発性難聴とは


突発性難聴とは、突然に生じる難聴のうち原因が不明の感音難聴(内耳以降の感音器の障害が原因である難聴)です。

名前の通り、突然に難聴が発生することが特徴的です。「朝、目が覚めて」「作業中」など、自分がそのとき何をしていたかを明言できる状態で起こることが多いようです。一般に片側に生じますが、まれに両側性(1%未満)に生じることがあります。

早期の治療で聴力の回復が期待できる、数少ない感音難聴の1つであり、耳科領域の救急疾患として重要であるといわれています。1993年に厚生省研究班を中心に行った調査では、突発性難聴の全国受療者数は推定、年間24,000人で、人ロ100万人対で192.4人とのことで、決して少なくないと考えられます。

難聴の程度は、中等度から高度さらには聾に至るものまであり、聴力像も低音障害型、高音急墜型、水平型、聾型など多様です。内耳性の障害で、通常は片側性。30〜60歳代に好発します。

耳鳴、耳閉感、時にめまいを伴いますが、メニエール病と異なり、めまい、難聴発作が反復して起こることはないとされています。内耳循環障害説、ウイルス感染説の2大説のほか、内リンパ水腫、内耳窓破裂、アレルギー、ストレスなどが原因として挙げられています。

不明なことが多くしかも一元的ではなく、1つの臨床症状を示す疾患群として捉えられています。

突発性難聴の診断


厚生省研究班による、突発性難聴の診断基準は、以下の様に定められています。
1)主症状
1.突然の難聴
文字通り即時的な難聴、または朝眼が覚めて気付くような難聴。ただし、難聴 が発生したとき「就寝中」とか「作業中」とか、自分がその時何をしていたか が明言できるもの。
2.高度な感音難聴
必ずしも高度である必要はないが、実際問題としては高度でないと突然難聴になったことに気付かないことが多い。
3.原因が不明、または不確実;つまり、原因が明白でないこと。

2)副症状
1.耳鳴り
難聴の発生と前後して耳鳴りを生ずることがある。
2.めまい、および吐き気、嘔吐
難聴の発生と前後してめまいや、吐き気、嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない。

【診断の基準】
・確実例 : 主症状、副症状の全事項をみたすもの。
・疑い例 : 主症状の1.および2.の事項をみたすもの。

このような項目があります。この中で、「突然の難聴」「高度な感音難聴」「原因が不明」と定義されています。そのため、感音難聴の原因となる原因が明らかな疾患との鑑別(外リンパ瘻、ムンプス難聴、メニエール病、聴神経腫瘍、心因性難聴など)が必要です。

症状としては難聴の他に、耳鳴は約9割の症例で認められ、めまいは約3割の症例に伴うとされています。また、聴力の改善・悪化の繰り返しはなく、通常一側性であるといわれています

突発性難聴の治療


突発性難聴の治療としては、以下のようなものがあります。
まず、聴力が固定するまで(約2週間から1か月でほぼ固定)安静やストレスの回避が重要となります。薬物療法としては、ステロイド剤が主体となります。発症から2週間以内の早期治療が重要視されています。

また、ストレスの関与が疑われる症例も多いことから、可能な限り入院のうえ安静を保ち、薬剤の併用療法、いわゆるカクテル療法が一般的には行われています。現時点では内耳血流障害とウイルス感染を想定した治療を行うことになります。

ステロイド薬は二重盲試験によりその有効性が証明されている薬剤であり、その抗炎症作用を期待して多くの場合、第1選択薬として用いられています。内耳循環改善のため循環改善薬、プロスタグランジン製剤、代謝賦活薬、ビタミンB12なども用いられています。

また、内耳血流障害による低酸素状態の改善のため高気圧酸素療法なども、主に治療効果の少ない症例に対する追加治療として行われる場合もあります。

厚生省難聴班でATP、betamethasone(BM)、hydrocortisone(HC)、prostacylin (PC)、prostagrandin(PG)、Urografin(UC)の6剤の効果を検討したそうですが、どの薬剤が有効か結論は得られなかった、とのことです。

他にも、星状神経節ブロックや高気圧酸素療法なども試みられているそうです。予後としては、3分の1は完治し、3分の1は回復するが難聴を残し、3分の1は治らずに終わるとのことです。中でも、難聴が高度(特に聾型あるいは重症度の高いもの)、めまいを伴う症例、高齢者、発症後治療開始まで10〜14日以上経った例では聴力の予後は不良となります。

また、鼓室内注入療法といって、鼓膜後下象限に鼓室換気チューブ(KOKEN type BまたはPaparella typeII)を挿入、あるいはOtoScanを搭載したCO2レーザー(Lumenis 30C)にて鼓膜に円形の穿孔を作成し、これらチューブあるいは鼓膜開窓部を介してデカドロン 2 mg/0.5 mLを25 Gの注射針を用いて注入する治療が行われることもあります。

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