読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
1歳6か月の娘に「先天性耳ろう孔」があり、膿みが出て異臭がします。完全に治す方法はないものでしょうか。(32歳女性)

この相談に対し、名古屋市立大病院准教授である中山明峰先生は以下のようにお答えになっております。
耳ろう孔は、顔の両側に出ている耳介(いわゆる耳)近くに、針の太さほどの穴があり、そこから体内に袋状に伸びたものです。

耳の軟骨は、胎児期にいくつかの柔らかい骨が集まって一つの軟骨に形成されると考えられています。その際、うまくくっつかず、小さなすき間が生じてできたのが耳ろう孔と推測されます。耳介近くのほか、まれに耳の中などにできることもあります。

耳ろう孔の袋は、1センチ以上あり、体内で複雑に入り組んでいることもあります。

耳ろう孔の穴から膿みが出て異臭がするのであれば、中で細菌感染をしている可能性が高いと考えられます。

その場合、抗生物質を使えば一時的に症状は治まります。ただ、残念ながら膿みが出尽くすことはなく、耳ろう孔の袋の中に膿みが残って何度も炎症を繰り返してしまいます。炎症によって皮膚に1円玉程度の穴が開くこともあります。


先天性耳瘻孔とは


先天性耳瘻孔とは、耳介またはその周囲にある先天的な小瘻孔のことです。瘻孔は、正常では存在しない異常な管状の交通のことを指します。直径は0.75〜3mmくらい、深さ0.2〜20mm前後のものが多く、1本のもの、または2、3本に分枝しているものもあります。

耳前部から耳輪前部(耳輪とは、耳の上の方で輪のようになっている外周の部分)に好発します。

一般に開口部より内下方に向かい、耳輪脚(耳輪が上部から顔の付け根の方に下がって行き耳の中の方に入っていく部分)、耳甲介腔から外耳道付近に盲管(筒状に穴がそこで終わります)となって終わります。通常、無症状ですが、感染を起こすと発赤、腫脹、疼痛、排膿を繰り返します。

先天性耳瘻孔の治療


先天性耳瘻孔の治療としては、以下のようなものがあります。
症状が出ない人もいますが、一度でも炎症を起こしたのであれば、穴の周囲を切開し、膿みのたまっている袋を取り出す手術を受けることをお勧めします。

手術は、1時間以内に終わり、大人は、局所麻酔でできます。ただ、小児の場合は、全身麻酔をするため、数日間、入院する必要があります。

何度も炎症を繰り返すと袋の形が崩れるなどし、手術をしても膿みを取り残してしまうこともあります。早めに、手術のできる耳鼻咽喉科を受診し、相談してみて下さい。

耳瘻孔に対する治療は、感染歴がなければ治療の対象となりませんが、上記のようなケースで、感染を反復する場合には消炎後に摘出術を行います。

ただ、瘻孔の分岐が複雑で、完全摘出が困難なこともあります。摘出が不完全に終わると再発しやすいため、そこは注意が必要となります。

【関連記事】
子供の爪が黒い…もしかして、メラノーマ(悪性黒色腫)?

小視症−「物が小さく見える」という症状の6歳男児