読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
生まれつき右耳が内側に折れています。眼鏡をかけるのが不便ですし、今の時期、マスクも耳にかからず困っています。治療法や費用について教えてください。(17歳女性)

この相談に対して、杏林大病院形成外科教授である波利井清紀先生は、以下のようにお答えになっています。
耳が内側に折れているとのことですが、これは一般的に「折れ耳」と言われ、生まれつき、耳の軟骨が変形している病気です。

通常は、折れ曲がって変形している軟骨を、耳が立つように、耳の裏側から矯正する手術を行います。

しかし、折れている耳が反対側の耳に比べて異常に小さい「小耳(しょうじ)症」に近い状態であることがあります。

このような場合は、耳の軟骨自体が不足しており、新たに大きい耳を作る手術が必要になります。

いわゆる"耳"というのは外耳に含まれており、外側に出ている部分を「耳介」といいます。耳介の形成には、胎生第6週頃に6つの耳介結節が癒合することに始まります。この形成過程で、種々の因子により、奇形が生じえます。

その異常により、無耳症、小耳症、折れ耳などが起こりうるわけです。折れ耳とは、先天的に耳介上部が前下方へ折れ曲がっている状態を指します。この場合、耳介の成長障害はありません。

一方で、上記のように小耳症の場合、異なります。小耳症では、耳介が小さく、その一部または全部が欠損している状態を指します。発生頻度は北欧においては出生数2万人に1人といわれています。

日本では欧米に比してやや多く、4,500出生当り1人の発生の報告があります。明らかな遺伝関係は認められていません。また、ほとんどの症例に外耳道閉鎖症を合併し、耳小骨の数の異常や形態異常を認め、側頭骨の含気化も悪いといわれています(中耳奇形も伴うこともあります)。

小耳症は程度により3度に分類されます。1度は耳介の各部位が認識されます。2度は構成部分が一部残存します。3度は皮膚隆起となっております。

こうした治療については、以下のようなものがあります。
この手術は2段階で行います。まず、肋骨(ろっこつ)の一部の「肋軟骨」を取り出します。取り出した軟骨を不足している耳の軟骨の形に細工し、耳を作るところに寝かせた状態で埋め込みます。

半年以上たったら、耳が立つように、埋め込んだ軟骨を矯正する手術をします。いずれの手術も全身麻酔で行います。この手術は、胸を切開するため、多少の傷が残りますが、あまり目立ちません。

折れている耳を立てるだけの手術は比較的簡単で、入院せずに手術を受けられ、費用もさほどかかりません。

「小耳症」に近い重度な変形がある場合などは、2回の手術でそれぞれ1週間程度の入院が必要です。手術費用は保険がきき、3割負担で1回、15万〜20万円程度です。また、1か月の医療費自己負担額の上限を定めた「高額療養費制度」の対象になる場合もあります。

一度、形成外科の専門医を受診し、相談してみてください。

治療は、上記のように8〜10歳頃に自家肋軟骨を採取し、耳介の形をしたフレームを作成して、皮下に挿入固定して耳介を作成します。耳介形成術を行い、その後に外耳道形成術を施行するか検討することもあります。

【関連記事】
先天性耳瘻孔の症状と治療

真珠腫性中耳炎の術後に症状増悪