読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
コンタクトレンズを25年間使い続けたため、昨年夏にアレルギー性結膜炎になりました。眼鏡は不自由なのでレーシックを考えていますが、危険はありませんか。(40歳女性)

この相談に対して、東京歯科大水道橋病院教授のビッセン宮島弘子先生は以下のようにお答えになっています。
コンタクトレンズによる結膜炎には、ハウスダストなどに対する通年性のアレルギーが元々ある場合と、レンズの刺激でまぶたの裏につぶつぶができる「巨大乳頭結膜炎」の場合があります。ステロイド(副腎皮質ホルモン)で症状は軽くなりますが、コンタクトレンズをしたままでは治療は困難です。

眼鏡にするのが一般的ですが、かけたくなければレーザーで角膜を削って近視などを治す「レーシック手術」を検討してもいいと思います。東京都内の眼科施設でレーシック手術後に角膜感染症が多発したニュースがあり、質問者のように合併症を心配するのは当然ですが、手術室や器具の管理が適切なら、術後の感染症は非常にまれです。

効果も、レーザーが進歩したので、手術翌日から良く見えるようになりました。長期的な経過を心配する方もいますが、日本に導入されてから10年以上たち、結果は安定しています。悩む前に通院先で近視の度数、角膜の状態がレーシックに適しているか調べてもらいましょう。

ただ、レーシックを受けるにしても、まずアレルギー性結膜炎の状態をよくしておくことが必要です。

アレルギーが通年性なのか季節性なのか、結膜炎の原因がコンタクトレンズそのものかによって治療が異なります。ステロイド以外にも点眼治療薬があるので、自己判断で薬を使ったり、やめたりせず、眼科医のもとで適切な治療法で根気良く治すことが大切です。

レーシック手術のレーシック(LASIK)とは、laser in situ keratomileusisの頭文字をとったもので、日本語に訳せば「レーザー角膜切削形成術」となります。眼の屈折異常を矯正する手術の一つで、レーシック手術は現在の主流となっています。

一般的には、マイクロケラトームとよばれるカンナのような機械で角膜の表面を薄く削り、フラップ(ふた状のもの)を作り、めくります。そこで露出した角膜の実質部分にエキシマレーザーを照射し、角膜の一部を蒸散させ、角膜表面の屈折力を減ずる手術です。

そもそも近視とは、目に入ってきた平行光線が、網膜の前方に像を結ぶような屈折状態を指します。正視の人はしっかりと網膜の所で像を結ぶのでぼやけたりしないのですが、近視では網膜の前の方で結像してしまうので、ぼやけてしまうわけです。

眼軸が長すぎるか、角膜や水晶体の屈折力が強いためにこうしたことが起こってしまい、前者を軸性近視、後者を屈折性近視といいます。通常みられる近視は、軸性近視です。

そのため、しっかりと網膜の所で結像できるように、角膜を削って矯正するのがレーシック手術です。そのため、事前検査では屈折度検査、角膜曲率半径測定、角膜形状解析など多くの検査を行い、その検査結果をもとにレーザー照射を行います。

ちなみに、イントラレーシック(Intra-LASIK)は、INTRALASE社製イントラレースFSレーザーを用いて、コンピュータ制御によってフラップを精密に作成する点が特徴的です。これにより、より精度の高いフラップ作成ができるといわれています。

より高い矯正精度を得るためには、コンタクトレンズの装用で圧迫されている角膜を元の状態に戻し、正確な検査を行う必要があるわけです。そのため、1週間程度コンタクトレンズ装着を中止しておく必要があるわけです。

こうした手術前の検査の結果、角膜厚が足りなかったり(450μm以下の角膜厚)、小角膜など眼自体に問題があったり、合併症(白内障・緑内障・網膜剥離・結膜炎など)がある場合などでは、適応できない人がいます。また、全身疾患との関連で、膠原病、自己免疫疾患の患者さんでは創傷治癒に障害をきたす可能性もあり、ドライアイの合併によりレーシック治療が行えない場合があります。

レーシックの合併症としては、具体的に以下のようなものがあります。
低いとはいえ、他の手術同様に失敗や、術後合併症(感染症など)のリスクがゼロではありません。レーシック手術の副作用と思われる角膜拡張症が1%とはいえ、認められています(スペイン、ミゲル・エルナンデス大学およびトルコ、アンカラ大学医学部の研究グループによる研究)。

「角膜拡張症(keratectasia)」とは、潰瘍や炎症、変性、屈折矯正手術などの原因で菲薄化した角膜が、眼圧の影響によって前方に膨らんだ状態です。こうなると、再び角膜のカーブは強くなり近視化するばかりか、メガネでは矯正できないくらいの強い乱視を引き起こす可能性があります。これは、強い近視を矯正したり、円錐角膜などを見逃して近視、乱視を矯正した場合に起こるといわれています。

一過性にハロ・グレアが起こることもあります。これは、夜間や蛍光灯の下でまぶしく感じたり、光の周りがぼやけて見えたりする症状です。手術で修正した角膜の内側と外側で光の焦点に違いの出てしまうことが原因といわれています。他にも、一時的にドライアイになることもあります。

視力が十分に出なかったり、さらに、術中のトラブルでフラップ作成が不完全になり上皮剥離を起こしてしまったり、術後早期に目を強くこすったり、ぶつけたりすると、まれにフラップがズレてしまう可能性があり、不正乱視の原因となってしまうこともあります。

しっかりと眼科医とご相談の上、レーシックを受けられるかどうか、決めてはいかがでしょうか。

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