11月8日(日)大阪・はびきのコロセアムにて国際チャクリキ協会「チャクリキ ファイティング カーニバル 2009」が行われた。

今大会では急性骨髄性白血病を克服したノブハヤシが復活第1弾 特別エキジビションとしてリングに登場。学生時代に円盤投げや砲丸投げといった陸上競技で活躍、“スーパーヘビー級の秘密兵器"と呼ばれるチャクリキ関西の角谷正義と対戦し、リング上で元気な姿を見せた。
(ノブハヤシが白血病を克服し復活!キック&空手で6人の王者が誕生)

急性骨髄性白血病とは


急性骨髄性白血病とは、遺伝子異常が骨髄性前駆細胞に生じ、腫瘍化したクローンがさまざまな段階で分化能を失い、幼若な芽球(白血病細胞)が自律的に増殖する造血器腫瘍です。

増殖の主体である芽球(blast:骨髄芽球、単芽球、前赤芽球、巨核芽球)が、骨髄中有核細胞分画の中で20%以上を超えるもの(WHO分類にて。(従来のFAB分類では30%以上)を指します。

病型によっては一部、分化能が認められますが、基本は骨髄系芽球が急速に増加し、造血障害と全身臓器浸潤をきたす血液悪性腫瘍性疾患です。

AML幹細胞とその子孫である白血病細胞は、特有の染色体異常を認めることが多く、遺伝子異常を認め(多くは癌遺伝子が絡んでいる)、自律性増殖をきたします。したがって、白血病細胞は正常造血に対して増殖優位性を示すようになり、やがて骨髄は白血病クローンに取って代わられます。

結果、骨髄において、白血病細胞が増殖すると正常造血は抑制されてしまいます。その結果、正常な赤血球、白血球、血小板が造られなくなり、貧血や感染、出血傾向などのさまざまな症状が出現することになります。

世界標準であるFAB分類では、
Mo:最未分化型急性骨髄性白血病minimally differentiated AML
M1:未分化型急性骨髄性白血病AML without maturation
M2:分化型急性骨髄性白血病AML with maturation
M3:急性前骨髄球性白血病acute promyelocytic leukemia;APL
M4:急性骨髄単球性白血病acute myelomonocytic leukemia
M5:急性単球性白血病acute monocytic leukemia(未分化型単球性白血病M5a、分化型単球性白血病M5b)
M6:赤白血病erythroleukemia
M7:急性巨核芽球性白血病acute megakaryocytic leukemia

これら8型に分類されています。

さらに、FAB分類に含まれない特殊病型とWHO分類では、
・急性混合型白血病acute mixed lineage leukemia(AMLL)
・AML with trilineage myelodysplasia(AML/TLD)
・低形成白血病acute hypoplastic leukemia
・二次性白血病secondary leukemia(治療関連白血病therapy related leukemia)
このようなものが含まれています。

急性骨髄性白血病の診断


臨床症状としては、白血病細胞が骨髄を占拠するために起こる骨髄不全症(赤血球、顆粒球、血小板産生低下)と白血病細胞が増殖することによって生じる症状とに大別されます。

骨髄不全症では貧血、感染(熱発)、出血傾向がおこります。白血病細胞が増殖することによって生じる症状としては、白血球増多症や白血病細胞の臓器浸潤による臓器障害です。
 
貧血は中等度のことが多いですが、出血傾向が強く出血量が多いと当然貧血も強くなります。熱発はほぼ頻発し敗血症、肺炎、病巣不明などによる高熱が多いです。好中球減少による易感染状態にあるために日和見感染が多いです。起炎菌は細菌(緑膿菌、肺炎桿菌、大腸菌、腸球菌、ブドウ球菌など)、真菌、ウイルスなどあらゆる種類に及びます。好中球減少症はさらに薬物療法を加えることによって、その程度は強くなり好中球減少性大腸炎などもみられます。

出血傾向は主に血小板減少症のためであり、全身のあらゆる部位に起こりえます。さらに、凝固線溶異常を伴う播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発することもまれではなく、この場合は重篤な出血が多いです。特に、急性前骨髄球性白血病(AML-M3)の白血病細胞では、豊富なアズール顆粒に凝固線溶活性物質を有しており、著明なDICを惹起します。

白血病細胞は肝、脾、腎などに浸潤し、それぞれの臓器機能不全をきたします。単球性白血病(AML-M4,M5)では著明な白血球増多症を伴う場合、特徴的に歯肉腫脹をきたすことが知られています。また皮膚に腫瘤を形成しやすく、leukemia cutisと呼ばれています。末梢血に著明な白血球増多をきたすと過粘稠症候群などを起こしやすくなります。

診断には、こうした臨床症状、血液検査に加え、骨髄検査が確定診断には必須となります。1999年に提唱されたWHO分類では、骨髄における芽球比率が20%以上であることと定義されました(従来のFAB分類では30%以上)。

骨髄穿刺にて芽球の形態学的検査、ペルオキシダーゼ染色などの細胞化学的検査、細胞表面マーカー、染色体検査、遺伝子検査などを行い白血病細胞の生物学的特徴を明らかにします。WHO分類は形態学的異常に加え、遺伝子異常や臨床的特徴を考慮して分類されています。

急性骨髄性白血病の治療


急性骨髄性白血病の治療としては、以下のようなものがあります。
一般的な場合、白血病では診断確定後、複数の抗がん剤を用いての化学療法(寛解導入療法)を行います。 まず寛解導入療法で発症時10^12個存在するとされる白血病細胞を10^9個程度に減少させ、完全寛解(CR)を目指す寛解導入療法、次いで地固め、維持療法から成る寛解後療法を複数回行い白血病細胞の根絶をはかります。

急性骨髄性白血病の治療に重要な抗癌剤はシタラビンおよびアントラサイクリン系抗癌剤です。一方、急性前骨髄球性白血病(M3)における寛解導入療法では、初診時白血球数およびAPL細胞数で層別化治療を行います。

たとえば、初診時白血球数が3,000/μL以上の症例では、ベサノイド(ビタミンAの誘導体)に化学療法を加えて治療を行います。急性前骨髄球性白血病では、ビタミンA製剤であるオールトランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が用いられます。このような治療により寛解へと導かれます。

寛解とは、永続的一時的を問わず、病気による症状が好転または消失することを指します。つまり、一般的な意味で完治せずとも、臨床的に「問題ない程度」にまで状態がよくなることを指します。

寛解後療法の中で、寛解後早期に行う治療(地固め療法)はその有用性が確認されています。地固め療法は、寛解導入療法で使用された同じ薬剤の組み合わせで行われることが最も多いです。

薬物療法によって寛解に導入された症例を、そのまま薬物療法を継続するか、あるいは造血幹細胞移植、特に同種骨髄移植に踏み切るかはいまだに明瞭な基準がないだけに症例ごとに問題となります。造血幹細胞移植の適応は薬物療法による予後中間群あるいは予後不良なグループです(予後良好なグループであっても、いったん再発すると薬物療法の成績はきわめて悪いので、移植でしか治癒は望めない)。予後不良因子として、高齢者(50〜60歳以上)、白血球数増多(2〜3万以上)、染色体異常(5番および7番異常)などです。

急性骨髄性白血病は、好中球減少症による易感染性が非常に強いため、支持療法が必要となり、その主体は感染症対策になります。無菌室(ベッド)の利用、強力な抗生物質や抗真菌薬の使用に加え、寛解導入療法後に顆粒球コロニー刺激因子granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)が使用できるようになったことによって、好中球の回復が約1週間早く期待されるため、この時期の感染症対策は飛躍的に改善されたといえるでしょう。

克服した、といっても再発の可能性も捨てきれず、そのなかで必死に格闘技に打ち込んでいらっしゃると思われます。是非とも、ご自愛いただきながら活動されていただきたいと思われます。

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