以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

建築会社を経営するK・Tさん(67)の楽しみは、仕事終わりの晩酌と、その後に入るお風呂。ちょっと熱めのお風呂が好きな彼は、42℃のお湯に肩まで浸かって冷えた身体を温め、ウトウトするのが大好きでした。

そんなK・Tさんの身に事件が起きたのは、2年前の師走のこと。友人のお通夜を終え、自宅でも後輩たちと飲んだ後、お風呂に入ったK・Tさん。虫の知らせのようなものを感じ、風呂場に向かった奥さんが目にしたのは、湯船の中で意識を失っている夫の姿でした。

意識障害とは


意識とは、自分自身や周囲に対する十分な認識をもち、清明な状態で、かつ複雑で多面的な場面に対応できる状態と考えられています。

意識を覚醒状態に保つために、脳幹被蓋部にある上行性網様体賦活系から視床(視床正中部と髄板内核群)を経由して大脳皮質に至る働きが重要です。この働きが障害されると意識障害が生じますが、突然に意識障害が発生した場合は、重篤な病態の発生を示唆する最初の徴候であることが多く、迅速な対応が要求されます。

意識障害とは、意識の明るさ(覚醒度)の低下、あるいはその内容(思考、判断、記憶などの能力)の障害された状態を指し、脳に一次的な原因を有する場合と、脳以外に原因があり二次的に脳機能の障害される場合があります。

K・Tさんがついウトウトしていたのも、単に気持ちがよく眠くなったからではありません。危険な入浴で脳が虚血状態になり、意識を失う一歩手前だったのです。お風呂での意識障害は死と隣り合わせ。年間1万人以上が命を落としていると言われているのです。

では、どのような入浴がK・Tさんのような意識障害を引き起こすのでしょうか?それはお酒を飲んだ後に、42℃のお湯に首まで浸かっていた入浴法。お酒を飲めば、人は血液循環の乱れから血圧低下を起こします。さらに、42℃という高い温度のお風呂に入ると、血圧がとんでもないことになってしまいます。

入浴時の注意点


入浴時の注意点としては、以下のようなものがあります。
入浴は、身体表面のほこりや汚垢などを取り去って、皮膚表面を清潔にし、気分も爽快にすることを目的としています。皮膚の清潔により、皮膚呼吸や皮膚表面の新陳代謝も盛んにすることができます。

また、湯につかることにより血液の循環を促し、体を温めることができます。適度な体のぬくもりは、副交感神経が働いて気分は落ち着き、リラックスすることができます。

一方で、このような入浴の作用は、心臓病や高血圧症などの血液の循環に関わる疾患をもっている人や、非常に体力が低下して衰弱している人などの場合には反対に身体に負担となります。そのため、入浴時間や湯の温度、湯の量を加減する必要があります。

ある研究によると、入浴前80程度だった上の血圧が、42度のお風呂に入った途端、一気に130まで上昇。その後 今度は一転下がりはじめ、急激な血圧変動を起こしたのです。K・Tさんの場合、上の血圧が湯船の中で70近くまで下がったと考えられます。そして血圧が70以下になると、脳は意識障害を起こしてしまうのです。

さらにもう一つ、血圧低下の原因となったのが、肩までしっかりお湯に浸かったこと。実は肩までお湯に浸かると、かなりの水圧が体にかかっているのです。ある50代男性のレントゲン写真を見ると、肩までお湯に浸かった時の肺は、お風呂に入ってない状態に比べてなんと1.5センチも縮んでいました。このような水圧は心臓をも圧迫。圧迫された心臓は血液を送り出す力が弱まり、さらなる血圧低下を招くのです。

是非とも「脱衣所はできるだけ暖めておく」「あまり長風呂・熱い風呂に入らない」「酩酊した状態で入らない」といったことにお気を付け下さい。

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