2006年、現役の人気ホスト8名で構成されたバンド「AcQuA EP(アクア・イーピー)」が、シングル『禊-MISOGI-』がオリコン3位にチャートインする鮮烈デビューを飾ったのを覚えているだろうか。

その中心となっていたのが、ヴォーカルのSeiji(せいじ)。伝説のホストクラブ「Club ACQUA」をプロデュースし、自身もその代表を務め、ホスト界のカリスマとも呼ばれていた人物だ。

彼は、施設から引き取った犬のneji(ねじ)をメンバーに加えた異色のロックバンド「サムライボウル」のヴォーカルを務めるかたわら、女性のがんの早期発見を啓発する「ハートリボンプロジェクト」を立ち上げるなど、精力的に活動している。

2年前に「ハートリボンプロジェクト」を立ち上げるきっかけとなったのは、自身の母親が子宮がんを患ったこと。その想いを以下のようにブログで綴っている。
「自分の母親が癌になったことをきっかけに、少しでもオレにできることはないか?って考えた時に思いついたのがこのプロジェクトやねん。(中略)一人でも癌や病気で笑顔をなくしてしまう人を減らしていけるようなプロジェクトしていくから、みんなも意識して参加してや!」

そして今月14日(土)には、明治大学 和泉キャンパスにて開催される「子宮頸がん征圧イベント2009」へ参加する。女子大生発のこのイベントで、有意義なトークセッションが期待できそうだ。
(オリコンを揺るがした伝説のホスト、女性のがんの啓発活動)

子宮頸癌とは


子宮は西洋梨を逆さにしたような形をしています。体部は球形に近いかたちをしており、胎児が存在する場所です。その下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出しており、これを頸部といいます。この頸部にできる癌が子宮頸癌といいます。

一般に子宮癌と呼ばれていものには、子宮頸癌と子宮体癌の2種類があります。子宮の入り口(頸部)にできるのが子宮頸癌であり、奥の袋状の部分(体部)にできるのが子宮体癌です。

好発年齢は40歳程度で発生率が高いとされています。年齢別にみた子宮頸部がんの罹患率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患率、死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。

組織学的には、扁平上皮癌が80〜90%と最も多くみられ、腺癌は5〜10%程度です。扁平上皮癌の発癌にヒトパピローマウイルス(HPV)、特にハイリスク・タイプである16型、18型などの関与が示唆されています。HPVは、性交渉によって感染します。

子宮頸癌は、子宮腟部の扁平上皮と頸管腺組織の境界領域(SCジャンクションといいます[squamocolumnar junction])の頸管側に扁平上皮化生や異形成を経て発生します。この過程に、ヒトパピローマウイルス(HPV)の関与しており、HPVが持続感染(他のタイプのHPVは、一時的に感染しても治癒することが多い)することで、子宮頸癌が発生すると考えられています。

子宮頸癌患者の90%以上から、HPVが検出され、ハイリスク・タイプ(16型や18型など)で浸潤がんへの進展がみられやすいとされています。HPVは、100種類以上の型があります。子宮頸がんに関連するのは、15の型に絞られます。そのうち16、18、33、52、58型が高危険型に分類され、欧米で7割の子宮頸がんが16、18型に起因するそうです。日本人には比較的52、58型が多いですが、16、18型がやはり全体の6割を占めます。

最近のトピックスとしては、これらのウィルスに対するワクチンが開発・接種が開始されています。

子宮頸癌の診断


症状としては、浸潤前癌は無症状であり、子宮がん検診などで細胞診による検診で発見されます。癌検診が行われていることにより、結果、進行癌が減少し前癌状態である異形成や上皮内癌を含む早期癌で発見される頻度が増加しています。現に、最近では子宮頸部上皮内癌(0期子宮頸部癌)で発見される症例が、全子宮頸癌の半数以上を占めるようになってきています。

初期の浸潤癌に進行すると、帯下や性器出血の症状を呈することがあります。接触出血を起こすこともあり、性交後の点状出血などが典型的にみられます。腫瘍の発育が進むにつれ帯下の量は多くなり、膿性を呈してきます。性器出血は月経時以外に、多量の出血としてみられることもあります。

痛みが生じてくるのは、進行頸癌で認められる症状です。また、進行し膀胱や直腸を侵した場合、頻尿や尿意切迫、血尿、便意切迫、直腸出血などの症状が出現します。腰痛や下肢痛は、大きな腫瘍や尿管閉塞により腰仙部神経の圧迫や腰仙部神経根への癌浸潤の症状として現れます。

臨床進行期分類では、
・0期:上皮内癌
・I期:癌が子宮頸部限局
  Ia期:微小浸潤癌
  Ib期:?a期以外の?期
・II期:腟または子宮傍組織に浸潤するもの
  IIa期:腟壁浸潤を認めるが子宮傍結合織には浸潤していないもの
  IIb期:子宮傍組織浸潤の認められるもの
・III期:腟への浸潤が高度であるか、または子宮傍組織浸潤が骨盤壁に達するもの
・IV期:膀胱または直腸への直接浸潤あるいは、遠隔転移があるもの
このように分類されています。手術適応はII期までとなっています。

子宮頸癌の診断の基本としては、視触診と組織診があります。
視触診には内診があり、コルポスコープ(一種の拡大鏡で、子宮頸部を拡大して観察する道具)による詳細な子宮頸部の観察と、異常部位を狙った、狙い組織診が必須となります。

細胞診はスクリーニングだけでなく、病巣の診断にも欠かせない重要な手段となっています。中には、細胞診でのみ病巣が把握されることもあります。細胞診に異常が認められた場合には、コルポスコピーを行い、狙い組織診を実施することになります。場合によって(確診できない微小浸潤の有無など)は、円錐切除術が行われることもあります。

病理組織学的に確定診断をつけ、内診や全身理学的所見(特に鼠径、頸部リンパ節腫大の有無)、膀胱鏡、直腸鏡、画像診断や腫瘍マーカーなどの補助診断法を参考にしながら病巣の進展程度、占拠部位を把握して臨床進行期を決定します。

進行期決定には、子宮頸癌取り扱い規約やFIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)分類があります。それに基づいた標準治療法を選択します。

子宮頸癌の治療


子宮頸癌の治療としては、以下のようなものがあります。
治療法としては子宮全摘術とリンパ節郭清を中心とした手術療法と放射線療法が主体ですが、早期癌に対しては妊孕性温存のための円錐切除術、またリンパ節転移などの予後不良群に対しては化学療法などが試みられています。

0期頸癌では、コルポスコピー下の狙い組織診により浸潤のないこと、細胞診所見と組織診所見が一致していることを治療前に確認し、その上で断端がフリー(癌の部分との境界を顕微鏡的に検査して、取り切れているかどうかを確認する)であれば円錐切除で治癒可能となります。

Ia期頸癌では、単純子宮全摘出術や円錐切除術などが行われます。円錐切除術の結果、浸潤の深さが3 mm以内(Ia1期)であり、断端が陰性で、脈管侵襲が認められなければリンパ節転移リスクは低くリンパ節郭清は不要となります。円錐切除術は、妊孕能温存希望がある場合であり、浸潤の深さが3 mm未満、脈管侵襲がなく、断端も陰性であれば行います。

Ia2期(浸潤の深さが3〜5 mm)の場合、リンパ節転移リスクが10%程度あるため、広汎子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出+骨盤リンパ節郭清が推奨されてきましたが、最近ではリンパ節転移率はそれほど高くないのではないか、といった見方もあります。

Ib期−IIa期頸癌に対しては、広汎子宮全摘出術、放射線治療などが行われ、ほぼ同等の治療効果を示すとも言われています。放射線療法では、外照射と腔内照射の併用療法などが行われ、日本では、腔内照射に高線量率照射(HDR)を用いることが多いです。

III期、IV期頸癌では、放射線治療や抗癌剤治療が選択されます。上記のケースでは、すでに遠隔転移がみられており、根治治療は難しいのではないか、と考えられます。

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