TBSは15日、連続ドラマ「JIN―仁―」(毎週日曜午後9時)に出演予定だった俳優の藤田まことさん(76)が慢性閉塞性肺疾患で降板すると発表した。

藤田さんは新門辰五郎役で物語後半に登場する予定だったが、撮影前の健診で病気がわかり、治療に専念することにした。代役は中村敦夫さん(69)が務める。
([藤田まことさん]TBSの連続ドラマを降板 肺疾患で)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)


慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)とは、「肺気腫と慢性気管支炎が様々に組み合わさって生じる、非可逆性の閉塞性換気障害を特徴とする病態」を総称しています。

この概念が提唱された背景としては、1950年代に人口増加と高年齢化、大気汚染や喫煙の増加などにより、労作時息切れや喀痰の増加を特徴とする患者さんが増加したことがあります。

こうした疾患をイギリスでは「慢性気管支炎」と呼び、アメリカでは「肺気腫」と呼んでいたようです。また、気管支喘息の合併や鑑別が難しく、それぞれの用語の定義などの見直しが必要になりました。

結果、これらの疾患概念を包括する用語として、COPDが用いられるようになってきました。つまり、歴史的には慢性気管支炎と肺気腫のうち、気流制限(簡単に言えば、息が吐きづらくなる状態)を呈する症例に対する用語として生まれました。

後に、2001年4月に発表された国際ガイドラインGOLD(Global initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、「完全に可逆的ではない気流閉塞を特徴とする疾患である。この気流閉塞は通常進行性で、有害な粒子またはガスに対する異常な炎症反応と関連している」と定義され、肺気腫、慢性気管支炎といった疾患名は見当たらなくなり、COPDとして再定義されました。

こうした変遷を辿る中で、「気流閉塞を呈する慢性非特異性肺疾患」といった意味合いになり、疾患名というよりはむしろ(個々の疾患概念に分類したりせずに)、『症候群』としての扱いとなったように思われます。

COPDの最大の危険因子は、喫煙です(80〜90%がこの理由による)。喫煙開始年齢、総喫煙量、現在の喫煙状況からCOPDによる死亡率を予測することができるといわれています。

喫煙に匹敵する肺気腫の危険因子として、α1-アンチトリプシン(α1-AT)欠損症がありますが、頻度は欧米でも1%以下であり、やはり喫煙によるリスクを除いて考えることはできません。

重症度は予測値に対する1秒量の割合(%1秒量=1秒量÷予測肺活量×100)で決定されます。80%以上がステージ1(軽症)、50%以上80%未満をステージ2(中等症)、30%以上50%未満をステージ3(重症)、30%未満をステージ4(最重症)と定義します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断


慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断は、病歴、画像検査、肺機能検査が重要となります。さらに、気管支喘息、じん肺、肺結核など他の肺疾患を除外することが必要となります。

まず、病歴としては比較的高齢で喫煙歴があり、慢性的な咳・痰、進行性の息切れを伴う場合には、COPDを疑います。なおかつ、肺機能検査を行い、気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーの1秒率が70%未満であることが診断の必要条件となりますが、喘息・びまん性汎細気管支炎・心不全など他疾患を除外することも必要です。

さらに、胸部X線・胸部CT・肺拡散能検査などが鑑別診断に有用です。胸部X線写真にて、肺気腫では、肺の過膨張所見(横隔膜平低下、滴状心、胸骨後腔・心後腔の拡大と透過性亢進)と肺紋理の減少を特徴とします。慢性気管支炎では、気管支系陰影の増強と周辺肺紋理の増強が目立ちます。

肺CT検査では、特に高分解能CTが肺気腫の診断に有用です。気腫病変を反映するLAA(low attenuation area:周囲の正常肺組織との明らかな境界を伴わない低吸収領域)の大きさや広がりから肺気腫の程度を判定します。

進行症例ではブラの多発、肺野血管影の分枝欠如・偏位・狭細化などの所見も加わります。気道病変は時に気道壁の肥厚として捉えることができます。

呼吸機能検査では、スパイログラムで閉塞性障害(1秒率が70%以下)がみられます。フローボリューム曲線は下向きに凸となり、残気量・残気率は上昇します。肺拡散能力(DLco)は、気腫病変があると低下するため、主病変が肺気腫であるか気道病変であるかの鑑別に役立ちます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療


慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療としては、以下のようなものがあります。
薬物療法を中心としたさまざまな包括的管理によって、患者さんのHRQOL(Health Related QOL)や予後の改善が期待できます。COPDのステージが重症化するに従って管理手段を追加していくのが原則となります(アドオンの原則)。

当然のことながら、すべてのステージにおいて禁煙は推奨され、インフルエンザワクチン接種も勧められます(急性増悪の頻度が減少し、増悪してもその程度が軽減される)。

ステージ1では、症状のあるときのみ短時間作用型の気管支拡張薬を使用します。ステージ2からは、呼吸リハビリテーションおよび長期作用型の気管支拡張薬(抗コリン薬であるテルシガンやスピリーバなどの吸入剤、長期作用型β2刺激薬であるセレベント、ホクナリンテープ、テオフィリン薬であるテオドール、ユニフィル)を単剤もしくは多剤使用します。

ステージ3からは、増悪を繰り返す場合は吸入ステロイド薬を使用します(フルタイドディスカス、パルミコートなど)。ステージ4で呼吸不全がある場合は、酸素療法・非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:non-invasive positive pressure ventilation)・外科療法(上葉に限局した肺気腫病変を有するCOPDには、肺容量減少術LVRS:lung volume reduction surgery)などを検討します。

急性増悪とは、「病態が日内変動を超えて悪化し、日常施行していた治療内容を変更せざるを得ない状態」と定義されています。原因としては、最も多いのはウイルス・非定型病原体・細菌などによる気道感染症です。

急性増悪期の治療としては、基礎疾患・原因に応じた適切な対処を行います。外来では、まず始めに気管支拡張薬の投与を開始もしくは増量します。この場合、感染の徴候があれば抗菌薬、心不全の徴候があれば利尿薬の投与を開始します。

また、全身ステロイド薬の投与(経口の場合、40mgのプレドニゾロンを10〜14日間投与)を行います。数日間に非改善もしくはさらに悪化するようであれば入院管理を検討します。

急性増悪時に早めに非侵襲的陽圧呼吸(NIPPV)を装着することが、血液ガスの改善・院内死亡率の減少・挿管下人工呼吸への移行率の減少・入院日数の減少などに有効です。

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