夫クリス・ヘンチーとの間に6歳の娘ローワンと3歳の娘グリアがいるブルック・シールズが、産後のうつ病であることを告白した。

長女ローワンは、流産と7回の体外受精の試みで生まれてきた待望の赤ちゃん。「やっとのことで健康で美しい女の赤ちゃんを産むことができたのに、娘の顔を見ることもできなかった。抱くことも、歌ってあげることも、ほほ笑んであげることもできなかった。とにかく消えてしまいたかった。わたしは存在してはいけないんだ。赤ちゃんはわたしがいないほうがいいんだ。これからの人生、いいことなんてないから、いなくなるべきなんだ」と考えたという。

ブルックはうつ病の薬を処方されたが、自分には必要ないと飲むのをやめてしまい、これが取り返しのつかない事故につながりかけたという。「高速道路の脇の壁に全速力で車を衝突させかけたの。後部座席には赤ちゃんが乗っていて、赤ちゃんのせいで壁に激突できないことに腹が立った。わたしは壁に車を突っ込みたかったけど、無事に家に帰り着くまで友達が電話でずっと話しかけてくれたの」とブルックはピープル誌に語っている。

その後、医師に助けを求めたところ、化学的不均衡の診断を受けたという。「自分の体と脳に何が起きているのかを知ったの。こういうふうに考えてしまうのはわたしのせいではなく、わたしがどうにもコントロールできるものではなかったことを知ったの」とコメントしている。
(ブルック・シールズ、産後うつ病で自殺も考えたことを告白)

産後うつ病とは


産後うつ病は、出産後2週間から5週間以内の発症が多いといわれています。症状は、抑うつ気分、集中力・意欲の低下(「家事や育児ができない」などといった意欲低下がみられる)、不眠、食欲の低下、頭痛などの身体症状、希死念慮などがあります。

重症では、うつ病独特の妄想をもつこともあります。たとえば「母親として失格の駄目な人間だ」、「(子供のささいな症状を)大変な病気になった」などと思い込むといった症状がみられます。

妊娠期は精神障害の新たな発症や、増悪が少ないといわれています。妊娠や出産に関して病的とはいえない程度に不安になることと、つわりの時期に情緒不安定になることを除けば、妊娠期は精神状態が比較的安定している時期であるといわれています。

ただ、少ないとされる妊娠期の精神障害のなかでは、うつ病が最も多く起こりやすいです。妊娠うつ病(妊娠期に発症したうつ病)の好発時期は、つわりの時期にあたる妊娠初期4ヶ月間となっています。

一方、出産後は精神障害が起こりやすいといわれてます。特に、出産直後の産褥期(産後約6〜8週まで)に多いです。産褥期の精神障害の発症には、産後の女性ホルモンの変化に加え、脳内モノアミン、甲状腺ホルモンなども関与しています。その他、性格や環境面の要因として、初産婦、神経質・未熟な性格傾向、夫のサポートの乏しさなどがあげられます

産後うつ病の治療


産後うつ病の治療としては、以下のようなものがあります。
うつ病とは、いわばエネルギーが枯渇し、疲弊した状態であるといわれています。そのため消耗を避け、エネルギーの蓄積・回復を図るのが治療の基本となります。

休養は重要であり、安静や睡眠の確保を行います。焦燥感が強い場合は、鎮静作用の強い抗精神病薬であるレボメプロマジンなどを適宜併用して、安静・睡眠確保を図ります。

産後うつ病に対しても、薬物療法としてはうつ状態には抗うつ薬を用い、不安の強い場合は抗不安薬を併用します。薬物療法としては、抗うつ薬により抑うつの改善を図ります。また、精神療法として病気としてのうつ状態の説明、予後の保証、治療の必要性、経過の見通し、治療内容・薬物の説明を繰り返しわかりやすく伝えることが重要です。

抗うつ薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるマレイン酸フルボキサミン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である塩酸ミルナシプラン、モノアミン再取り込み阻害薬である塩酸アミトリプチリンなどがあります。

抗うつ薬の服用が行われ、臨床的にその効果が実証されていると考えられています。ただし抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1〜3週間の継続的服用が必要です。

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・眠気などの副作用が比較的多いです。これは、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っているため、こうした副作用が現れると考えられます。

さらに、三環系抗うつ薬の場合、大量服用時にQT延長や急激な徐脈などの致死的な不整脈をきたす可能性があります。四環系抗うつ薬では、抗コリン作用や心毒性が比較的弱いといわれています。

近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI等は副作用は比較的少ないとされています。ですが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされています。また、不安・焦燥が強い場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多いです。

3〜6ヶ月で軽快することが多いとはいわれていますが、カウンセリングのような精神的な支えや、場合によっては薬物治療が必要になります。

精神症状をもちながら育児・家事を遂行するのは大変な負担であり、病状悪化にもつながる可能性があります。そのため、家族、特に夫が育児や家事に協力し患者をサポートすることは非常に重要です。

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