Microsoftの共同創設者Paul Allen氏の会社であるVulcanの従業員に米国時間11月16日に送信されたメモによると、Allen氏は癌と診断されたという。

Vulcanの最高経営責任者(CEO)でPaul Allen氏の妹でもあるJody Allen氏によれば、ホジキン病を克服したAllen氏は、非ホジキンリンパ腫と診断されたという。

Jody Allen氏のメモの内容は以下のとおりだ。
Vulcanと関連会社の従業員の皆様へ
Paulが先日、非ホジキンリンパ腫と診断されたことをお知らせしたいと思います。

彼は11月上旬にこの診断を受け、それから化学療法を始めました。医師によると、彼が患っているのは、比較的よく見られる種類のリンパ腫である、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫だそうです。

これは、Paulと家族にとって、つらい知らせです。しかし、Paulの経歴を知る方々はご存知のように、彼は25年ほど前にホジキン病を克服しており、彼は今回の病気にも打ち勝てると前向きに考えています。

Paul氏の体調は良好で、これまでと変わらず陽気に振る舞っています。彼は仕事を継続しており、Vulcanにおける自身の役割を変えることは考えていません。ただし、最も大事なのは彼の健康であり、われわれは何もそれを妨げることがないように配慮していきます。

皆様には、Paul氏のプライバシーを尊重して、オフィス以外でこの件に関する話をしないよう、われわれからお願いします。

何か質問がある場合は、ECメンバーにお尋ねください。

これを読んだ皆様がPaulの身を案じてくれることをわたしは知っています。そのことに前もって感謝します。

Jody
(マイクロソフト共同創設者のポール・アレン氏、癌と診断される)

非ホジキンリンパ腫とは


悪性リンパ腫は、リンパ節や全身のリンパ組織(胸腺、脾臓、扁桃腺、リンパ管など)に存在する、リンパ球系細胞の悪性腫瘍です(腫瘍の起源や、腫瘍化の過程も単一ではありません)。

若年者にもみられますが、30歳以上では年齢とともに増加します。男女比は2:1で男性に多いです。日本の悪性リンパ腫の発生率は10万人当たり約5人であり、欧米の約12人に比べて低いです(この理由としては、節性リンパ腫であるHodgkin病と濾胞性リンパ腫の発生率が低いためです。節外性リンパ腫の占める割合が相対的に高くなっています)。

病理組織学的所見から、Hodgkin(ホジキン)病と非Hodgkinリンパ腫(NHL)とに大別されます。

非ホジキンリンパ腫の大多数は、Bリンパ球あるいはTリンパ球の腫瘍であることが判明しています。そこで、非ホジキンリンパ腫は、形態学的特徴(病理学的分類)、細胞系質的特徴(B細胞性、T細胞性、NK細胞性)、染色体・遺伝子情報などをもとに分類されます。また、発症してからの病気の進行速度によっても分けることができます(年単位で進行する低悪性度、月単位で進行する中悪性度、週単位で進行する高悪性度など)。

一般的に低悪性度のものには、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫などが該当し、中悪性度のものにはびまん性大細胞性B細胞性リンパ腫や未分化大細胞リンパ腫など、高悪性度のものにはリンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫などが該当します。

悪性リンパ腫の診断


症状としては、首、腋の下、足のつけ根などのリンパ節の多い部位に無痛性のリンパ節腫脹がみられます(無痛性のリンパ節腫脹を初発症状として医師のもとを訪れることが多い)。Hodgkin病のリンパ節腫脹は、頸部、腋窩、鼠径部の順に多いです。非Hodgkinリンパ腫では、これらの表在リンパ節以外にも、眼瞼、鼻腔、扁桃、皮膚、甲状腺、乳房、睾丸、皮下軟部組織などに腫瘤をつくることがあります。

発熱、盗汗(ひどい寝汗)、体重減少がみられることがあり、この3つは病期分類でB症状と呼ばれ、重要視されています。全身掻痒感などがみられることもあります。場合によっては、腫瘍による圧迫や浸潤による症状、部位により浮腫、嚥下障害、呼吸困難、食欲不振などがみられることもあります。

診断には、リンパ節(もしくは節外病変)の生検が必須です(穿刺細胞診は有用でない)。こうした病理組織像に加え、フローサイトメトリー法や免疫組織染色による細胞表面形質解析や染色体分析も行い、遺伝子検査を行うこともあります。

身体診察としては、全身のリンパ節の触診が行われます。腫大したリンパ節は無痛性で、弾性硬(いわゆるゴム様)であり、表面平滑な状態です。通常、癒着はなく可動性がありますが、腫瘍細胞がリンパ節の被膜を越えると周囲と癒着します。また、急速に増大する場合は、被膜の伸展痛を生じることがあります。

ほかにも、悪性リンパ腫の広がりをみるため、Waldeyer輪(喉の奥に扁桃腺が輪状に並んでいる部分)の視診、呼吸音の聴診、肝脾腫、腹部腫瘤、胸・腹水の有無などをみたり、神経学的異常、たとえばHorner(ホルネル)症候群、脳神経や脊髄の障害、髄膜浸潤の所見などの有無を調べることも重要です。

血液検査では、特異的な所見はないです。ただ、ホジキン病では、リンパ球減少や好酸球増加がみられることがあります。非ホジキンリンパ腫で白血化すれば、リンパ腫細胞が認められます。血清可溶性インターロイキン2レセプター(sIL-2R)濃度やLDH値、症例によってはCRPが病勢を反映するといわれています。

病期(ステージ)分類は、身体診察やX線検査、エコー検査、CT検査、骨髄穿刺(生検)に加え、必要に応じてガリウムシンチグラフィー、髄液検査などの所見をもとに決定します。ステージは以下の通りです。
・I期:単一リンパ節領域または限局した単一節外病変
・II期:横隔膜の片側のみに病変
・III期:横隔膜の上下に及ぶ病変
・IV期:リンパ組織以外の臓器にびまん性侵襲がある

B症状があればBを、なければAを付記します。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
治療は、上記のステージにより、治療方針が決定されます。標準的な治療法の選択肢としては、
1)放射線療法
3)化学療法(抗がん剤)
3)生物学的製剤:抗CD20抗体(成熟B細胞の性格を示す悪性リンパ腫に効果的)
4)経過観察
5)造血幹細胞移植:自家移植、同種移植
などがあります。標準療法としては、化学療法や放射線療法が中心です。

非ホジキンリンパ腫では、低悪性度B細胞リンパ腫の場合、限局期であればは30〜40グレイの局所放射線療法を選択します。

進行期の場合、CHOP(シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)療法が標準となっています。

また、最近ではCD20陽性の成熟B細胞の性格を示す悪性リンパ腫には、生物学的製剤であるリツキサンが用いられることもあります(海外では再発・難治性の低悪性度群リンパ腫に効果が認められている)。

リツキサンは、1本の薬価が最高で約25万円(保険適用前)と非常に高価な薬剤でありますが、進行期濾胞性リンパ腫では、CHOP療法とRituximab(リツキサンのことで、マウス-ヒトキメラ型抗CD20モノクローナル抗体)の併用療法が標準療法となる可能性もあります。

利付きさんは、1回375mg/m2点滴静注、25mg/時で点滴静注を開始し、輸注関連毒性(悪寒、発熱、発疹、そう痒感など)に留意しながら、1時間ごとに100mg/時、200mg/時と段階的に点滴速度を上げます。CHOP療法前に投与します。

リツキサンでは、infusion reactionとよばれる合併症に注意する必要があります。発熱、寒気、頭痛、ふらつき、息苦しいなどの症状を自覚したときは直ちに知らせる必要があります。特に初回投与時や注入速度を上げた直後から30分以内に出現しやすいです。

また、CHOP療法では、吐き気や嘔吐、不眠、便秘、口渇、口内炎、動悸、手足のしびれなどの副作用に注意する必要があります。治療当日は尿が赤くなることがあります。

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