元漫才師でお笑いタレントの亀山房代さんが23日午前2時57分、心室細動のため神奈川県内の病院で死去した。42歳。三重県出身。所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーによると、すでに近親者による密葬を済ませ、後日「お別れ会」を開くという。

亀山さんは1986年、吉本総合芸術学院(NSC)の5期生を経て吉本興業入り。当初はピン芸人として活動していたが、89年にザ・ぼんちを解散した里見まさとの誘いで、漫才コンビ「里見まさと・亀山房代」を結成。キャリアウーマンばりに語る亀山さんにまさとがツッコミを入れる芸風で、95年に上方漫才大賞奨励賞、97年に上方お笑い大賞金賞、98年に上方漫才大賞に輝いた。
(吉本の人気コメディアン、亀山房代さん急死 42歳)

心室細動とは


心室細動(VF:ventricular fibrillation)は、致死的不整脈の一つで、心臓性突然死の主な直接原因となります。心室の各部分に、無秩序な電気的興奮が起こります。そのため、心電図上で特徴的な、不規則な波形を示します(QRS波とT波は識別不能)。

心臓は、全身に血液を送り出すポンプの働きをしており、ポンプを動かしているのが電気刺激です。心室細動では、この電気刺激が上手く伝われない結果、心臓からの血液が上手く拍出することができないため、脳血流量が途絶してしまいます。

脳血流量が途絶すると、3〜5秒間でめまい、5〜15秒間で意識消失が出現し、3〜4分持続すると、脳の不可逆的変化が生じ、死に至ってしまうといわれています。

そのため、心室細動と考えられる患者さんが発見されたら、直ちに救急処置を施行しなければなりません。心肺蘇生を行ったり、除細動、後療法の3段階での処置が必要です。

心室細動は、心電図上QRS波とT波が識別されず150〜300/分の不規則なbizzareな心室波を示し、大きさも形も変動します。その波形からcoarseVF、早いfineVFおよび緩徐な変形をするVFに分けられます。

心筋梗塞(特に急性期)や弁膜症、心筋症、高血圧性心疾患などの重症な器質的心疾患を有する場合が多いです。明らかな基礎心疾患が認められないことは少ないですが、日本では欧米に比べ、その頻度は高いと考えられています。

その特発性心室細動で注目されているのが先天性QT延長症候群とBrugada(ブルガダ)症候群です。いずれも原因遺伝子が解明され、イオンチャネル病という新しい概念が提唱されています。

QT延長症候群long QT syndromeはtorsades de pointesから心室細動へ移行します。Brugada症侯群は洞調律時に右側胸部誘導(V1-3)で右脚ブロック型とST上昇を伴う特発性心室細動です。

Brugada症侯群は、1992年Brugadaらの報告以来、日本および東南アジアではその頻度が高く、東南アジアの若年男性の夜間突然死症候群もBrugada症候群と考えられています。約40%が突然死の家族歴を有し、第3番染色体にあるNaチャネルの機能に関連するSCN5Aの遺伝子の変異が明らかにされています。

心室細動の治療


心室細動の治療としては、以下のようなものがあります。
心室細動(VF)の治療は、心肺蘇生、除細動および後療法と3段階に分けられます。

まずは直ちに除細動を行います。除細動を行った後は、直ちに胸骨圧迫心臓マッサージを再開し、以後、心肺蘇生を継続しながら波形の診断を行っていきます。除細動抵抗性のVF/VTの場合は、抗不整脈薬アドレナリンの投与を考慮しますが、心臓マッサージが優先されます。

こうした場面で役に立つのがAEDです。自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)とは、心臓の心室細動の際に電気ショックを与え(電気的除細動)、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器です。

心電図波形の自動解析機能を有している除細動器で、除細動の要否を自動的に判定し、「除細動が必要」あるいは「除細動の必要なし」のアドバイスを音声と液晶ディスプレイにより知らせてくれ、次に必要な手順も指示してくれます。使用者は、指示に従って除細動器のスイッチボタンを押します。

ちなみに、"正常な拍動をしている""心臓・完全に停止している""心房細動を起こしている"心臓に対しては、AEDの診断機能が「除細動の必要なし」の診断を下し、通電は行われません。

心肺停止の状態が危険なのは、脳に酸素がいかなくなること。脳細胞は酸欠に弱く、5分程度で細胞の壊死が始まります。それを防ぐには、ポンプの役割を果たせなくなった心臓を、外部から押し、脳への血流を途絶えさせないこと。つまり、胸骨圧迫は、脳へ血液を送る作業なのです。

心臓マッサージとは、拍動が停止した心臓を体外もしくは直接圧迫することにより血液を駆出し、脳、その他の臓器の血液循環を維持する方法です。心拍出量は、正常の1/4〜1/3得られるといわれています。心肺停止患者あるいは、頸動脈にて脈を触知しない傷病者が対象となります。

心室細動の停止後は、その再発予防としてリドカインやプロカインアミドなどの抗不整脈薬を点滴静注を行います。また心室細動により惹起された病態(アシドーシスなど)の改善、誘発または増悪因子(心不全など)の除去と基礎心疾患の改善をはかることが必要となります。

VFの予防として抗不整脈薬は心室細動のtriggerとなるPVC(特にLown分類のIII、IVa、IVbおよびV)や心室頻拍、特殊なものとして偽性心室頻拍などの抑制とVF自体の抑制のために用いられています。

ただ、多くの抗不整脈薬はPVCの抑制効果がありますが、心室細動を特異的に予防する抗細動作用を有する薬剤は認められておりません。その中で、III群に属するアミオダロンは心室細動による突然死の最も強力な予防薬として位置づけられています。

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