コーラスグループ「デュークエイセス」の元メンバーの飯野知彦さんが、11月20日に胃がんのため死去していたことが1日、分かった。56歳。葬儀は近親者のみで行った。喪主は妻、裕子さん。

平成3年からグループでトップテナーを担当。今年7月、病気療養のため、トップテナーは大須賀ひでき氏に交代になった。
(デュークエイセス元メンバーの飯野知彦さんが死去)

胃癌とは


胃癌の発生部位は胃粘膜上皮の細胞分裂をする場所、すなわち腺頸部の増殖帯細胞から発生すると考えられています(組織型でいえば、胃癌はほとんどが腺癌)。

一方、胃癌がどのような背景粘膜のもとに発生するかを切除胃標本や臨床的な経過観察例からみると、萎縮性胃炎を呈する胃粘膜、特に分化型腺癌は腸上皮化生を伴う胃粘膜に高頻度に発生しているといわれています。

胃癌の発生する部位を考えると、水平方向では、胃の大弯、小弯をそれぞれ3等分し、結んだ線により上部(C領域)、中部(M領域)、下部(A領域)に分けられ、A領域とM領域に全体の8割を占めます。垂直方向では、癌の深達度よりその浸潤が粘膜内または粘膜下層までにとどまる早期胃癌、粘膜下層を越える進行胃癌に分けられます。

胃癌は、進行すると分化型では血行性、未分化型ではリンパ行性、播種性転移をきたすことが多いです。血行性では肝が多く、肺、骨にもみられます。特別な名称のついたものとして左鎖骨上窩リンパ節転移をVirchow(ウィルヒョウ)転移、Douglas(ダグラス)窩への直接播種をSchnitzler(シュニッツラー)転移、卵巣への脈管行性ないしは、播種性転移をKrukenberg(クルーケンベルグ)腫瘍といいます。また、早期胃癌の転移率は、上皮内または粘膜内癌で数%、粘膜下層に及ぶ癌で20%程度であり、ほとんどはリンパ節転位です。

胃癌の診断


胃癌は、自覚症状による胃癌の早期発見は難しいです(胃癌に特異的な症候はない)。症候の出現は病巣の型、深達度、大きさ、発生部位、転移の有無によって異なります。

胃癌は、その深部浸潤の程度(深達度)から早期癌と進行癌とに分けられます。早期胃癌は、癌の浸潤が粘膜層または粘膜下層までにとどまるもので、リンパ節転移の有無は問いません。

一方、進行胃癌は癌の浸潤が固有筋層より深く浸潤した病変を指します。なお、癌の浸潤が粘膜層内にとどまるものをM癌、粘膜下層に達するものをSM癌、固有筋層に達するものをMP癌、漿膜下層に達するものをSS癌、漿膜に達するもので他臓器に直接浸潤がみられるものをSI癌、ないものをSE癌と呼びます。

ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこないことが多いからと言われています。そのため、放置されてしまったり、逆に内視鏡検査などで早期発見されるケースもあります。

症状としては、腹痛や腹部〜胸部の不快感、吐き気や嘔吐を伴ったり、食欲減退、食事後の胃部膨満感や急激な体重減少などが起こってきます。他にも、下血や黒色便(血液中のヘモグロビンが胃酸によって酸化されて黒くなる)がみられることもあります(これらの症状は消化性潰瘍と同様で、症状だけでは両者の鑑別は困難)。

局所症状として潰瘍を伴っていれば、心窩部痛や吐血・下血を生じることもあり、噴門や幽門に通過障害が生じれば、嚥下困難、嘔吐、上腹部膨満感などが生じてきます。

胃癌の転移には、血行性転移、リンパ行性転移、腹膜播種があります。胃壁内での深達度が進むほど転移率は高くなり、血行性転移では肝や肺、さらに骨、脳、皮膚、腎などへ転移します。リンパ行性転移は所属リンパ節から始まり、遠隔リンパ節へ転移をきたしていきます。腹膜播種は、漿膜を越えて胃壁を浸潤した癌細胞が、腹膜に播種して癌性腹膜炎を起こして腹水を生じます。

肝転移すると肝腫大、黄疸などが起こってきます。腹膜に転移すると腹水、後腹膜に転移すると強い背部痛を認めます。その他、左鎖骨上窩リンパ節転移(Virchow転移)、Douglas窩への転移(Schnitzler転移)、卵巣転移(Krukenberg腫瘍)などがあります。

高度な進行胃癌となると、体重減少、食思不振、貧血、腹部腫瘤触知、嚥下困難などの所見を認めることがあります。末期では、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併することが多くなります。

胃癌の検査では、X線検査、内視鏡検査、生検が診断に重要となっています。この中で内視鏡検査はスクリーニング検査として多くの施設で現在行われており、X線検査は病変の広がりを客観的にとらえるための精密検査として行われていることが多いです。

このほか、補助的な検査として超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、CT、臨床血液検査などが行われています。腹部超音波検査・CTは、大きな腫瘤を形成する例では病変を描出することができます。しかし、一般には癌の転移、周囲臓器への浸潤、リンパ節転移の診断に用いられます。

血液検査にて、萎縮性胃炎の程度を示す指標であるペプシノーゲンI/II比を用いて胃癌のスクリーニングとして用いられることもあります。腫瘍マーカーとしてCEA、CA19-9などの測定が行われますが、胃癌に特異的ではなく、早期のスクリーニングとしては十分ではありません。

胃癌の確定診断は、内視鏡検査で胃生検を行い、病理組織学的診断を行います。
胃生検で癌を証明するためには、病巣の適切な部位からの組織採取が重要となります。

胃癌の治療


胃癌の治療としては、以下のようなものがあります。
胃癌の治療方針は、「胃癌治療ガイドライン」などにより、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、病期、全身状態、あるいは患者の希望など様々な要素を勘案し決定されます。

深達度がM(粘膜内)で、N0(リンパ節転移なし)、分化型、2cm以下、潰瘍形成なしであれば、内視鏡的粘膜切除術を行います。StageIIもしくはIIIAなら、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術(これが標準的な手術法であり、定型手術と呼ばれます)を行います。StageIV(遠隔転移を伴う)なら、姑息的手術を行ったり、化学療法などを行います。

リンパ節転移の可能性がほとんどないとされる2 cm以下の粘膜癌で、組織型は分化型(pap,tub1、tub2)、肉眼型は問わないが陥凹型では癌巣内に潰瘍を有しないと診断される例(リンパ節転移の可能性がほとんどない例)に対しては、内視鏡治療が用いられることもあります。内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)といいます。

切除標本の病理学的検索により、前述の適応に該当し、垂直断端(VM)(−)および水平断端(LM)の1mm以内に癌浸潤がない例をEAと判定し、経過観察を行います。

また、粘膜筋板下端から500μm未満の粘膜下層内へ浸潤した例(SM1)はリンパ節転移陽性率が粘膜内癌と同程度とされるため、ly(0)、v(0)であれば経過観察を行います。

経過観察は最初の1年は3回、その後は1年ごとに内視鏡検査を行っていきます。LM(+)の例にはEMRが再度可能な例にはEMRを行いますが、原則として胃切除を行います。

胃の切除は、部位によって胃全摘術、幽門側胃切除術(十二指腸側2/3程度の胃切除)、噴門側胃切除術(食道側1/2程度の胃切除)などに分けられます。

切除が終わったら、食物の通り道をつなぐために消化管再建が行われます。様々な再建法があり、個々の患者の状態に応じて選択されますが、代表的なものはBillroth I法(胃-十二指腸吻合)、Billroth II法(胃-空腸吻合)、Roux en Y法(食道or胃-空腸吻合)、空腸間置法(空腸で置換)などがあります。

現在では外科切除に加えて、内視鏡的治療や腹腔鏡下手術が行われるようになっています。腹腔鏡下手術とは、腹壁上に0.5〜1cmの小孔を3〜4か所あけて、光学視管(スコープ)を挿入して開腹せずに行う手術です。術野を得るために腹腔内に炭酸ガスを注入する方法(気腹法)と、鋼線や専用の器具で腹壁を吊り上げる方法(吊り上げ法)があります。光学視管にCCD電子内視鏡を装着し、ビデオモニターを見ながら手術を行います。

開腹手術に比べ、手術創が小さく、術後疼痛が少ない、入院期間が短い、社会復帰に要する時間が短いなど多くのメリットはありますが、安全で円滑な手術を行うためには開腹手術とは異なった技術を要します。

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