以下は、ザ!世界仰天ニュースにて扱われていた内容です。

2008年、年が明けてまもなく、そのコンビは初めて本業の漫才でテレビ出演を果たした。今をときめく人気コンビ“オードリー"である。その年の暮れのM-1グランプリでは堂々の優勝争いを見せた彼らだが、今の華やかさとは裏腹に知られざる驚きの過去があった。

今から6年前、コンビ名が“オードリー"でなく“ナイスミドル"であった頃。2人がお笑いの道を志して、既に幾年もの時が過ぎていた。今とは違い、当時若林がボケで春日がツッコミというスタイルで活動をしていたのだが、評価されず売れない日々が続いていた…。今も昔もネタ作り担当の若林は、悩むことも多かった。一方の春日は常に楽観的。若林とは対照的な気質に見えた。

そんなある日のこと。ライブで出番を控えていた若林に当時の彼女から今夜会いたいとの連絡が入った。若林にとって、唯一自分を応援してくれる特別な存在であった彼女。いつも以上に気合いが入りステージに上がった。そして、ライブは無事終了。彼女の元へ向かったのだが、待ち受けていたのは思いもよらぬ別れ話であった。

彼女を失いたくない一心で2時間以上も説得し続けたが、結局フラれてしまった。そして帰り道、心労が原因なのか突如若林は呼吸困難に陥ってしまった。時刻は午前3時。命を脅かすような息苦しさと耳鳴りに苦しむ若林は、助けを求め相方の春日に電話。すると驚いたことに春日は「それは過呼吸だ」と素早く判別し“ペーパーバッグ法"という対処法を適切に若林に伝えた。

春日の助けで若林の息苦しい症状は治まったのだが、一体なぜ春日は適切に判断できたのか?その答えは漫画だった。以前春日は「スーパードクターK」という医療漫画を読んでいて、その内容をしっかり覚えていたのだった。

過換気症候群とは


過換気症候群とは、心因以外に明らかな原因がなく呼吸困難を訴え、発作的に浅く速い努力性の呼吸運動を行うことで過換気となり、多彩な症状を呈する呼吸器心身症のことを言います。

簡単に言ってしまえば、不安感や精神的なショックなどのストレス、それに疲労など困難な状況に直面したとき、呼吸が早くなってしまうことを指します。

呼吸器系だけでなく、循環器系、神経系、消化器系および精神に多彩な症状を生じる状態になることもあります。若林さんのケースでは、まずひきつけのような呼吸困難感、めまい、意識が遠のく感じがみられていました。

10代後半から20代に多くみられ、女性が男性の2倍の発症率を有しているといわれていますが、最近では年齢を問わず、男性にも多くみられます。

典型的な過換気発作は一度目撃すれば忘れないほど特徴的ですが、そのメカニズムについては不明な点が多く、また一定の診断基準もない状況です。パニック障害との関連が示唆されていますが、現在では過換気はパニック発作の原因ではなく、1つの結果に過ぎないことが指摘されています。

最近では、血液ガス変動に対する過敏な反応条件として交感神経(β受容体)の機能亢進が重要であり、過換気症候群を発症させるメカニズムの1つと考えられています。

典型的な症状や所見としては、過換気による呼吸性アルカローシスが基盤で、これにより脳血管や末梢血管の収縮、あるいは血清カルシウムイオンの低下により症状が引き起こされ、これに心理的要因が重なりさまざまな症状を呈します。

具体的な症状としては、次のようなものがあります。
a)呼吸器症状:呼吸困難感、空気飢餓感(吸っても吸っても空気が足りないと感じる)、頻呼吸
b)循環器症状:心悸亢進、胸部絞扼感・圧迫感、胸痛
c)神経症状:四肢末端と顔面(特に口唇周囲)のしびれ感、四肢硬直、テタニー様けいれん発作、意識が遠のく感じ、めまい感、意識消失
d)消化器症状:腹痛、悪心
e)精神症状:「死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」などの訴え
このような症状がみられ、原因となる器質的疾患がないかどうか常に念頭において、診断や治療をすすめていきます。

過換気症候群の治療


過換気症候群の治療としては、以下のようなものがあります。
発作時には、患者さんは混乱しているので、強く説得、(死ぬことはない、などと)保証し、ゆっくり呼吸をするように指導することが重要です。

「症状が強く不安であることはよくわかります。しかし、特別な病気ではないので、慌てなければ短時間で症状は治まりますよ」、「吸った所で1回息を止め、可能な限りゆっくりと吐き出しましょう」、「力を抜いて自然に吸うようにしましょう」などといった言葉をかけることも重要です。

また、番組のVTRにもありましたが、紙袋やビニール袋を使用したペーパーバッグ呼吸法(Paper bag rebreathing法)は、緊急を要するようなケースなどでは行われることもあります。

ただ、炭酸ガスの多い呼気を吸うことにより炭酸ガス分圧の上昇を目的とした、このペーパーバッグ呼吸法は、パニック発作が誘発されたり、過換気後の無呼吸を含む低換気状態を生じた際に危険であるともいわれています。そのため、以前ほど推奨されなくなってきており、補助として用いるべきといわれています。

現在では、抗不安療法がこの疾患の治療の本質となっています。薬物療法としては、抗不安薬を使用して発作の鎮静化をはかります。ジアゼパム(ホリゾン、セルシン)の静注は、呼吸抑制を生じる危険性も考えられ、注意が必要です(SpO2モニターの装着などを行った上で、治療を行っていきます)。

軽症の場合では、ワイパックスなどの内服を行います。内服が難しい場合などでは、ジアゼパムの静注や筋注を行います。

過換気症候群には、「また発作に襲われるのではないか」という予期不安を伴うことも多く、再発例も多いです。そのため、症状が消失した後、予後は良好であることを十分に納得・理解していただくことが重要です。その上で、発作の予防のため精神科、心療内科の受診をお勧めします。

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