本日18日発売のスポーツ紙「東京スポーツ」には、重病で余命3ヶ月という噂が流れていた渦中のアントニオ猪木が登場、その真相を語った。

そもそも、プロレスファン&関係者の間では、「猪木が極秘で入院している」という噂があった。事の発端は、11月に入ると、猪木は公式イベントを何度もキャンセルし、同月3日の猪木ゲノムJCBホール大会には姿を見せ、リング上からマイクパフォーマンスを行ったものの、もはや一人では歩くこともままならない様子だったことにある。

だが、公式発表は、「腰椎すべり症」とされ、約3週間入院していたことを明かしたが、関係者の不安が消えることはなかった。それでも、同紙の取材に対して、「重病説、勝手に流せよ。猪木と馬場が天国で対戦か」と豪快に笑い飛ばした猪木。「腰椎すべり症」では、全身に痺れがあるものの、二度に渡る手術を経て、驚異的な体力を自ら再確認したばかりか、「筋肉の質が30代後半、骨も30代から40代の骨の硬さと言われた」と語り、“燃える闘魂”健在をアピールした。
(【Sports Watch】アントニオ猪木に重病説、余命3ヶ月の噂とは?)

腰椎すべり症とは


脊椎すべり症とは、頭側の椎体が尾側の椎体に対して前方(腹側)、後方(背側)、あるいは側方(外側)へ転位している病態を指します。臨床的には、下位腰椎に生じる前方すべりが圧倒的に多く、こちらを腰椎すべり症といいます。

腰痛で受診した患者の約3%が、すべり症との報告もあり、比較的頻度の高い疾患です。女性に多く、40歳以前にはめったにみられませんが、年齢とともにその頻度は増加してきます。好発部位は第4腰椎であり、第3腰椎、第5腰椎がそれに次ぎます。

原因別に
1)先天性(10歳代女児の第5腰椎に好発、高度のすべりと進行性を特徴とする)
2)分離性(関節突起間部の分離を基盤とし、第5腰椎に好発)
3)変性性(分離なしに、椎間板の変性と椎間関節の水平化を基盤に中年女性の第4/5腰椎間に好発)
に大別されます。腰椎分離すべり症は、腰椎分離症の不安定性が増大して分離部が開き、椎間板の傾斜に向かって椎体が前方にすべった状態を指します。若年期に疲労骨折から発生した分離症に、椎間板の変性に伴いすべりが加わったものがほとんどです。分離症の約20%がすべり症に移行し、第4,5腰椎に好発します。すべり症への移行はL4で多く、L5では少ないです。L5では横突起幅の小さいものがすべる可能性が高いです。

若いときから軽い腰痛を繰り返していることが多く、40〜50歳代に手術の適応になるものが多いです。腰椎不安定性による腰痛が主体ですが、分離部の組織増生や、すべりの進行によって脊柱管の狭窄を来し、下肢神経症状を伴うようになります。

症状としては、腰痛・殿部痛がみられ、運動時痛や同一姿勢で増強するようになります。大腿部痛や下肢痛の訴えが多いですが、下肢のしびれや間欠性跛行もみられます。下肢神経症状の特徴は、分離部での神経根刺激症状と考えられる下腿の疼痛やしびれ感が主体で、明白な知覚鈍麻や筋力低下は稀です。

一方、腰椎変性すべり症とは、関節突起間部の分離を伴わないものを指します(偽性すべり症また無分離すべり症と呼ばれていたこともあります)。

原因としては、椎間関節や椎間板の退行変性が考えられ、椎間板ヘルニアに対する椎間板切除術後や腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓切除術後に生じる場合もあります。

臨床症状としては、腰椎不安定性、椎間関節や椎間板変性などからの腰痛のほか、脊柱管狭窄による神経根症状や馬尾症状を呈します。すべりによって生じた腰部脊柱管狭窄が本症の病態であり、腰椎の伸展で狭窄は増強し、神経への圧迫力が増加するため、症状が誘発されます。

腰椎すべり症の治療


腰椎すべり症の治療としては、以下のようなものがあります。
まずは、保存療法を試みます。無理をしないようにすることが第一であり、症状の出現を予防するには腰椎の姿勢が重要です。痛みに対しては非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、しびれに対してはビタミンB12、抗不安剤、プロスタグランジンE1製剤などを組み合わせて処方します。装具療法は、動作時の腰痛を訴える患者に対してのみ行い、通常、長期には装着しません。

また、痛みを止めるため、椎間関節ブロック、硬膜外(仙骨裂孔)ブロック、神経根ブロックがあります。いずれのブロックも、腰痛および下肢痛に効果は期待できると考えられます。ブロックにて、症状が軽減していく場合には回数を重ねてもよいですが、短期間の効果しかないといわれており、ブロック前の状態に戻る場合は頻回に行わないほうが無難でしょう。

保存治療によっても効果がない場合には、手術治療を考慮します。馬尾症状は保存治療が無効のことが多く、緩徐に進行性です。特に、変性すべり症は腰部脊柱管狭窄を生じる原因疾患の中でも馬尾症状を呈する場合が多く、このため手術治療が必要となることが多いです。

椎弓切除のみで成績は良好との報告もありますが、除圧のみでは腰痛や下肢痛の再発が認められることもあります。そのため、固定を必要とすることもあります。

3週間の入院ということで、かなり症状的にも強かったのではないか、と考えられます。現役時代の闘いなどを考えると、是非ともご自愛していただきたいと思われます。

【関連記事】
腰椎すべり症と診断されていた−バッファロー吾郎・木村さん

腰痛患者を救う認知行動療法