SF映画やホラー映画に偉大な足跡を残した映画監督・脚本家のダン・オバノンさんが炎症性腸疾患クローン病のため、ロサンゼルス郊外の病院で12月17日に死去した。63歳だった。

オバノンさんは米ミズーリ州生まれ。南カリフォルニア大学(USC)映画学科で映画を学び、同級生ジョン・カーペンター監督による短編映画「ダーク・スター」、さらに74年に同監督による長編リメイク版でも脚本・特殊効果スーパーバイザー・プロダクションデザインを担当した。
(「エイリアン」「トータル・リコール」の脚本家ダン・オバノン死去)

クローン病とは


クローン病(Crohn disease)とは、原因不明で、主として若い成人にみられ、線維化や潰瘍を伴う肉芽腫炎症性病変からなり、消化管のどの部位からも起こりえます。臨床像は病変の部位や範囲によります。

Crohnら(1932)によって報告された、終末回腸を好発部位とする慢性の炎症性疾患とされていましたが、その後、口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位が侵されることが明らかにされました。病変の主座は小腸、大腸のいずれか、またはその両者に存在するものがほとんどとなっています。

主な症状は腹痛、下痢、発熱、体重減少です。Crohn病の特徴は、これらの症状が慢性に経過し、徐々に進行する点です。一般に、Crohn病の腹痛は下腹部痛で軽いです。下痢は、小腸に広範な病変がある場合には高度であり、吸収障害に伴う体重減少を生じます。

Crohn病では便潜血反応は陽性となりますが、潰瘍性大腸炎と比較して肉眼的血便は少ないです。肛門病変は、大腸病変のある症例に高頻度にみられ、主な病変は裂肛、肛門潰瘍、痔瘻、肛門周囲膿瘍です。

また、消化管外(腹腔内、皮膚、肝臓など)に病変が波及することも多く、口内アフタ、結節性紅斑、虹彩炎、腸性関節症、強直性脊椎炎、壊死性膿皮症、静脈血栓症、肺線維症、心筋炎など全身性合併症を併発することがあります。

分類としては、次のようなものがあります。
部位による分類
・小腸Crohn(クローン)病
・小腸・大腸Crohn病
・大腸Crohn病
肉眼分類
・狭窄型
・潰瘍形成型
・cobblestone(敷石)型

統計的には北欧の白人に多く、日本では非常に稀といわれていましたが、日本においても欧米でもCrohn病は増加傾向にあります。全国疫学調査では、人口10万人あたりの有病率は5.85人、罹患率は0.51人、死亡率は0.024%と推定されています。10〜40歳代に好発し、初発年齢は20歳代が最も多いです。男女差はありません。

クローン病の診断


クローン病の診断としては、以下のように行います。
Crohn病の診断基準としては、
診断の基準
I.主要所見
1)縦走潰瘍
2)敷石像
3)非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
II.副所見
4)縦列する不整形潰瘍又はアフタ
5)上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍又はアフタ
確診例1 主要所見の?又は?を有するもの。※1,2
確診例2 主要所見の?と副所見のいずれか1 つを有するもの。
疑診例1 副所見のいずれかを有するもの。※3
疑診例2 主要所見の?のみを有するもの。※4
疑診例3 主要所見の?又は?を有するが虚血性大腸炎,潰瘍性大腸炎と鑑別ができな
いもの。
※1 1)縦走潰瘍のみの場合,虚血性大腸炎や潰瘍性大腸炎を除外することが必要であ
る。
※2 2)敷石像のみの場合,虚血性大腸炎を除外することが必要である。
※3 副所見5)のみで疑診とした場合は同所見が3 カ月恒存することが必要である。
※4 腸結核などの肉芽腫などを有する炎症性疾患を除外することが必要である。
このようになっています。検査としては、X線検査や内視鏡検査などを行います。

X線検査では、二重造影像(大腸および小腸)が主体となります。小腸では縦走潰瘍(腸間膜付着側)、それに伴う偏側性狭窄、偽憩室様変形、大腸ではTaeniaに沿う短く浅い潰瘍と、その周辺の敷石像が主体となります。その他に、種々の形態の潰瘍、アフタ、裂溝(fissuring ulcer)、瘻孔などを認めることがあります。

内視鏡検査では、X線検査と同様の所見を呈しますが、その際生検を行うことが重要です。生検は病変部のみでなく、一見正常にみえる部位からも採取する必要があります。生検組織よりの肉芽腫(非乾酪性)の証明(連続切片を作製する必要がある)を行います。また、一見正常にみえる領域からも生検採取することが重要となります。

クローン病の治療


根治できない疾患であり、治療の目的は患者の症状をとりQOLを向上させることにあります。栄養療法、薬物療法、外科的治療から選択、または組み合わせて治療します。

栄養療法では、絶食のうえ、成分栄養剤または消化態栄養剤を理想体重1kgあたり35−40kcalを目標に投与します。味が悪いためしばしば経口摂取が困難であり、原則的に経鼻チューブを挿入しポンプを用いて注入します。

薬物療法では、ステロイド薬が用いられることもあります。ただ、ステロイドには緩解維持効果はなく、ステロイド薬投与中の患者では免疫抑制剤やレミケード投与中の患者に比べて感染症の発症や死亡率が高いという報告があるため、長期投与はなるべく避けます。緩解維持に効果のあるアミノサリチル酸、免疫抑制剤、レミケードを用います。レミケードで緩解導入した患者ではレミケードで緩解維持します。

外科的治療が行われることはありますが、完治しない疾患であるので、手術目的は症状を改善することです。内科的治療を優先しますが、いったん手術が必要な状態となればなるべく早く手術することが望ましいです。

狭窄に対しては頻回の腸切除による短腸症候群を防ぐため、可能であれば内視鏡的狭窄拡張術を試み、手術も狭窄形成術などを併用しなるべく腸を温存します。

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