ソフトバンク・松中信彦外野手(36)が25日、契約更改交渉で1億円ダウンの年俸4億円でサインした。来季に7年契約の5年目を迎えるが、代理人を伴った交渉で95年オフの石毛宏典に並ぶ球団最高の1億円という、史上6人目の同一球団で1億円以上の大幅減俸となった。6年連続V逸の現状も踏まえ、「やっぱり4番を打ちたい」と力を込めた。

さらに、今オフに右ひざと左ひじの手術を受けた大砲は「重病の子供たちが野球を見られるスペースを提供したい」と力説。8月末まで入院していた自身の次男(2歳)と同じネフローゼ症候群(腎臓病の一種)の子供たちを、ヤフーDへ招待する計画を披露した。
(松中、1億円減 史上6人目の大幅減俸…ソフトバンク)

ネフローゼ症候群とは


ネフローゼ症候群は、高度の蛋白尿(3.5g/日以上)と低蛋白血症(血清総蛋白6.0g/dL以下または血清アルブミン3.0g/dL以下)によって惹起される臨床症候群です。簡単にいってしまえば、何らかの原因で腎臓の機能が異常をきたし、血液中の水分をコントロールするタンパク質が、尿として排泄され減少する疾患です。

小児のネフローゼ症候群では、国際小児腎臓病研究班(ISKDC)の診断基準がよく使われています。その診断基準は、
1)蛋白尿:40mg/時/m^2(体表面積)以上
2)低アルブミン血症:2.5g/dL以下

この2項目を必須とします。

小児におけるネフローゼ症候群では、腎臓だけが障害される一次性(原発性)ネフローゼ症候群が90%を占め、アレルギー性紫斑病や全身性エリテマトーデスなどの全身性疾患に伴う二次性(続発性)ネフローゼ症候群は10%以下と少数例となっています。

診断基準を満たせば、確定診断となりますが、実際には二次性糸球体疾患(薬物反応性、膠原病、糖尿病、肝臓病など)との鑑別、また原発性糸球体腎炎においても治療方針の決定や予後判定のため、禁忌がなければ腎生検にて組織学的診断を行います。

症状としては、高度な蛋白尿、浮腫(眼瞼や下肢)、低蛋白血症、高脂血症(高コレステロール血症)などがあります。さらに重症化してくると、強度の全身倦怠感、皮膚の蒼白化や無気力、食欲不振、腹水・胸水などをみることもあります。

浮腫および高脂血症は、しばしば合併します。アルブミンなどの血中タンパクが排泄されるため、血中タンパクが減少し、血漿膠質浸透圧が低下する。このため、全身に浮腫を形成する傾向が現れてきます。

浮腫が高度になると、腔水症による呼吸困難や腸管浮腫による下痢を生ずることもあります。また血管内脱水と凝固能の亢進から血栓症を誘発することもあります。

高脂血症は、低アルブミン血症などによる肝のリポ蛋白の合成亢進と異化障害によって起こります。凝固能異常には、血小板凝集能亢進、凝固因子の増加、線溶系の低下などが関与しているといわれています。

原因としては、すべての一次性糸球体疾患および種々の二次性糸球体疾患が、ネフローゼ症候群の疾患になりえます。

一次性ネフローゼ症候群の80〜90%は、組織学的には微少変化型(MCNS:minimal change nephrotic syndrome)で、10〜20%はいわゆる腎炎性ネフローゼ症候群で、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症などが挙げられます。

微少変化型の好発年齢は2〜6歳で、高血圧、腎機能障害や明らかな血尿は伴わず、ステロイド薬によく反応します。再発を繰り返しても腎機能が低下することはなく、思春期には完治することが多いです。ですが、最近の知見では20%の症例が成人期に持ち越してしまうこともあると指摘されています。

ネフローゼ症候群の治療


ネフローゼ症候群の治療としては、以下のようなものがあります。
原則として初発時、まずは入院加療を要します。本症候群の予後および治療法は原因疾患により異なることから、腎生検などによる原因疾患の同定が治療方針の決定に重要となります。

確定診断が得られるまでは対症療法を行います。二次性糸球体疾患が原因の場合は、原因疾患の治療を優先します。臨床的に、微小変化型ネフローゼ症候群との診断がつけば、ステロイド薬の内服をまず開始します。二次性ネフローゼ症候群、腎炎性ネフローゼ症候群が疑われるときは、腎生検にて組織を確認します。

浮腫期には食事療法、安静、保温(身体を冷やさない)が重要となります。利尿がつき蛋白尿が消失すれば、自宅からの通院加療も可能となります。

まず、薬物療法としては、ステロイド薬を用います。ステロイド薬導入1〜4週で、微小変化型ネフローゼ症候群の90%以上の症例は蛋白尿が消失し寛解に至ります。初発のみで再発を認めないのは、30%の症例にすぎず、ほかは再発を繰り返してしまいます。

ステロイド薬導入後8週しても蛋白尿の消失を認めないステロイド薬抵抗症例、半年に2回以上再発を繰り返す頻回再発症例、ステロイド薬の減量ができないステロイド薬依存症例や、ステロイド薬の副作用が目立ちステロイド薬の継続投与が不可能な症例には、免疫抑制薬の導入が必要となります。

ただ、ステロイド薬の副作用として、発育障害,肥満、骨粗鬆症、白内障・緑内障、高血圧、消化性潰瘍、糖尿病に注意する必要があります。定期的に眼科的なチェック、骨塩量測定が必要となります。

また、免疫抑制薬 ネオーラルの副作用として、腎障害(尿細管間質の縞状の線維化)、高血圧、多毛に注意する必要があります。エンドキサンは、思春期以降には用いず、副作用として、骨髄抑制、性腺障害、悪性腫瘍発生、出血性膀胱炎に注意する必要があります。

食事療法も必要で、浮腫が強く乏尿の時期は、負荷食塩は0gで開始し、1週以内に0.05〜0.1g/kgとし、利尿がつき浮腫が消失すれば0.1g/kg、蛋白尿が消失すれば味は多少薄めと指導します。

水分摂取は利尿がつき浮腫が消失すれば制限は必要ありません。摂取エネルギーはHollidayの式の「入院患者の必要カロリーの計算式」に従い、身長別標準体重を求め、20kgまでは、1,000+50×(BW kg−10)、30kgまでは,1,500+20×(BW kg−20)で求めます。

浮腫が消失するまでは求めたエネルギーの80%とし、利尿がつき蛋白尿が消失すれば計算式で求めたエネルギーとします。蛋白尿は利尿がつくまでは、各年齢別蛋白質所要量の70〜80%程度とします。また、過食による肥満には注意が必要となります。

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