バセドー病の治療に専念するため、年内いっぱいで歌手活動を休止する歌手・絢香(22)が、ラスト唱となる「第60回 NHK紅白歌合戦」のステージでファンにメッセージを送ることが28日、わかった。

47番目の登場となる絢香は、紅組全員が見守る中で登場。司会の仲間由紀恵(30)から紹介を受けた後、歌う前にファンにメッセージを送る。本番では、ピアノ演奏に合わせ「みんな空の下」を歌唱する。紅白がラストステージとなることが決まった後も、何もコメントしていないだけに、本番での発言が注目される。
(絢香、紅白でラストメッセージ)

Basedow(バセドー)病


Basedow病(バセドウ病)とは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター抗体の刺激により、びまん性の甲状腺腫と甲状腺機能亢進症をきたす自己免疫性甲状腺疾患です。

リンパ球が、自己抗体であるTSHレセプター抗体を産生します。これが、TSH同様の作用をTSHレセプターに伝達するため、甲状腺ホルモンが過剰に産生され、甲状腺機能亢進症が起こります。

簡単に言ってしまえば、自分の甲状腺を異物として誤って認識し、抗体(TSHレセプター抗体)が生じるために起こります。抗体により甲状腺が刺激され血液中の甲状腺ホルモンが増加する疾患です(甲状腺機能亢進症)。

この甲状腺ホルモンが血中に増加するために症状が起こってきます。甲状腺とは、前頸部の喉頭下部から気管上部の高さに存在し、甲状腺ホルモンを産生する内分泌器官です。

甲状腺ホルモンは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種があり、ヨウ素を含有したアミノ酸の一種です。血中ではそのほとんどが結合蛋白質と結合しており、1%以下の微量遊離型ホルモンが生理活性を示します。

甲状腺ホルモンの機能としては、幼児期の成長と成熟の促進、糖蛋白質・核酸・脂質の代謝促進、酸素消費と熱産生を促進する作用があります。

Basedow病の診断


甲状腺ホルモンが過剰産生されることで、全身症状としては、体重減少、多汗、易疲労感、暑がり、微熱、口渇、月経不順、無月経、掻痒感などが生じることがあります。

また、循環器症状として動悸、頻脈、労作時息切れ、不整脈などがあります。神経筋症状として、手指振戦、いらいら、多動、不眠、情緒不安定、筋力低下、四肢麻痺などがあります。

さらに、眼症状として特徴的なものがあります。眼球突出、眼裂開大、眼瞼浮腫、複視、視野狭窄、視力低下などが起こることがあります。バセドウ眼症(甲状腺眼症)とは、とりわけ重症型は悪性眼球突出症といわれます。女性が男性より罹患しやすいという特徴があります。

ちなみに、Basedow病の他覚所見として、特にびまん性甲状腺腫diffuse goiter、頻脈tachycardia、眼球突出exophthalmusの所見を併せてMerseburg(メルゼブルク)の3徴といいます。

これらの徴候に加えて皮膚湿潤、手指振戦finger tremorを高頻度に認め、甲状腺部血管音bruitを聴取します。手指振戦は閉眼時に起こりやすい〔Rosenbach(ローゼンバッハ)徴候〕です。これらの臨床所見が認められれば、甲状腺中毒症を示すBasedow病を考え、鑑別のための検査を進めます。

眼球突出(眼突計で17mm以上)は約50%の症例で認めますが、明らかな眼球突出が存在しなくてもvon Graefe(フォン・グレーフェ)徴候(上結膜白目の露出)やMoebius(メビウス)徴候(眼球輻輳反応の障害)を認めることがあります。

眼球眼筋障害のために複視を認めます。眼球突出がさらに進行すると眼球結膜の腫脹、充血、出血が起こり、閉眼不能となります。こうなると、角膜の易感染性および潰瘍が生じ、悪性眼球突出症malignant exophthalmusとなり、視神経萎縮をきたし高度の視力低下に陥ることもあります。

甲状腺機能は正常で眼球突出だけを認める病態を、正常甲状腺機能眼球突出euthyroid ophthalmopathyといいます。老人では眼球突出は現れにくく、筋脱力、衰弱、食欲不振のみが出やすくなり、精神遅延様顔貌apathetic hyperthyroidismを示すに至ることがあります。

特に男子では近位筋優位の対称性の四肢麻痺が起こり、階段の昇降や椅子に登ることができなくなる(Plummer徴候)ことがあり、時には四肢可動不能に陥ることもあります。日本では、周期性四肢麻痺にBasedow病が合併する例が多く、またBasedow病に重症筋無力症を合併することもあります。

さらに、まれにBasedow病が激症型で発症することがあり、このときは発熱、高度の下痢、発汗過多(流れるような汗)が起こり、甲状腺クリーゼと呼び、早急に治療を開始する必要があります。

検査としては、血清freeT3、freeT4、TSH、TSHレセプター抗体あるいはTSAbを測定します。甲状腺機能亢進症で、TSHレセプター抗体/TSAbが陽性ならBasedow病と診断されます。

TSHレセプター抗体/TSAbが陰性でも、24時間123I甲状腺摂取率が増加しているときもBasedow病と診断してよいとされています。典型的な眼症状が存在すれば、それだけでBasedow病と診断されます。

甲状腺機能が正常、あるいは甲状腺ホルモンが正常で、TSHが抑制されている潜在性甲状腺機能亢進症で、眼症状のみある甲状腺機能正常(euthyroid)Graves(グレーブス)病では、TSHレセプター抗体/TSAbが陽性になったり、T3抑制試験にて異常反応を示すことが多いです。

Basedow病の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
バセドウ病の甲状腺機能亢進症に対する治療には、抗甲状腺薬による内科的治療、放射性ヨード治療、外科的療法の3つがあります。日本では、内科的治療が第1選択として施行されることが圧倒的に多く、次いで放射性ヨード治療、外科的療法の順で行われています。

ただ、放射性ヨード治療や外科的療法を行う際でも甲状腺クリーゼを回避するため、抗甲状腺薬にて甲状腺機能をコントロールしておくことが原則となり、やはり抗甲状腺薬が初期の第1選択となります。

抗甲状腺薬(ATD)には、チアマゾール(メルカゾール)とプロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)があります。ともに、甲状腺内でのヨードの酸化・有機化の抑制などによって、甲状腺ホルモンの合成を低下させることが主作用です。

β受容体遮断薬を併用することが多く、約2〜4週毎に血中甲状腺ホルモンを測定し正常化すればβ受容体遮断薬を中止し、抗甲状腺薬を徐々に減量していきます。症状が改善しても、再燃を防ぐため服薬を継続することが勧められます。バセドウ病治療の最終目標は寛解ですが、寛解を得るには1〜2年の長期のわたって投薬をしたほうがよいとされています。

放射性ヨード療法は、中高年者で抗甲状腺薬で副作用があったり寛解しない例や手術後の再発例が対象となります。晩発性甲状腺機能低下症は副作用というよりも不可避な結果と考えられます(当然のことながら、妊娠中ではできません)。

手術療法は、内科的治療で寛解しないもしくはコントロール不良な若年者、抗甲状腺薬の副作用例、腫瘍の合併、短期間に治療希望、甲状腺腫が非常に大きい場合、などでは手術療法の適応となります。

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