読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
3歳の時の放射線照射で最近、わきの下が「慢性放射線皮膚炎」になりました。がん化する前に、ほかに照射した首と両ひざも含めて、血管ごと別の皮膚を移植するよう勧められました。(58歳女性)

この相談に対して、国立がんセンター中央病院皮膚科医長である山崎直也先生は、以下のようにお答えになっています。
がんや、あざのような皮膚病に放射線を当てて治療した場合、長期間にわたって毛が抜け、皮膚にしわが寄って薄くなったり、赤くただれたりする「慢性放射線皮膚炎」や、皮膚炎の中に白くカサカサした角質が目立つ「放射線角化症」が現れ、長く続くことがあります。

その一部は平均約20年後にがん化する可能性がありますが、実際に発病するかどうかは、放射線の種類や強さなどによっても違ってきます。また、照射から50年後に発病したという報告もあります。

その際に発生する皮膚がんの種類は、大部分が「有棘細胞がん」で、まれに「基底細胞がん」も見られます。基底細胞がんであれば、ほぼ転移の心配はありませんが、有棘細胞がんは、放置するとリンパ節や肺などの内臓に転移する恐れがあります。

ただし、有棘細胞がんが発病しても、がんの直径が2センチ以内で転移がない場合は、その部分を手術で十分に切り取れば、治すことができます。進行も早くはありません。

放射線皮膚炎とは


放射線皮膚炎とは、放射線被曝により生じる皮膚の炎症を指します。急性放射線皮膚炎と慢性放射線皮膚炎に分かれます。

急性放射線皮膚炎は、線量を増すにつれて紅斑、乾燥、脱毛、色素沈着と進み(乾性皮膚炎)、次第に着色が濃くなり水疱を形成しびらんとなります(湿性皮膚炎) 。

びらんまでであればその程度により、痕跡なく治癒するものから、色素脱失、色素沈着、毛細血管拡張の混在する皮膚萎縮を残すもの(慢性放射線皮膚炎)まで症例によって違いがみられます。

慢性放射線皮膚炎は、現在では少なくなりましたが、数十年前の白癬、血管腫、湿疹に対する軟X線照射、医師やX線技師の不注意なX線診断・治療による少量長期被曝、子宮癌などの内臓悪性腫瘍に対する放射線療法により生じたものがほとんどといわれています。

色素沈着、毛細血管拡張・萎縮、永久脱毛などを示す萎縮期、X線角化症のみられる角化期、難治性潰瘍となる潰瘍期および癌化する癌化期の4期に分けられます。

慢性放射線皮膚炎が発生して数年〜数十年後、角化症や潰瘍などから悪性腫瘍(多くは有棘細胞癌、ほかに基底細胞癌、Bowen病、稀に肉腫)を生じます。1回線量、照射間隔にもよりますが、一般に10Gy以上で慢性放射線皮膚炎を生じる可能性があります。

慢性放射線皮膚炎の治療とは


慢性放射線皮膚炎の治療としては、以下のようなものがあります。
質問者の場合、組織検査で、がん細胞が見つかっていないということなので、急いで手術する必要はないでしょう。一生、がんにならない可能性もあります。

がん細胞は一般の方が目で見ても分かりません。皮膚科の専門医に通いながら、3か月や半年といった間隔で経過を観察すれば、皮膚の変化にも気付くはずです。それから手術しても、通常は手遅れになることはないと思います。

慢性放射線皮膚炎に対しては、外的刺激からの保護に努め、白色ワセリン、ステロイド軟膏の外用を行いますが、角化性病変、難治性潰瘍を生じた場合は組織学的に悪性像の有無を確認します。

放射線角化症で細胞の異型が軽度であれば冷凍凝固療法を行ってもよいですが、難治性であれば切除・植皮を行います。

難治性潰瘍は切除・植皮を行ったほうが安全であり、可能であれば、がんを生じる前に慢性放射線皮膚炎の部位を切除し植皮するのが望ましいといわれています。

ですが、深部照射後生じた放射線皮膚炎では皮下組織深層まで瘢痕組織が及ぶので、皮下組織まで切除後、有茎皮弁ないしは筋皮弁による再建が必要となります。また、瘢痕組織をすべて切除する必要はないといわれています。

がんを生じた場合は、外科的治療が原則ですが、再発、転移の確率が高いので十分な治療と注意深い経過観察が必要です。

ご心配なこととは思われますが、まずは専門の皮膚科医に受診・相談の上、手術されるかどうかをお考えいただくのが宜しいかと思われます。

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