欽ちゃんファミリーの一員として人気を集めた俳優の小西博之さんは5年前、腎臓がんと診断され、摘出手術を受けた。幸い転移はなく、驚異の回復力で仕事に復帰。俳優業の傍ら、がんの克服体験や命の大切さを語る講演活動も行い、前向きに生きる素晴らしさを訴え続けている。

42歳でたばこをやめたら太り始め、43歳で減量を始めたんですよ。ところが減量をやめても体重が減る。プロデューサーからも「コニタン、もうちょっと体重戻してくれないか」とクレームが来るようになったんです。

食べたい気持ちはあっても、すぐおなかいっぱいに。ごはんのにおいで気持ち悪くなり、そのうち3大欲求がなくなりました。眠たいのに眠れない。しんどい。平成16年12月23日夕方6時。ついに京都のホテルで血尿が出ました。

25日、病院で超音波検査をし、27日に慈恵医大に。「がんですか」「違う」と押し問答を30分くらい続け、ようやく「4、5センチかもしれんけど、左の腎臓に可能性がある」と言われました。

17年1月に精密検査。「この辺りを見てほしい」と先生に注文をつけるくらい冷静でしたから、先生も普通に結果を話してくれました。「体も大きかったけれど、がんも13センチと大きかった」。早寝早起き、サプリ、水。いろいろやっていたけれど、健康診断には行っていなかった。ぼくは風邪もひかない健康体で、病院も入院も初めてでした。

がんの可能性があると聞いた12月27日に、「翌年7月に『徹子の部屋』に出る」と目標を立てました。徹子さんに「こんな元気になった」と体験を語るのを目標に、そればかり考えて毎日うきうき。ところが2月1日、カレンダーをめくったら、入院する14日と手術する16日にマルが…。見た瞬間、あと2週間しかないと怖くなり、2日半、泣き通しました。

周囲は「ゴールデンウイークまで生きられないだろう」と言われていたそうで、それをぼくだけ知らなかった。見舞客が5分ともたず病室を出て行くんです。みんな、外で泣いていたらしい。こんなに元気なコニタンが…と。

手術の記憶はありませんが、麻酔が切れた後の痛みはひどかった。それでも、2日後から歩きました。親父が落ち込んでいたから、歩いたら喜ぶと思ったんです。今振り返ると、完全にから元気ですけれどね。転移がなかったため、25日に退院。病院の自動ドアを自分で開けて出たとき、思わず号泣しました。

昨年9月の検査で異常がなく、「4年半でここまで来たら、もう大丈夫」と言われました。あと、「13センチのがんって言ったと思うけど、横が13で、縦は20センチやったんや」とも…。確かに写真を見ると、がんは楕円形だった。「元気に活躍していることは、ぼくらの励みになる」と言われました。

昨年10月からはキックボクシングも再開しました。夏までには腹筋を割りたい。割れた腹筋に(手術跡の)Vサインがあったら、かっこいいんじゃないかな。
(末期の腎臓がん克服…命の大切さ訴え続け 俳優・小西博之さん)

腎癌は、腎臓に発生する悪性上皮性腫瘍の総称です。その中には、腎細胞癌、腎盂癌、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)が含まれます。成人では、腎細胞癌と腎盂癌がほとんどで、約90%は腎細胞癌です。

腎細胞癌とは


腎細胞癌は、癌全体の約2%を占め、最近のがん・統計白書では、腎細胞癌による死亡数は増加傾向にあるといわれています。40歳以降(特に60代から70代にかけて好発)に生じ、男性に多い(女性のおよそ3倍)といわれています。

腎癌と関連する基礎疾患としてはvon Hippel-Lindau病(VHL)、結節硬化症、慢性腎不全(透析)などが知られています。

最も頻度の高い自覚症状は肉眼的血尿(約30%)であり、特に無症候性の場合は腎癌および尿路癌を強く疑う必要がります。腎細胞癌において、腫瘤形成、血尿、疼痛が古典的な三大症状とされていますが、これらはいずれも、腫瘍がきわめて大きく進展した場合です。他にも、全身的症状として発熱、体重減少、貧血などをきたすことがあります。

約3分の1の症例は、発熱(多くは38℃までの微熱)、体重減少、消化器症状などの癌随伴症候を契機として診断されます。説明のつかないこれらの症候や血液生化学検査異常を有する症例では、腎癌を鑑別診断として考慮する必要があります。

腫瘍の最大径が 5 cm 以上になってくると症状が現れてきますが、それまでは無症状のことが多いです。上記のケースのように、検診時の超音波検査やCTで偶然発見される例が70%以上を占めるそうです。

稀なケースですが、腫瘍が産生する物質によって、赤血球増多症(エリスロポエチン産生による)や高血圧(レニン産生による)、高カルシウム血症(ビタミンD産生による)などが引きおこされることがあります。

腎癌は、腎被膜を越えて腎周囲脂肪組織、副腎、腎筋膜への浸潤のほかに、腎静脈〜下大静脈に腫瘍血栓を生じることがあります。また、転移としては、血行性転移が多く、肺・肝・骨に転移します。腎茎部リンパ節転移もあります。

腎細胞癌の治療


腎細胞癌の治療としては、以下のようなものがあります。
転移がみられない場合、患側腎を副腎とともにGerota筋膜ごと摘出する根治的腎摘除術が標準的治療です。体腔鏡下の根治的腎摘除術は、通常の開放手術と比較して低侵襲であり術後回復も早く、早期癌に対して積極的に行われるようになってきています。

また、腫瘍径が 4 cm 以下の場合や、両側腎癌や機能的・解剖学的単腎例では腎部分切除術が積極的に選択されます。下大静脈内腫瘍血栓例に対しても、腫瘍摘除が予後を改善します。

術後の再発予防のための補助免疫療法として、再発の危険性の高い症例(下大静脈内腫瘍血栓やリンパ節転移陽性など)に対してインターフェロンによる予防投与を行うこともあります。

すでに遠隔転移を認める症例では、全身状態が良好で急速進行例でなければ原発巣の摘除が生存期間延長が望めるといわれています。転移巣に対しても、完全切除可能な単発の転移であれば外科的切除が適応となります。

手術不能例や原発巣摘除後の多発転移例ではサイトカインによる免疫療法が選択されます。インターフェロンを週 3 回以上(可能ならば連日)、効果の持続する間は継続して使用することもあります。また、インターフェロンにH2レセプター阻害薬であるタガメット(腎癌には保険適用はない)を併用する場合もあります。

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