井上梅次氏(いのうえ・うめつぐ)11日、脳出血のため死去、86歳。自宅は東京都世田谷区大蔵6の10の6。葬儀は近親者で済ませた。喪主は妻で女優の月丘夢路(つきおか・ゆめじ、本名・井上明子=いのうえ・あきこ)さん。後日お別れの会を開く。

石原裕次郎さん主演の「嵐を呼ぶ男」など日活でアクション映画を手掛けた。その後、フリーとなり幅広いジャンルの作品を発表した。
(日活アクション映画の監督、井上梅次氏が死去)

脳出血とは


脳出血とは、何らかの原因によって脳の動脈が破れて出血し、脳実質内に出血(血腫)を形成したものです。微小動脈瘤の破裂が起こり、それに続いて二次的に発生する静脈破綻などが原因となって脳出血を起こします。

以前は日本での発症率が、欧米諸国に比べて高い傾向にありましたが、生活環境の変化や高血圧管理の普及とともに、減少しつつあります。全体の発生数および重症例は近年明らかに減少傾向にあります。年齢別発症率では、60〜70歳代にピークがあり、男性に多いという特徴があります。

リスクファクターとしては、高齢、性別(男性)、高血圧、飲酒、血清低コレステロール値などがあげられます。また、最近では抗凝固療法、抗血小板療法なども重要となります。さらに、高血圧などを伴わない脳内出血では、もやもや病、アミロイド脳症、転移性脳腫瘍、血管腫などが考えられます。

原因としては、高血圧性脳出血が60〜80%であるといわれています。その他、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、血管腫、脳アミロイド血管障害、脳腫瘍、出血性素因などがあります。

脳出血の診断


高血圧症以外明らかな原因病変がない出血では、部位別頻度で被殻40〜60%、視床20〜30%、脳葉、小脳、橋が各々5〜10%となっています。被殻出血では、対側の片麻痺、言語障害(失語症、構音障害)、眼症状(病巣を睨む共同偏視)が特徴的です。

特に若年者の出血では、脳動静脈奇形などが疑われます。脳葉出血や小脳出血をきたし、血管撮影でも確認できないoccult AVMが出血源となる例も多いといわれています。

脳動脈破裂は突発性頭痛で発症する例が多いです。動脈瘤が脳組織に癒着、埋没するような形態の場合、出血はくも膜下出血よりも脳内出血が主体となります。中大脳動脈、前大脳動脈動脈瘤で多くみられます。

高血圧の既往を有する例が多く、日中、労作時の発症することが多く、症状としては、突発性の意識障害、局所脳神経症状で発症します。神経症状としては、片麻痺や言語障害(失語症、構音障害)、眼症状(瞳孔変化、共同偏視、眼振)などがみられます。

また、頭痛やめまい、嘔吐のみの発症例(小脳出血、皮質下出血など)もあります。症状としては、持続性または進行性に推移します。再出血による急激な増悪もあります。

脳出血は2〜3時間で停止し、大量の出血では脳ヘルニアを起こして死亡の可能性もあります。5mL未満の出血は自然に吸収されます。5〜100mLの血腫では、血腫量に応じて意識障害、片麻痺などを示します。脳浮腫が加わると頭蓋内圧が亢進し、脳ヘルニアを発生することになります。

検査では、頭部CTなどが行われます。CTでは、出血直後から血腫は高吸収の(白い)陰影としてCT上明瞭に認められます。特に急性期では、梗塞との鑑別のみならず、血腫の部位、大きさの判定、脳室穿破の有無と脳室内血腫の状況、血腫周辺の浮腫〔浮腫部は逆に低吸収域(黒い部分)として認められる〕などを知るのに役立ちます。

血腫は発症2〜3週間で急速にX線吸収値が低下し、4週間以上たつと脳実質と同じか、それ以下のスリット状の低吸収域を示すようになりますが、小さい血腫ではCT上ほとんど病変として認められなくなる場合もあります。

MRIは、脳出血の急性期には、特にMRIのT1強調画像では血腫の存在や大きさがはっきりしないことがあります。ですが、経過とともに血腫周囲に脳浮腫が出現しはじめると、その広がりの描出にMRIは威力を発揮します。また、CTでは慢性期の血腫は不明瞭になりますが、MRIは、陳旧性脳出血の検出に有力な武器となります。

CTによる血腫の確認が診断のポイントとなります。発症後早期に行ったCTで高吸収域が存在しなければ、脳内出血は否定的です。出血をみた場合には、血腫の部位、広がりおよびくも膜下出血や水頭症の有無などの関連所見より、出血の原因や病態を鑑別します。

脳出血の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、一般的に脳圧降下薬(脳浮腫の除去)としてグリセオール、マンニトールなどが用いられ、止血薬(血管強化薬および抗プラスミン薬)が用いられることもあります。

出血と診断された場合には、積極的な降圧をすべきであると考えられます。収縮期圧が180mHg以上、拡張期圧が105mmHg以上であれば、注射薬による降圧を行います。目標は最高血圧150mHg前後です。ニトログリセリン(ミリスロール)や塩酸ジルチアゼム(ヘルベッサー)、塩酸ニカルジピン(ベルジピン)などを用いることがあります。

ただし、ベルジピンは、頭蓋内出血が止まったことを確認して使用するべきとされています(一般的には発症6時間後)。同時に脳圧降下薬の投与が望ましく、グリセオールを用います。

外科的治療としては、神経症状、血腫量を基準とするガイドラインが示されており、被殻、小脳、脳葉出血がよい適応であるとされています。具体的には、
1)神経症状が悪化しつつある小脳出血
2)被殻、皮質下の50mL以上の血腫
3)脳室内出血で急性水頭症を示すもの

などがあります。

実際には、出血部位、血腫量、神経学的重症度などを総合的に判断して手術適応を決めます。もやもや病、血管奇形などによる出血もあり、外科治療に先立っては、できるだけMRI/MRAなどを撮影してから判断します。

こうした治療とともに、リハビリも重要になります。急性期は、リハビリテーション看護とベッド上訓練が重要であり、発症当日から開始することが望ましいです。

回復期では、訓練室に出棟して訓練が行えるようになれば、通常はリハビリテーション科あるいは回復期リハビリテーション病棟に転床して集中的に訓練を実施します。まず、平行棒中で立位・歩行訓練を行い、安定性を確認して平地歩行へと進みます。

慢性期では、肩関節屈曲や足関節伸張の自主訓練および散歩を指導し、日常生活の自立を促し、社会参加を勧めます。希望により介護保険サービスを利用するようにします。

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