俳優の藤田まことさんが18日午前7時25分、大動脈瘤破裂のため大阪・吹田市の病院で死去した。76歳だった。

東京・池袋生まれ。歌手ディック・ミネの弟子格として芸能界入り。漫才の中田ダイマルのカバン持ちをしながら1960年代初めに、「てなもんや三度笠」で一躍人気者になった。73年からは時代劇「必殺仕置人」シリーズの中村主水役でブレーク。世のサラリーマンが憧れる“昼行灯"を演じた。

88年からは「はぐれ刑事純情派」で安浦刑事役でまた大ブレーク。

08年4月に食道がんが判明し、6月の「剣客商売」の舞台を降板。入院治療を続けたが、10月には復帰。「必殺仕事人09」に中村主水役でレギュラー出演した。さらに09年10月には慢性閉塞性肺疾患と診断され、ドラマを降板した。今年2月5日には「剣客商売スペシャル 道場破り」が放送された。
(藤田まことさん死去)

大動脈瘤とは


大動脈瘤とは、何らかの原因により大動脈壁が脆弱化し、限局的に動脈内腔が正常径より1.5倍以上に拡張した状態をいいます。

動脈瘤の壁構造により瘤壁が内膜、外膜、または残存中膜などの本来の動脈壁の構造を有するものを真性大動脈瘤、固有の動脈壁構造を欠いたものを仮性大動脈瘤といいます。

また、動脈瘤の部位により胸部大動脈瘤(上行、弓部、下行大動脈瘤)、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤に分類されます。

いったん内腔が拡大し始めると、壁張力は内径に比例して増加するため拡大が進展しやすくなります。終局的には動脈瘤は破裂して大出血を起こし、死の転帰に至ることになります。

最近の高齢化現象に伴い、特に動脈硬化性の大動脈瘤の頻度が増加しています。部位別では腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)が最も多く、次いで上行大動脈瘤、弓部下行大動脈瘤、腎上部腹部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤の順となっています。

原因として最も多いのは動脈硬化性であり、粥腫の形成・崩壊、潰瘍形成、出血の繰り返しから中膜弾性線維の破壊をきたして、壁厚像を脆弱化させる過程が推定されています。

このほかに遺伝的素因により中膜弾性線維の破壊が起こりやすいもの〔Marfan(マルファン)症候群で起こる嚢胞性中膜壊死〕、炎症による中膜弾性線維断裂や平滑筋の破壊が起こるもの〔Behcet(ベーチェット)病、大動脈炎症候群、梅毒など〕、あるいは外傷性のものが挙げられます。

大動脈瘤の診断


大動脈瘤患者の多くは無症状で経過しますが、拡大が著明になると部位によっては周囲の圧迫症状を呈するようになります。

胸部大動脈瘤の場合、左反回神経麻痺による嗄声、気管・気管支や横隔膜神経の刺激による咳漱、交感神経圧迫によるHorner(ホルネル)症候群、食道圧迫による嚥下困難、上大静脈圧迫による頸部静脈の腫脹などが挙げられ、これらは破裂の危険が大きいと認識すべき症状となっています。

また、動脈瘤による胸骨・椎骨の圧迫による前胸部痛、または背痛が起こることもあるが、もし疼痛が持続性で、増強しつつあったら切迫破裂を考えるべきであると考えられます。

腹部大動脈瘤の場合は、後腹膜腔に位置するために周囲組織への影響は少なく、無症状で経過し、腹部の拍動性腫瘤を自覚するのみのことが多いです。したがって、腹痛や腰痛の出現は破裂が近いことを示すサインであるということを認識する必要があります。いずれの場合にも、ひとたび破裂すると出血性のショック症状を呈します。

大動脈瘤の診断は、身体所見や単純X線写真などから動脈瘤を疑い、超音波またはCT検査により行います。この際に、どの程度破裂の危険を考えるかを評価するために瘤の最大径を測定すること、外科的治療を考える際に大きな問題となる主要動脈分枝がどこまで巻き込まれているか、すなわち瘤の部位と広がりを明らかにすることが重要です。
 
また、動脈瘤の原因についての考察も重要で、特に大動脈炎症候群やBehcet病などの代表的な炎症性疾患、Marfan症候群などの先天性要因については、家族歴、特徴的身体所見、炎症反応、他の部位の血管病変などをチェックする必要があります。動脈硬化性と考えられる場合には、冠動脈病変を含めた他の部位での狭窄性病変の存在も考えに入れる必要があります。

大動脈瘤の治療


大動脈瘤の治療としては、以下のようなものがあります。
大動脈瘤に対する治療としては、内科的治療では治癒が望めないことから、外科的治療が原則です。しかしながら、瘤径の小さな症例、高齢あるいは重篤な合併症のため手術適応外の症例には動脈瘤の拡大進展を遅延させる目的で降圧薬による内科的治療を行います。

降圧薬としては長時間作用型Ca拮抗薬(CCB)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の併用療法にβ遮断薬の追加が望ましいです。高齢者では脳、冠、腎循環に注意しながら緩徐に降圧し、できれば130/80mmHg未満にコントロールします。腎機能低下があればラシックス10〜20mgを追加します。

手術適応は無症状の症例では一般的に瘤径あるいは拡大速度によって決定する。瘤径に関しては胸部大動脈瘤6 cm(マルファン症候群5 cm)、腹部大動脈瘤5 cm、拡大速度に関しては年約1 cm以上が手術適応の目安となります。疼痛、周囲臓器の圧迫症状を呈する症例は破裂の危険性が高いことから適応となります。

手術は、限局性の上行大動脈瘤の場合には完全体外循環下に人工血管置換となりますが、弓部を含む大動脈瘤の場合には脳保護のための選択的脳灌流法、超低体温下循環停止を用いた完全(または準完全)弓部大動脈人工血管置換という侵襲の大きな手術となります。

下行大動脈瘤の人工血管置換では、頻度は少ないですが、ときに脊髄動脈虚血による対麻痺を起こすことがあり、術前・術中にその発症を予測することが困難であることにも留意して、手術適応を検討します。

金属製ステントを人工血管で覆ったステントグラフト留置術がより侵襲の少ない治療法として注目されており、大腿動脈より経皮的にカテーテルを用いて挿入でき、腹部大動脈瘤,胸部下行大動脈瘤が適応とされます。

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