読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
5年程前から健康診断で尿酸値が8以上で「要治療」と言われています。痛風の症状が全くないため薬は飲んでいませんが、体に何か影響が出てこないか心配です。(55歳男性)

この相談に対して、 千葉大病院糖尿病・代謝・内分泌内科准教授である龍野一郎先生は以下のようにお答えになっています。
尿酸は細胞が壊れたり、ビールや肉類などに多いプリン体から作り出されたりした廃棄物で、腎臓から排泄されます。水に溶けにくく、血中の溶解度(血清1デシ・リットルあたり7ミリ・グラム)を超えると「高尿酸血症」と定義されます。

尿酸値は、女性は女性ホルモンによって低く抑えられますが、男性は高くなりがちです。高尿酸血症になって10年程度で関節などに結晶が沈着し、痛風などを起こすといわれています。

高尿酸血症と痛風の原因には、先天的に腎臓が尿酸を排泄する機能が低い「尿酸排泄低下型」と、生活習慣で尿酸の産生が過剰になる「尿酸産生亢進型」があります。前者は肥満タイプではない若年の痛風患者に、後者は中年の肥満、特にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人によく見られ、両者が混在する人もよくいます。

痛風は、持続する高尿酸血症(血清尿酸値 7.0mg/dl 以上)に起因した尿酸塩結晶の体組織への沈着症と定義されます。要は、血液中の「尿酸」が増えすぎてしまう「高尿酸血症」が原因で起きる疾患です。

体内に尿酸が蓄積すると、いろいろの場所に結晶として析出します。結晶は、皮下結節を生じたり、腎障害の原因となるほかに、上記のように関節炎の誘因となります。このように、体内の尿酸蓄積を基礎に生じた尿酸結晶が、急性の関節炎を引き起こす状態を痛風と呼び、その関節炎発作を痛風発作といいます。

特有な急性関節炎(痛風関節炎と呼ばれ、下肢の関節、特に親指の付け根である第一中足趾節関節に好発する単関節炎)の反復が特徴的であり、このような痛風関節炎、痛風結節(進行例では関節部をはじめとして、耳介などの軟骨、骨端部、皮下組織などに痛風結節が形成され、白色の腫脹をきたす)、尿路結石、腎機能障害などの尿酸沈着が関係する症状のほかに、痛風では高血圧や高脂血症、耐糖能異常などの合併が高率であるといわれています。

病態としては、尿酸の過剰産生と腎からの排泄低下の2タイプに大別されます。過剰産生型としては、遺伝性(プリン代謝酵素異常症、糖原病)、核酸代謝回転の亢進(血液疾患、乾癬)、ATP分解の亢進(飲酒、低酸素血症)、プリン体過剰摂取などがあります。排泄低下型には、遺伝性のほか、低酸素血症、ケトアシドーシス、尿崩症、薬物(フロセミド,サイアザイド,シクロスポリンA)などがあります。

ちなみに、高プリン食と飲酒を禁じて行った時間クリアランス法で、尿酸クリアランス<6.2mL/分は排泄低下型、時間排泄量>0.51mg/kg/時は産生過剰型と診断され、治療法も変わってきます。

治療法としては、以下のようなものがあります。
最近、高尿酸血症が狭心症や心筋梗塞など心血管障害を引き起こす恐れがあると報告されています。しかし、自覚症状のない高尿酸血症の人が薬の投与を受けた場合に、そうした危険性を回避できるのかは、まだ分かっていません。

質問者は50歳頃から、高尿酸血症が顕在化してきているので、尿酸産生亢進型の要素が大きいようです。まずは薬に頼らず、アルコールやプリン体、カロリーの過剰摂取を避けた食生活を心がける必要があります。ただし、すでに心臓や腎臓などの臓器に障害のある場合は、内科の専門医にご相談ください。

治療としては、痛風関節炎を起こしていない無症候性高尿酸血症に対しては、「高尿酸血症・痛風治療のガイドライン」に従って、血清尿酸値が8mg/dLを超えるまでは生活指導に重点を置き、8mg/dL以上が持続する場合に腎障害や心血管障害などをきたしやすい合併症の有無を考慮して薬物療法の適用を考えます。

痛風関節炎を繰り返す症例には、発作を回避するために薬物療法が適用されます。痛風関節炎には速効性で、ボルタレンなどの鎮痛作用の強い非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を、できるかぎり速やかに投与します。投与量は常用量の2倍量とし短期間の使用に留め、痛みや炎症が引いた場合は中止します。コルヒチン(発作治療薬)は局所の違和感などをきたす痛風関節炎の前兆期に1〜2錠に限って使用されます。

高尿酸血症の治療としては、産生過剰型は尿酸生成抑制薬で、排泄低下型は尿酸排泄促進薬で治療するのが原則となります。薬物療法として尿酸排泄低下型と産生過剰型にそれぞれ尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド)と尿酸合成阻害薬(アロプリノール)を投与します。

ただし、排泄低下型であっても尿路結石や中等度以上の腎機能障害を合併している場合は、尿酸生成抑制薬を使用します。血清尿酸値の推移を見ながら、1〜2ヶ月単位で増量し、血清尿酸値が6mg/dL以下にコントロールされる量を維持量として長期にわたって使用することになります。

もちろん、食事療法(プリン体制限食)を行うことはどちらにせよ重要になります。また、尿酸は酸性尿では溶解性が著しく低下して尿路結石を形成する可能性があるため、尿中尿酸排泄量を増加させる尿酸排泄促進薬を用いる場合は尿のpHを6〜7に維持するよう、尿アルカリ化薬を併用する必要があります。

食べ過ぎ飲み過ぎで「高尿酸血症」や「痛風」になっている人は、500万から600万人ともいわれています。かつては50代以降の男性に多い病でしたが、現在では若年化が進み、女性の患者も増加傾向にあります。

是非とも食生活を見直し、高尿酸血症などにはお気を付けください。

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