「チャラ〜ン」でおなじみの林家こん平(67)の著書「チャランポラン闘病記――多発性硬化症との泣き笑い2000日」(講談社)が話題だ。

こん平は04年9月に声帯を患い、入院。翌05年に指定難病「多発性硬化症」と診断され、噺(はなし)家にとって命同然の言葉に不自由をきたしてしまうことに……。

同著はそれから2000日に及ぶ闘病生活を本人、娘、弟子などの証言を交えてつづったもの。18日の記者会見では元気な姿を見せたが、人気噺家がどう難病を乗り越えたのか? 一読の価値アリだ。
(林家こん平の闘病記が話題に)

多発性硬化症とは


多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)とは、原因不明の中枢神経の炎症性脱髄性疾患です。大脳、小脳、脳幹、視神経など中枢神経組織の主に白質に多巣性の限局性脱髄性病変が生じます。

病因は不明ですが、自己免疫疾患説が有力です。臨床経過、病変部位、病理所見、HLAでMSを分類することができ、多種多様な抗原と免疫反応が発症に関与していると考えられています。

北欧・北米での頻度は10万人に対して30〜80人ですが、アジア、アフリカ諸国では少なく、わが国では10万人に対して 1〜4人です。若年成人に多く発症し、発症年齢は、30歳前後をピークに、全症例の約 8割が15〜50歳で発症します。5歳以前と70歳以降の発症は稀です。男女比は 1:1.3〜3.2 で女性がやや多いです。

中枢神経白質の障害に基づく様々な症候が出現し(空間的多発)、しかもこれらが再発・寛解を繰り返す(時間的多発)のが特徴的です。多発性硬化症に特異的な症候はありませんが、視力障害、運動麻痺、感覚障害などが様々な組み合わせで出現してきます。初発時の発症形式は、急性・突発性で、約1週間以内に症状が完成します。

視力障害としては、視神経病巣により片側または両側の視力低下をきたします。視神経炎発症時には、眼球運動時痛を伴うことが多く、乳頭黄斑線維が障害されやすいため、中心視力の障害が強いです。特にアジア人では、視力障害が高度になりやすいのが特徴で、両側全盲となる場合もあります。

運動麻痺としては、通常は上位運動ニューロン(錐体路)障害による痙性麻痺の型をとります。腱反射は亢進し、Babinski反射やChaddock反射などの病的反射がみられます。病変の高位により、痙性片麻痺(内包などの障害)、痙性四肢麻痺(頸髄病巣)、痙性対麻痺(胸髄病巣)を呈します。

感覚障害としては、異常感覚(ジンジン感など)、感覚鈍麻などが様々な分布でみられます。脊髄病巣ではレベルのある感覚障害、大脳病巣では顔面を含む半身の感覚障害を呈することが多いです。

多発性硬化症の治療


多発性硬化症の治療としては、以下のようなものがあります。
治療としては、急性期、寛解期の再発予防および対症療法に分けられます。
急性期には保険適用外であるがステロイドパルス療法が第1選択で、回復が不十分な場合、パルス療法の再施行か血漿交換(保険適用)を考慮します。

急性期には体温上昇が症状の悪化を招くので、入浴は禁止し、発熱があれば解熱薬を投与します。

再発予防にはインターフェロンβが行われ、再発を30%減少させるといわれています。副作用としては、発熱、感冒様症状、注射部位の皮膚の発赤壊死、白血球減少、肝障害があります。

インターフェロンβが推奨され、国内ではベタフェロンが保険適用となっております。欧米では初発時から投与することが推奨されていますが、2年間に2回の再発または重篤な再発が1回あれば必ず投与します。

副作用が軽微で投与前に比べて再発の抑制があれば投与を継続します。再発が起きてパルス療法を施行する場合も、免疫抑制の増強効果が期待できるので投与は継続します。

多くのご苦労があったと思われます。ぜひとも、ご自愛なさりながら、今後も元気なお姿を拝見できれば、と思われます。

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