大病を乗り越えた先には、名前のとおり“福"が待っていた。日大三のエース山崎福也(さちや)は6安打10奪三振、4失点で完投勝利。運命の日を白星で飾った。

ちょうど2年前の3月21日。山崎は、手術台にいた。高校入学にあたっての精密検査で、脳腫瘍が判明。名医がいると聞きつけた北海道の病院で、直ちに手術を受けた。

運命を感じずにはいられなかった。今大会の初戦が3月21日。「手術した日と、同じ日に試合ができることに感謝したい。神様がそうしてくれたのだと思う」。山崎はこん身の力を込めて144球を投じた。

メモリアルの勝利に「本当に幸せだと思う。うれしい。記念日になりました」とほおを緩ませた。アルプススタンドで声援を送った母・路子さん(45)は「当時のことを考えたら、普通の生活ができるか心配で…ましてや野球なんて。奇跡だと思う。信じられない」と息子の晴れ姿に声を震わせた。

山崎は現在も3カ月に1度のペースで定期検査に通っている。「今は気分が悪くなることもないし、体調はいいです。もっと野球がうまくなりたい」と瞳を輝かせた。
(日大三・山崎、脳腫瘍手術日に記念星)

脳腫瘍とは


脳腫瘍とは頭蓋内に発生する新生物の総称であり、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍に大別されます。

原発性脳腫瘍は、年間10万人当たり約10人程度発生するといわれています。男女差はなく、発症年齢は 5〜15歳と40〜50歳の2つのピークをもつといわれ、欧米に比較して日本では松果体の未分化胚細胞腫が多いといわれています。

原発性脳腫瘍の約1/3が脳内から発生する神経膠腫であり、脳内に浸潤性に発育するため根治的手術が不可能なため基本的に悪性と考えられます。

脳実質由来の神経膠腫、脳を包む髄膜から発生する髄膜腫、脳神経鞘から発生する神経鞘腫、脳下垂体前葉から発生する下垂体腺腫で原発性脳腫瘍の80%を占めます。

頭蓋内ではあるが脳実質外に発生する腫瘍としては髄膜腫(約25%)、下垂体腺腫(約15%)、神経鞘腫(約10%)が重要であり、これらは脳を圧排しながら成長するので根治的手術も可能であり良性腫瘍とされます。

それ以外に頭蓋咽頭腫(鞍上部)、胚細胞腫(松果体部、鞍上部など)、中枢神経系悪性リンパ腫などがあります(それぞれ約3%)。頭蓋咽頭腫、胚腫・胚細胞性腫瘍などは本邦に比較的多いです。近年では、悪性リンパ腫も増加傾向にあります。

脳腫瘍の診断


脳腫瘍の症状は、頭蓋内圧亢進症状と局所神経症状があります。一般に脳腫瘍の症状は徐々に進行することが多く、急激な発症はむしろ血管障害を疑わせます。

しかし、脳室内腫瘍や小脳腫瘍は、急性水頭症による急激な頭蓋内圧亢進による意識障害をきたすことがあります。脳内病変がある場合、痙攣発作の原因となります。

痙攣発作は一般的には良性腫瘍に多くみられ(刺激性病変)、初発症状の場合も少なくありません。悪性腫瘍では痙攣発症も稀ではないが、麻痺などで発症することも多いです。
 
下垂体や松果体近傍の腫瘍(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫など)では内分泌障害が初発症状となることもあります。下垂体近傍腫瘍では視力・視野障害で発見されることも多いです。

髄膜腫の好発部位は大脳半球部円蓋部、傍矢状部、大脳鎌、蝶形骨縁、小脳テント、鞍結節などであり、50歳以降の女性に多い。神経鞘腫は8割が小脳橋角部に発生し、聴力障害を初発症状とすることが多いです。

主な腫瘍のCTおよびMRI所見では、いずれの場合も単純撮像では腫瘍周辺浮腫がよく描出され(CTでは脳実質より低吸収域、MRIではT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号)、造影剤投与により浮腫の中に腫瘍そのものが造影されてくるのが一般的です。

CT、MRIの所見から脳腫瘍の診断は比較的容易になってきましたが、すべての腫瘍性病変の確定診断は手術による腫瘍組織の病理学診断によってなされ、治療も原則としては、確定診断後に行われます。ただ、良性腫瘍では手術のみで診断・治療が完了することも多いです。

脳腫瘍の治療


治療としては、以下のようなものがあります。
脳腫瘍は種類が多彩であり、さらには同じ組織型でも発生部位やサイズによって治療方針・予後が大きく異なる場合があります。

基本的には、手術によって可及的全摘出を目指しますが、個々の腫瘍に応じて手術、放射線治療(ガンマナイフなどの定位放射線治療を含む)、化学療法の中から最も適切な治療法を選びます。

高度な脳浮腫や急性水頭症による頭蓋内圧亢進には、グリセオール(濃グリセリン)やD-マンニトールなどの高張溶液の点滴静注を行います。また、さらに併発するおそれのあるけいれん発作予防のために抗けいれん薬を投与します。

一般的には部分発作にはテグレトール、エクセグランなどの使用を、全般発作にはデパケンなどを用いることが多いです。注射薬ではセルシンなどの静注が行われます。

髄膜腫・神経鞘腫・下垂体腺腫・頭蓋咽頭腫などの良性腫瘍は全摘出により根治可能であるので手術治療が主体となります。全摘出が不可能な場合にも可及的な摘出を行い、残存腫瘍に対してはガンマナイフなどを用いて、初回の治療で腫瘍の再発を可能な限り防止する必要があります。

機能野に残存する場合には、化学療法・放射線治療・免疫治療などを行います。特に、胚腫・胚細胞性腫瘍では放射線・化学療法の有効性が高く、治療の主体となっています。

脳腫瘍に罹患しているお子さんたちに、勇気を与えてくれるニュースであると思われます。是非とも、今後もご活躍していただきたいと思われます。

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