厚生労働省は、ポリオ(小児まひ)の予防接種を受けた子供から家族らに二次感染することがまれにあるとして注意を呼び掛けている。ワクチン接種後15〜37日間にわたり、ウイルスが便に排出されるため、おむつを替えた際などは、入念に手洗いするよう保護者や保育所に求めた。

神戸市は先月、市内の男児がポリオを発症したと公表。男児はワクチン接種者から二次感染した疑いがあり、同省は今月11日付で都道府県や政令市に通知を出した。

同省によると、ポリオウイルスに感染すると0.1%程度の割合で手足などにまひが生じ、後遺症が残ることがある。国内の自然感染は1980年が最後だが、海外には現在も患者がおり、国内流入の恐れがあるため、予防接種を続けている。 
(おむつ処理に注意を=ポリオ予防接種、二次感染恐れ−厚労省)

ポリオ(急性灰白髄炎)とは


ポリオ(急性灰白髄炎)とは、ポリオウイルスにより弛緩性麻痺を来す疾患です。経口感染し咽頭や腸管上皮細胞で増殖しますが、一部は中枢神経系の主に運動神経細胞である脊髄前角細胞に感染し弛緩性麻痺を来します。

ポリオは1〜3型ポリオウイルス感染によって引き起こされます。糞口感染や飛沫感染によって宿主に侵入後腸管で増殖し、ウイルス血症により脊髄前角細胞に達します。

ポリオウイルスに感染しても90〜95%は不顕性感染です。4〜8%は不全型で、発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔吐などの症状で終わります。さらに1〜2%は非麻痺型で無菌性髄膜炎を起こします。麻痺型ポリオとなるのは感染者の1%未満であるといわれています。

麻痺型ポリオでは、発熱や頭痛、嘔吐など前駆症状が数日続き、いったん消失した後1〜3日後に突然弛緩性麻痺をきたします。通常は片側性で四肢に多く、罹患部の腱反射が消失します。

世界において野生株によるポリオは、アフリカとインドの一部に残存するだけとなっていましたが、2005年インドネシアでは、150名を越えるポリオが発生しています。

日本では1981年以降野生株は分離されていません。ですが、生ワクチンを使用しているためワクチン関連麻痺性ポリオ(VAPP:vaccine associated paralytic polio)が約1/300万の頻度で発生しています。

確定診断は急性期に便、髄液からRT-PCRやウイルス分離、急性期と回復期のペア血清による抗体価の有意な上昇によってできます。

ポリオワクチンとは


ポリオワクチンとは、以下のようなものです。
国内で使用されているのは、弱毒経口生ワクチンで、ヒトから分離したポリオウイルスをセービン(Sabin AB)が弱毒化した種株(シードロット)からつくられます。世界の生ポリオワクチンは全てこの株でつくられ、国内では抗原の異なる?、?、?型の各弱毒種株からの3価の混合生ワクチンが製造されています。

ポリオは定期予防接種対象疾患で、生後3〜90か月の間に6週以上の間隔で2回の義務接種があります。その他、希望者には任意接種が行われています。

ポリオの予防接種は、不活化(注射)と生ワクチン(経口)の2種類あり、欧米の多くの国はVAPPの発生を防止するために不活化ワクチンを接種しています。接種回数を増加させないために3種混合(DPT)との混合ワクチンが導入されています。

不活化ワクチンについては、日本でも開発が進められていますが、現在は、生ワクチンを2回接種しています。

糞口感染や飛沫感染によって、ポリオは感染していきます。ワクチン接種を受けたお子さんがいるご家庭では、他のお子さんに感染しないよう、しっかりとオムツ替えの後には手を洗うといったことが望まれます。

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